ブルックナー楽曲解説とお薦めCD
交響曲というジャンルが最も好きだと語ってきましたが、その交響曲界の中でもジャンルの頂点を極めたのではないかと思わしき作曲家がブルックナーです。これから私が個人的に気に入っているブルックナーのCDを紹介してみたいと思うのですが、ベートーヴェンなどと違って、ほとんどの日本人はブルックナーと言っても知らない人の方が遥かに多いことでしょうから、ちょっとばかり説明したいと思います。ブルクナーは、ドイツ、オーストリア限定で高い知名度を誇るようですが、EU全体を見渡してもやっぱり微妙かもしれません(ウィーンに行ったときはコンサートプログラムにブルックナーの曲が多数含まれていましたが、ロンドン行ったときは、たまたまでしょうけれども、どのホールのプログラムを見ても、ブルックナーの曲は1つもありませんでした)。ブルックナーは19世紀にオーストリアで活躍した後期ロマン派の作曲家で、長大な交響曲を第9番まで作曲しました。他に宗教曲などがあるものの、ほとんど交響曲メインで作曲活動を行なっていたといえます。1曲の演奏に1時間、あるいはもっとかかるほどが長いため、理解するまで、多少時間がかかります。私も最初に聴いたときは、全く何のまとまりもない音楽に聞こえたものです。いかにしてブルックナーを聴けばよいのか、交響曲解説書などにも、その点についていろいろ書かれてきたものですが、私としては、何よりも、交響曲という形式についてよく知ることが、ブルックナーへの理解に繋がるのではないか、と思うわけです。ブルックナーの曲は特殊なようであって、実はしっかりと交響曲という形式に沿って作られていますので。そこで、交響曲の基礎について説明して手短にみたいと思います。

交響曲は基本的に4つの楽章から成っています。第1楽章はアレグロなど速度が速めの楽章がきます。ソナタ形式になっており、全曲中でも重要な主題がでてくるので、通常はメインの楽章となります。第2楽章はうってかわってアダージョなどのゆっくりなテンポの曲になります。これを緩徐楽章といいます。第3楽章は、舞踏的で快活な感じのリズムの曲がきます。初期の交響曲では貴族的で優雅な感じのメヌエットが取り入れられました。交響曲の規模が大きくなるに従ってメヌエットでは説得力がなくなってきたのか、ベートーヴェンあたりから舞踏的ながらも音楽性が強くなるスケルツォというのになります。第4楽章(フィナーレ)の形式は様々です。交響曲の歴史上扱いが変遷する楽章であり、初期の古典的な作品では第1楽章が曲のメインになることが多かったものの、交響曲全体が大規模化してくると、フィナーレに重点が置かれるようになってきます(ベートーヴェンの第九など)。いずれにしても再び早めのテンポ指示で華やかな締め的な楽章になることが多いと考えてよろしいでしょう。以上が楽章構成でが、第1楽章で採用されるソナタ形式について言及せねばなりません。まず主題となる旋律というか雰囲気みたいものが二つ提示されます。先に第1主題がメインテーマとなり、それとは雰囲気の異なる第2主題が提示されます。それられが比較されたり対立したり和解したりなどして進行し、最終的な解決によって終わるという形式です。全体の構造としては、主題が提示される「提示部」、形をかえつつ各主題が奏される「展開部」、そして再び主題が奏される「再現部」が来ます。再現部では再び第1主題と第2主題が流れるのですが、お互いが近づいており、和解というか、解決が導かれる形で終わります。解決の仕方ですが、第2主題の調性を第1主題に合わせる感じになったり、あるいは第1主題も多少の変化を帯びるなどすることもあります。それで終わってもいいのですが、さらにコーダという終結部がきて曲がしっかりと締まります。二つの主題の緊張感と解決がソナタ形式、あるいは交響曲のキモであり、そこを楽しむジャンルと言い換えてもよいかもしれません。交響曲というのは基本的に絶対音楽であり、標題音楽のようなストーリィ性はないのですが、第1主題は男性的なイメージであるのに対し、第2主題が女性的なイメージの旋律になることが多く、人間関係に例えられることもあります。あるいは悲劇的な第1主題に対して、穏やかで平穏な感じの第2主題を組みあせて、人生の変遷や運命などを感じさせることもあると言えますので、そんなふうにイメージして楽しむという方法もあるかもしれません。というわけで、これが交響曲の基本構造です。

普通のこのような形式に関する知識がないとしても、古典期の交響曲ならある程度直感で感じ取れるものなので、それほど意識しなくても曲の魅力は伝わるのですが、ブルックナーの場合は長大なスケールでソナタ形式が行なわれることもあって、初見では理解できないということになり、それが不理解へと繋がっているのではないかと思います。ブルックナーと同時代の作曲家になると形式というものがだいぶ崩れて自由になってきているのですが、ブルックナーも一見そんなふうに見えつつも、実は交響曲という構造にかなり忠実に作られているような気がします。未完成に終わった第9番を除いて全て4楽章構成となっており、第1楽章がソナタ形式になるという、非常に古典的な構造で作品が出来ているのです。ブルックナーのソナタ形式について、私なりに解説してみましょう。ブルックナーは生涯に渡って基本的な構造はあまり変わらずに作曲しているので、各曲によって多少の違いはありますが、概ね以下の通りだと思って差し支えないと思います。第1楽章ではまず、弦楽器の震えるような、霧の中から現れるような音で始まります。世に言う「ブルックナー開始」です。その霧の中で管楽器などが主題を表しはじめるのですが、そこが非常にカッコいいと言えるでしょう。そして全体で高らかに主題が表明されます。ところが・・・、ブルックナーの場合、主題の旋律は自体は一般的な感覚からすれば特に名旋律でもなんでもない、むしろ普通の人なら「何これ?」と感じるだけかもしれない微妙な旋律だったりします。旋律というよりは、何かのファンファーレか、あるいは感性が合わない人にとっては何かの警告音かと思われてしまいそうなものが主題となるのです。もちろん、ブルックナーが好きになるころには素晴らしい音楽と思えるのですが、初見ではなかなか理解してもらえないところかと思います。そしてそれを大音響で提示するので、たいていは「ウルサイ」と苦言を言われることもあるのですが、しかし今はそれは置いといて、ソナタ形式なのですから、この主題をしっかりと覚えておきましょう。第1楽章どころか、曲全体を支配するテーマとなるものです。その後、もう一回、第一主題の流れが、多少のアレンジはありながらもくり返されます。もう一度しっかり主題を頭に刻み込みましょう。そしてようやく第2主題が始まります。第1主題はやや主張の強い音楽でしたが、今度はたぶんさっきよりは心地よい旋律が流れることと思います。ブルックナーの場合は曲が長大なので第3主題まで提示されます。第3主題はさらに輪をかけて、理解してもらいずらい旋律であることが多いうえに、展開部ではあまり活躍しなかったりするのですが、それも今はおいときましょう。主題の提示と言っても、単純に主題を順番に並べただけでは芸がないので、各テーマを端々に織り交ぜたりとか、いろいろ工夫するので、初見ではわかりずらいかもしれませんが、少なくとも第1主題だけでも覚えておくと良いでしょう。提示部が終わったら、展開部に入りますが、その間に経過部と言いますか、ちょっと雰囲気の違う音楽が流れますが、実はここがなかなかいい感じだったりします。展開部はソナタ形式において、緊張を伴う肝心な場面ですが、伝統的な交響曲では小節数的にはそれほど長いものではなかったりします。が、ブルックナーの場合は展開部もたっぷり尺が取られています。先ほど提示された主題が形を変えながら奏されます。初めは第1主題、次ぎに第2主題というぐあいで進行します。時に大音響で鳴らしたり、突然止まったり、静かに奏でてみたりという具合なので、ぼんやり聴いていると、何の脈絡もない、煩くて無駄な音の羅列に聞こえてしまうかもしれません。初見では、これが音楽なのか?と思ってしまうかもしれません。激しい大音響が鳴ったと思ったら、突然静かに寂しげになってしまうなど、ここが一般の方々に理解してもらいずらいところなのではないかと思います。取り留めがないとか、下手をすると無駄な部分と思われてしまうのです。が、しかし、これはソナタ形式の展開部なのです。各主題が再現部の解決に向けて努力している姿と捉えると、何か感動的な努力の現れのように聞こえてきます。人間関係や人生の浮き沈みに例えてみるのもいいかもしれません。各主題がいろいろ手探りしたり、のたうち回ったりしながら盛り上がってゆき、まさに大団円を迎えるのかと思ったときに、そこで突然音楽が途絶え、曲の頭に戻ったのかというかの如く第1主題が始まります。再現部です。ブルックナーの再現部は、けっこう解りやすく感動的な場面だと思います。展開部を経たあとですので、すっかり同じ主題が再現されるわけではありません。各主題が変化して再現されていることでしょう。その後主題を使って大団円のように盛り上がり、第3主題もここに加わりますが、最初に聴いたときのような警告音ようなものだったのが、変化を遂げて感動的な大団円に貢献するところは、全体のクライマックスとも言えるでしょう。しかしこれで終りではありません。再現部の後にコーダという終結部が来ます。主に第1主題を活用しつつ、壮大な盛り上がりを見せて楽章を締めるのですが、第1楽章の場合は、まだ後に3つの楽章来るわけで、まだまだ終りじゃない的な予感を持たせるジワジワ感のあるコーダが来ます。ブルックナーの曲のこの部分は迫力があるので、初見でも確実に感動できる場面といえるでしょう。
そして第2楽章アダージョ、これはどの曲も例外なく非常に美しい音楽です。3部形式になっていること多く、こちらも構造、というか流れの順番を理解しているとより楽しめるのですが、予備知識無しでも充分美しい音楽です。第3楽章にスケルツォが来るのは伝統通りです。第4楽章に再びソナタ形式が来ます。第1楽章との違いは、まず主題がいきなりダイレクトに提示されることが多く、派手な開始となります。そして展開部を経て、今度はすごく盛り上がっていく感じで再現部に突入すため、まさに全曲中の結論と言った感じのクライマックスとなります。そして、終結のコーダは、第1楽章のときとは違って、全てが解決され、何処までも高らかに昇天してゆくかのようなコーダとなります。ブルックナーの交響曲は基本的に、この構造です。ロマン派の作曲家に分類され、曲の雰囲気に的に歴史的意義的にもやはりロマン派の作曲家ですが、曲の構造は割と古典的なのです。交響曲なんて、楽章は、時には3つだったり、5つだったりすることもあります。ブルックナーはどの曲もしっかりと4楽章構成になっていて、例外は死によって中断した第9番だけです。言い換えれば基本を抑えていればいいわけです。

では、前説が長くなりましたが、ブルックナー作の各交響曲について、個人的にお気に入りのCDを紹介していきたいと思います。なお、ずらずらとお薦めCDを書き連ねるとキモオタっぽいので、1曲につき1点に限定しました。楽曲の印象なども述べています。

交響曲第1番ハ短調
ブルックナーの初期作品のひとつで、コンサートなど取りあげられる機会は少なめであり、ブルックナーにすっかりハマってしまった人が最後の方に聴くというくらいの位置づけの曲となっています。しかしながら、私はブルックナーの曲中でもかなり好きな方です。短調でありながらも、暗いような要素はなく、活力に満ちあふれています。後の作品に見られるような深遠さ、神々しさのようなものはまだ感じられませんが、むしろそこがこの曲の魅力でもあります。第8番は素晴らしい曲ですが、ちょっと気分転換に聴いてみようかな、という感じにはなりにくいのも確かであり、それと比べるとずっと気軽にブルックナー的要素を楽しむ事ができます。第1番とはいうものの、第1楽章は3主題のソナタ形式、三部形式の緩徐楽章、一瞬でブルックナーとわかる個性的なスケルツォ、ソナタ形式による華々しいフィナーレなど、ブルックナー全生涯を通してのスタイルが完成されています。第1楽章は立派だし、緩徐楽章も文句なく美しい、いかにもブルックナーらしい素晴らしい楽章であり、初期とか第1番とか関係なく素晴らしいアダージョ楽章といえるでしょう。第3楽章スケルツォも、いかにもブルックナーのスケルツォになっています。特に第4楽章フィナーレは(他の誰もあまり褒めてくれないのですが)、私としては何の不満もない立派なフィナーレであり、気軽に聴けるような面もあって、車載オーディオに入れてよく聴いていたりします。後の代表作、第8番のフィナーレの萌芽のようなものを感じるのですが如何でしょうか。最後のコーダの部分も華やかであり、なんと素晴らしい曲だろうと思うのですが、もうちょっとみんな褒めてくれてもよさそうな気がします。お薦めのCDはティントナー指揮/ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団。たいへんパワフルな演奏で、これを聴くともはや他のCDでは物足りなくなります。

交響曲第2番ハ短調
これも初期作品であり、それほど存在感はないものの、個人的にはこれもなかなか気に入っております(まぁ結局どの曲も好きなわけですが)。ブルックナーは演奏時間70分ほどの長大な曲として作曲したのですが、初演の際には大幅に改訂して55分くらいの作品となっています。初稿では第4楽章が最も長く、緩徐楽章が第3楽章に来たバージョンもあるなど、フィナーレ重視型の交響曲だった様子が覗えますが、改訂後はなんとフィナーレが半分ぐらいの長さになっており、全体の構造という点では意味合いの異なる曲となっています。コンサート等で演奏されるのは、まず改訂後の方で、こちらが公式版なのですが、最近は初稿のCDも見かけます。どっちがいいかは微妙なところです。自分が聴くなら初稿を取りたいのですが。私のお薦め盤はアイヒホルン/リンツ・ブルックナー管弦楽団です。こちらは初稿の演奏で、初稿でも1872年稿と1873年稿の二種類があり、なんと両方演奏したものが、CD2枚組になって収録されています。私のお気に入りは、どちらかというと1872年稿です。緩徐楽章が第3楽章にきているものです。この曲の特に第一楽章の流れの良さは何度でも聴きたくなる良い曲であり、じっくり聴けば誰でも魅了されそうなところですが、このCDは特に第一楽章前半が素晴らしいです。ブルックナーの曲は展開部など頑張りすぎている為に細切れ間があったりすのですが、第2番は流れがよくて、とても気持ちいい曲だと思います。また、フィナーレ重視型の初稿だけあって、フィナーレの迫力はなかなかです。最後のコーダの印象が、改訂版とどっちがいいかは私も賛否付けがたいところなので、気に入ったら両方聴いていただきたいところです。

交響曲第3番ニ短調
この曲あたりから作曲者の技術がかなり成熟しており、もはや初期でなはく中期作品に分類されます。コンサートでの演奏頻度も高くなってきます。私はそれほどコンサートに出かけるわけではないものの、それでもライブで3回は聴いた記憶があります。とは言うものの、実際この曲を聴いていきなり気に入るような人は少ないんじゃないでしょうか。それはこの曲の初演が歴史的な大失敗に終わったことからも覗えるような気がします。しかしながら、第1楽章はブルックナーのソナタ形式の見本のような楽章であるといえるでしょう。他の曲を充分聴いてから聴けば、とても素晴らしい楽章であることが理解できると思います。続く第2楽章もとてもよくなってきています。緩徐楽章は既に第1番、第2番でも充分に美しい音楽でしたが、それに深遠さみたいなものが加わってきて、この時点で神の領域に片脚を突っ込んでいるといえるでしょう。第4楽章は比較的短いのですが、最後のコーダが素晴らしく、これは上手いオーケストラと音響の良い会場で聴くと、本当に、どこまでも高らかに昇っていくようなフィナーレです。これはCDではわからないかもしれません。お薦めは、ヴァント/北ドイツ放送交響楽団。突出して凄いような感じはしないのですが、なんというか、全体としてこの曲の旋律の良さをバランス良く伝えてくれているような気がします。

交響曲第4番変ホ長調
ブルックナーの曲は理解するまで時間がかかるものですが、例外的に第4と第7は万人に親しみやすい作風であり、特に第4番は入門用として薦められることも多い曲です。それだけに、ブルックーの神髄には程遠いような印象を受けなくもないという感じが無きにしも非ず、もしかしたら逆にブルックナーを好きな人にとっては一段低く見られてしまうような傾向があるのではないでしょうか。それでも、第7はその完成度の高さ、そして第2楽章の崇高さから、名曲であることに異論はないと思いますが、それにくらべて、第4番の方はちょっと甘くみてしまったりするようなことがあるのではないでしょうか? 聴きやすいけれれども、それだけにけっこう退屈、とかそんなふうに思ったりはしていないでしょうか? そんな人はケルテス指揮/ロンドン交響楽団を聴くべし。この曲がこれほどまでに凄い曲だったのかと、考えを改めるはず。

交響曲第5番変ロ長調
個人的にブルックナー中最も好きな曲です。それどころか、あらゆる音楽ジャンル中で最も好きな物を挙げよと言われたら、この曲は真っ先に候補として検討せねばならぬぐらいなのですが、しかしこの曲の魅力をいったいどう説明したらよいかはわかりません。最初に聴いたときには、いったい何を言っているのかわからないと思うのが通常の反応であると思います。それどころか、これは音楽なのかと疑われるかもしれません。ふつうの人が聴いたらちっとも面白くもないと思われそうなメロディをひたすらこねくり回して80分近い作品にしているという、たぶんほとんどの人にとっては最後まで聴き通すのが苦行か何かと思われるものであろうかと。いったいどういう思考の元にこのようなものが生み出されるのか、と不思議に思うこと頻りです。しかしながら、対位法とフーガを駆使しながら巨大な構造物のように構築してゆきます。その壮大さはブルックナーの全曲中随一と言えるでしょう。その他の音楽全て見渡しても、これほど強固で厚みのある重厚な音楽を私は他に知りません。かつては「城塞交響曲」というニックネームもついていたそうです。対位法の為かあるいは壮大な建築物的な構造からか「中世的」と言われることもありますが、まさに中世ヨーロッパの堅固な要塞、あるいは巨大なゴシック建築を思わせる壮大な曲であるといえるでしょう。それでいて時に寒々としたアルプス以北の中世の風景を思わせるような乾いた音も魅力的です。第2楽章の美しさも際立っています。ブルックナーの緩徐楽章はいずれも名楽章であり、特に後期三部作は音楽史に名を残す名緩徐楽章ばかりです。しかし、私が最も美しいと思うのは、この第5番の緩徐楽章です。そして、凄いのが第4楽章フィナーレです。ここまでのブルックナーの曲は古典的とも言える、第1楽章偏重的なところがあるのですが、ついにこの第5番で壮大なフィナーレ楽章が現れます。ただ、第1楽章も立派なものであり、フィナーレ型というよりは、両端重視型というように言えるかもしれず、この点もまさに城塞的な構造の交響曲といえるでしょう。この曲のCDでお薦めなのは、アイヒホルン指揮/バイエルン放送交響楽団です。第1楽章の立派さ、そしてアダージョ楽章の厚み、フィナーレの締めの迫力など、どこをとっても理想のブル5と言えるでしょう。

交響曲第6番イ長調
ブルックナーの曲中でも実は最も存在感の薄い曲なんじゃないでしょうか。中期の作品のわりには規模が小さめ、と言っても、演奏時間的にすごく小さいというわけでもないのですが、大作である第5番とその後の名作群に挟まれてしまって、うっかり忘れてしまいがちなところはあるかと思います。しかしながら、第4や第7と並んで、ブルックナー入門作として適しているのではないと思われます。特に第1楽章が良く出来ています。開始から盛大に盛り上がり、そして中間部分はしみじみと味わい深く、再現部で再び盛り上がり、遥か天上界に昇ってゆくかのような晴れやかなコーダで締めくくられるという、もはやこの楽章だけで交響曲的要素が詰まっていそうな気もします。が、緩徐楽章も、スケルツォも、そしてフィナーレもそれなりに良く出来てるので、やはり全体を聴いて損はありません。レーグナー指揮/ベルリン放送交響楽団がお薦めです。ちょっと軽めな感じがするかもしれませんが、本曲に限れば、ブルックナーの大家みたいな演奏家よりも適しているのではないかと思います。

交響曲第7番ホ長調
ここから先はブルックナーの後期作品に分類され、いずれも名品揃いですが、特に第7番はブルックナーにしては珍しく、万人に好かれそうな感じの名曲感漂う作品であり、第1楽章が始まったその瞬間から、ああこれは名曲が始まるんだなと誰にでも理解できる作品といえるでしょう。ブルックナーファンの誰もが指摘する問題は、後半の第3~4楽章、特にフィナーレがこじんまりとしているという点でしょうか。もしも第4楽章が壮大な規模であれば、続く第8番と並んで代表作となったかもしれません。でもまぁこれでいいんじゃなかろうかという気もしないでもないです。ここに壮大なフィナーレがあったら、なんかちょっとクドいような予感もします。肯定派の意見としては、ハイドン、モーツァルトら古典派の交響曲はどちらかというメインは第1楽章であり、フィナーレの扱いにはけっこうブレがあって、ときにオマケみたいな感じすることがありました。ベートーヴェンですらその傾向があります。そういう意味でいうと、長調の明るい曲調、第1楽章メインの構造など、まさに初期交響曲の構造のどおりと言えます。古典派交響曲の構成を、ロマン派的な音楽で奏でているという感じでしょうか。これは、これで大正解なわけです。さて、お薦めの演奏があるかといえば、べつにどの演奏でも、良く聴こえるような気がして、そんなに気にしなくていいかと思います。

交響曲第8番ハ短調
ブルックナーの代表作にして、交響曲界の代表的作の一つとも言えるでしょう。80分くらいかかる曲で、演奏によってはCD2枚組になるこもともあります。この曲の存在を知ったときは、たった1曲が80分もかかるというだけで只者ではない、そんなことがあり得るのかと思ったものです。実際にはこの作品の前にも後にも、もっと長大な音楽作品はいくらでもあったし、オペラなどは3時間を超えるのが普通なぐらいなのですが、あれは歌やストーリーがある、いわゆる標題音楽であって、それとこれは別です。交響曲という絶対音楽ジャンルで、しかも4楽章構成を守りつつ、1曲が80分というのはやはり特別なことであろうといえると思います。しかも、これは誰もが指摘することですが、この曲のどこをとっても無駄なところが一切ない完璧な作品です。歌曲さえ含まれない、純粋音楽でこれだけの長さを、万人が納得いくような無駄なく構成しているというのは、まさに奇跡的所業といえるでしょう。この曲の強みは、後半の2楽章が強力であることでしょう。尻すぼみ感がなく、まさにフィナーレに向かって突き進んでいくようなところが、曲全体としての構成に成功しているのでしょう。ベートーヴェンの第九のようなフィナーレ重視型交響曲であり、その為、スケルツォが第2楽章、アダージョが第3楽章というように順番が入れ替わっています。特に第3楽章はアダージョ楽章界の頂点で有り、他の誰のどんな曲のアダージョ楽章を相手にしてもこれに勝てるようなものは存在しない言える傑作です。などというと言い過ぎかもしれませんが、これに関してはべつに取り立てて誇張というほどでもないと思います。第5番もフィナーレ型と分類されるかもしれませんが、私としてはあれは第1楽章と第4楽章の重要度が対等な、いわば対称型という段階で、まだフィナーレ型ではありません。最後の第9番が未完に終わったことも考えると、実はブルックナー唯一のフィナーレ型交響曲が第8番なのかと思います。まさに代表作であるといえるでしょう。フィナーレである第4楽章は、どうしても同じフィナーレ型交響曲であるベートーヴェンの第九と比較したくなりますが、ベートーヴェンの方がずっと知名度も高く感動的な名作であることは確かなのですが、かなり人間的な葛藤に満ちあふれておりそこに感動があるわけですが、それと比較すると、この曲のフィナーレは感動的ありながらも、人間的な葛藤はほとんど超越している感じがします。どっちがいいとか悪いとかはないと思いますが、ブルックナーの方はどんな思いでこのような音楽が出来上がったのかと不思議に思うことがあります。ティンシュテット指揮/ロンドン・フィルのCDがお薦めです。このCD、あまり話題になることもなく、ものすごい名演という感じもしませんが、バランス良くこの曲の良さを伝えているのではないかと。ギリギリCD一枚に収まっている点も聴きやすくてよろしいです。

交響曲第9番ニ短調
ふつう交響曲は4楽章構成であり、特にブルックナーはきっちりとその通りに作曲していますが、第9番は作者の死によって第3楽章までしか完成していません。しかし、技術的にも内容的にも芸術的にもこれほど深い深淵まで到達した交響曲は他にないのではないか、と思わせる曲です。極めるところまで極めると、人はここまで到達できるのか、という見本ともいえるでしょう。第8番と比べると第1楽章が巨大化しており、それは単に曲の長さだけではなくて、内容の濃さも含めて規模が大きくなっており、まさにこれがメインという感じがします。もし、完成されていたなら、これにいったいどんなフィナーレが配置されたのであろうかと気になるところですが、同時に、実は3楽章構成で完成されているのではないかという気もします。第3楽章に緩徐楽章がきていることからも、壮大なフィナーレが待っていることと思いますが、巨大な第1楽章をもしのぐフィナーレとはいかなるものか。でも、さすがに濃い味過ぎないだろうかとか、いろいろ想像しますが、まぁ、どっちみちわかりませんが、しかし、現実的な問題としては、長さ的に現状の方がコンサートのプログラムとしては扱い安そうな気も・・・。私のお薦めのCDですが、シューリヒト指揮/ウィーンフィルですかね。これは誰も彼もがベストに挙げるCDなので、これに関しては取り立てて説明とか特にないのですが、自然な流れに任せた感じなところがよいんではないでしょうか。

ブルックナー
写真は私が昔ブルックナーの没後100周年のときにウィーンに滞在したときに撮ったブルックナーの銅像の写真。

| 音楽 | 12:43 AM | comments (0) | trackback (0) |
バロックオペラ映像まとめ
バロックについていろいろ読みつつ、音楽の方は聴いてみたりなどしているところですが、youtubeで見つけた映像などまとめてみました。自分用メモみたいなところでもあるので、内容の正確性、誤字乱文等ご容赦ください。

史上最初のオペラ、ヤコポ・ペーリ作『ダフネ』は現存していないということですが、ダフネといえば、ベリーニの彫刻でダフネを題材にしたものが、まさにバロック彫刻代表作として言及されたりするので、バロック的な題材といえるのかもしれません。現存する最古のオペラはペーリ作『エウリディーチェ』で、1600年にフランス王とメディチ家マリーの婚礼を祝ってフィレンツェで初演されたとされる、これもまたバロックの始まりを告げるような出来事ですが、この作品については本などで存在を知る機会はあったものの、現代で演奏されることはないのだろうなと勝手に思っていました。が、検索したらyoutubeでいくつか実演の音声らしきものを見つけることができました。考えてみれば、現存最古のオペラとなれば、学究的にも重要なことだし、演奏しようと思うグループは多々あることでしょう。

動画説明欄によると、オペラ誕生400周年を記念して行われた国際会議の一環として、2000年にイリノイ大学の学生等で演奏されたもののようです。
動画では英語の訳まで表示されてなかなか親切です。じっくり見ている余裕はなくて、作業用BGMとして流すような感じで、最後まで聴いてみましたが、確かに世にいろいろ言われるように、台詞をポリフォニーで歌うように表現するということに注力しており、バロック的に演出的な効果は少なめで地味かなという気はしないでもないですが、まだそんな聴き込んでないので、あくまで印象です。なお、王家に名字はないので、后は慣例に出身地を附して呼ばれる為、フランスではメディチのマリー、マリー・ド・メディシスとなるのですが、後にルーベンスにマリー・ド・メディシスの生涯という連作を描かせ、それは現在はルーブル美術館に飾られており、ルーベンスの代表作ともなっていますが、初めてあの部屋に入ったときには、なんちゅう悪趣味な絵だろうと思って素通りしましたが、今ならじっくり見て楽しめそうです。

それにしても史上3番目のオペラ(現存する2番目に古いオペラ)、モンテヴェルディの「オルフェオ」は完成度が高いと言えるでしょう。『オルフェオ』について先日既にかなり書きましたが、ガーディナー指揮で比較的最近演奏された映像がyoutubeに上がっていました。

舞台演出的には、私としては先日取りあげたリセウ大劇場のDVDの方が断然好きなのですが、これはこれで面白い感じもします。現在、オペラと言えば、舞台と客席の間のオーケストラピットに楽器演奏団が収まっていますが、いつ頃からそうなったかは、はっきりしていないようです。もしかしたら、こんな感じだったのかもしれません。ガーディナーなので学術的にいろいろ考えた末かもしれないし、演出家が考えたことかもしれないし、どうなのか、確認している余裕はちょっとないんですが、いずれにしても、バロックなら舞台演出は凄まじく豪華で演出的だったとは思いますが、なんというか、ユニクロというか、部屋着で歌ってるみたいな映像っすね。

モンテヴィルディは18のオペラを作曲しましたが現存するのは次の3作、「オルフェオ」「ウリッセの帰還」「ポッペアの戴冠」。これらを観てゆきたいところです。ちなみに「ポッペアの戴冠」の方は既にDVDを持っているのですが、題材があまり好みではなくて、いまいち楽しめません。「ウリッセの帰還」のDVDを買いたいのですが、今は金がない。ウリッセの帰還というのはイタリア語なのでわかりにくいですが、ウリッセはラテン語ではウリュッセウス、英語でユリシーズ、ギリシャ語ではオデュッセウスであり、ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』なのだろうと思います。なお、映像ではアーノンクール指揮のDVDは3作揃っており、まぁ、探せばyoutubeにあがっているのもあるのですが、アーノンクールは未だにちょっと苦手なもので・・・。モンテヴェルディに続く作曲家としてはジャン=フィリップ・ラモーの「優雅なインドの国々」という作品のDVDを既に持っていました。数年前に買ったのですが、なんと未開封のままです。

アントニオ・チェスティの『黄金のりんご』と思わしき音声をyoutubeで見つけました。

オペラ『黄金のりんご』は神聖ローマ皇帝レオポルト1世とマルガリータ・テレサ・デ・エスパーニャの結婚式で上演されたそうで(1666年?1668年?)、マルガリータはスペインのベラスケスが幼少からの肖像画を描いてウィーン宮廷へ送っていた為、肖像画がたくさん残っているあのマルガリータであり、なかなか濃い感じでバロック繋がりですね。オペラの方は、おそらくバロックオペラ史上最大のイベントだったのではないかと思われますが、オペラ劇場どころから宮廷全体を使ったり、花火を打ち上げたりなどいう具合だったようで、基本的に再現不能なのではないかと思っていましたが、解説書で読んだだけなので、どんな作品なのかは知らず。上記の動画では5時間ですが、コメント欄をなどを見ると本来は8時間であり3時間のカットがあるそうですが。

| 音楽 | 09:34 PM | comments (0) | trackback (0) |
バロック歌劇について語る:モンテヴェルディ『オルフェオ』
音楽に限らず諸芸術のバロック期の始まりはだいたい1600年前後、厳密な年代からどこから始まったかといえば、ジャンルによって見解が異なるかと思いますが、例えば建築なら1580年代くらいとか、何かしら記念碑的な作品が完成した年を当てはめるという手があるかと思います。音楽の場合はオペラといういかにもバロック的なジャンルの始まりをバロックの始まりということに設定すれば、けっこうはっきり年代設定でるかと思います。音楽のジャンルは、徐々に形成されてくることが多く、正確な形成過程自体わからないことが多いのですが、オペラはかなりはっきりしており、ある集団が古代の劇を再現しようと試み、歌いようにセリフを言っていたという想定で、再現してみたのがオペラの発生と言われており、その年代もわかっているので、それをバロック音楽の発生としてもよいかと思います。歴史上最初の歌劇は現存しておらず、現存するものとして最古のオペラはヤコポ・ペーリの「エウリディーチェ」で、1600年にフランス王とマリー・ド・メディシスの結婚の際に、フィレンツェのピッティ宮殿で初演されたということなので、そこをバロック音楽のはじまりとするときっかり1600年です。異論はいっぱいあるかもしれませんが、クラシック音楽に果たしたオペラの役割を考えると捨てがたいところです。

ちょっと話が外れますが、古代劇の再生という意図があるなら、バロックよりも「ルネッサンス」の方が言葉の意味的には合っていないでもないですね。絵画の方も、ポンペイの遺跡が発掘されるまでは、古代の絵画というものがあまり伝わってなかったので、ルネサンスの頃の人が、実際の古代の絵画について触れる機会は相当少なかったと思われます。ですから、実際に影響を与えたのは、建築様式、そして彫刻作品、文芸作品などに依るのでしょう。ましてや音楽となると、古代の音楽は、ピタゴラスやプラトンのような音楽理論だけですから、ルネッサンス音楽といえど、古代の再生とは言い難いものがあったわけですが、これは、先に読んだ中島智章(著)『図説 バロック』(ふくろうの本/世界の文化)に書いてあった話なのですが、言われてみればなるほどと感心しました。

ヤコポ・ペーリの「エウリディーチェ」はマリー・ド・メディシスの結婚の際に上演されたそうなのですが、マリー・ド・メディシスは後にルーベンスに自分の生涯を描かせ、『マリー・ド・メディシスの生涯』という連作が現在ルーブル美術館にありますが、これはまさにバロック絵画の代表ともいえる作品なので、マリー・ド・メディシスはまったく持ってバロック的な生涯であったのでしょう。ヤコポ・ペーリの「エウリディーチェ」は私はまだ聴いたことがありません。きっと探せば売ってると思うので、そのうち聴いてみたいと思います。注目すべきは、歴史上3作目、現存するものとしては、2作目の歌劇作品である、モンテヴェルディの『オルフェオ』です。

再びちょっと脇道にそれますが、まずオペラというものについて言えば、オペラというのは歴史上これまでに数多作曲されていますが、オペラハウスの定番レパートリーになっている曲は、その歴史の割にはあまり多くありません。ドイツならモーツァルトから始まって、魔弾の射手とか、ワーグナーの作品とか、イタリアなら、ロッシーニ、ヴェルディ、プッチーニとか、っていうふうに挙げていくとそれなりの数にはなりますが、17世紀からの歴史と考えてみると、それほどでもない数の作品を延々くり返して上演しているわけで、それもだいたい古典派以降の作品で締められています。いや、実際は、ヴェルディとかプッチーニだらけだったりするものですが。モーツァルトなど古い方だと言っていいかと思うのですが、いずれにしても古典派以降の作品であり、バロックオペラというのは滅多なことで聴けるものではありませんでした。オペラというジャンルほど、バロックを体現したものはないと言えるのですが、オペラ座の定番レパートリーはそれより後の作品なのです。が、最近は状況が変わって、けっこう演奏されており、映像化されてもいるので、DVDとかで買えたりします。音楽好きの方が海外に行ってようやく観劇できた作品が、バロックオペラだとガッカリするみたいですが。確かにフィガロの結婚とか、プッチーニとかの方がいいっすよね。定番オペラですら、それなりの予備知識がないと楽しめないのですが、バロックオペラだとさらにハードルが高いと言えるでしょう。いずれまた語りたいと思いますが、バロックという時代であったからこそという要素が多々あって、違う時代で聴いて理解が難しいこともいろいろあるわけです。が、しかし、現存2作目オペラであるモンテヴェルディの「オルフェオ」。これは珍しく、けっこう時代を超越している完成度です。いや、もはやしょっぱなでバロック期オペラの最高傑作になってしまっているのではないか、とも思えるほどです。

『オルフェオ』はバルセロナのリセウ大劇場で上演されたもののDVDがとても良い出来映えなのでお薦めです。日本語字幕も付いてます。

題材はギリシャ神話のオルフェウスの物語。竪琴の名手オルフェオは、新婚の妻エウリディーチェがいましたが、毒蛇に噛まれて死んでしまい、連れ戻す為に黄泉の国にゆくという、誰でも知っている物語です。

youtubeにも上がっているので、それを参照しつつ、ちょっと観てみましょう。
既に立派な序曲っぽいものがありますが、とってもいいですね。

後に、モーツァルトやベートーヴェン等が活躍する頃に、交響曲という形式が台頭してきますが、その萌芽となるのがオペラの序曲であり、このオルフェオの序曲はまさにその最初の一撃といえるでしょう。あるいは交響曲に限らず器楽曲全般のスタートラインかもしれません。

音楽の女神的なものが前振り歌を歌ってくれますが、この時点でもう素晴らしいという他ありません。私などはこの歌だけでワイン一本空けられます。

当時の民衆の音楽がどんなだっかはともかく、現在クラシック音楽と言われるものの流れでは、ルネサンス期までは、対等のパートが織りなすポリフォニーが主流であり、何を言っているのは聞き取りづらい音楽だったのが、セリフを歌うという行為により、しっかりと聞き取り安いホモフォニーになっています。バックバンドやオーケストラを背景にした歌謡曲のようでもあり、これが歌劇のはじまりでありつつ、現代に続く音楽の始まりなのでもあるのでしょう。例えば、日本のテレビで演歌歌手が歌っているのを見て、それが昔からの日本のものだとうっかり思ってしまうかも知れませんが、記譜方法だって西洋の記譜方法だし、単に日本っぽい音階に限っているだけで、スタートはここなのではないか、と。

幸せいっぱいの場面とか、さらに合唱も交えてみたり、娯楽作品としても完成度が高く、とくに合唱はルネサンス期のポリフォニー的要素も残っていて、いろいろ楽しめると言える、バランス良く練られた作品なのですが、それは各自観てもらうとして、とりあえず合唱と主人公オルフェオの歌を聴いてみましょう。


その後、いろいろあって、三途の川の場面です。

三途の川の船頭を歌で眠らせ通過します。

それから、冥界の王ハデスの夫婦も歌で説得するなどして、無事エウリディーチェを連れ帰れそうになるのですが、道中決して振り返ってはならないという約束を破って妻は去ってしまいます。

悲嘆にくれるオルフェオを哀れに思った父であり太陽神であるアポロが雲に乗って登場します。

バロックオペラには、最後に雲に乗った神が降りてきて救いの手を差し伸べるというパターンがけっこうありますが、当時、王侯貴族が舞台に立つことが多く、この場面で、登場して慈悲深いところを見せるという演出もあったようです。このオルフェオがどうだったかはわかりませんが。しかし、これはバロック期にオペラがどのような役割を果したかを語るには重要な要素です。

ちなみに、なんでこんなことを書いたかというと、この曲のガーディナーのCDを買ったわけです。
モンテヴェルディ『オルフェオ』(ガーディナー指揮/イングリッシュ・バロック・ソロイスツ)
素晴らしい。清明な演奏です。CDで買うならダントツでこれがよいでしょう。

しかし、映像と字幕もあった方がいいので、まず手初めにという感じでしたら、下記DVDがお薦めといえるでしょう。
モンテヴェルディ:歌劇《オルフェオ》リセウ大歌劇場2002
めっちゃプレミアついてますけれども。

| 音楽 | 03:17 AM | comments (0) | trackback (0) |
ガーディナーのバロック音楽のCDを3種買いました。
最近、バロック芸術について熱心にいろいろ読んでいたんですが、その中でも中島智章(著)『図説 バロック』(ふくろうの本/世界の文化)というのが、個人的な印象としては最も良い本ではないかと思うようになってきました。建築や都市計画を中心に扱われており、絵画や彫刻は二の次的になっているような気がしますが、まさにそこがバロックを語る上で重要だと思うようになりました。そして、音楽についてもしっかり語られている点もよろしいかと。バロック美術と、バロック音楽はそれぞれの専門家が別の本で述べるようなものという思い込みがありましたが、こちらはしっかり言及されている、しかも音楽を教科書的に述べるのでは無くて、バロック音楽をかなり深く、そして楽しみつつ聴いてきたのだなぁというのが伝わってきて、それを読んでいたら、私も聴きたくなってきました。バロック音楽初期の大作曲家モンテヴェルディの著名なオペラはかつてDVDを買いあさりましたが、他にも初期から盛期バロックの重要なオペラ作家は居ましたので、それも買わねばならぬ。といろいろ物色しているところです。ちなみに、探して驚いたのは、バロックオペラ最大のイベントと思われるマルカントニオ・チェスティの「黄金のリンゴ」の音声らしいものが、youtubeに上がっていたことですが、それはまぁ、機会があったら述べたいところです。絵描きや美術愛好家にはバロック好きの人は多い、そして音楽好きの人にもバロック好きの人は多いのですが、実はほとんどの人はバロックというものの、ほんの一部しか知らない、あるいはたまたま現代人に理解しやすい部分だけを抜き取ってそこだけでバロックのイメージを作っているようなところがあると思います。それはそれでまぁ、いいのかもしれませんが。音楽でバロックと言えば、誰もがバッハを思い浮かべますが、バッハは確かにバロックを代表する作曲家ではありますが、しかし、本当にバロックを体現した作曲家は、もっと他にたくさん居て、一般的には忘れているのではないかと。モンテヴェルディはけっこう知名度も高く、そして、現代でも評価が高いと思いますが、その辺のちょっと音楽が好きな人に聞いても誰も知らんことでしょう。よくバッハのことを音楽の父と言いますが、どう考えてもルネサンスポリフォニーから、バロックオペラの橋渡しをしたモンテヴェルディの方が、現代のクラシック音楽の父ではなかろうかと。まぁ、しかし、そんなことは置いておくとして、とりあえず、ガーディナーのCDをまたいろいろ買いました。まずは、バッハの管弦楽組曲(ガーディナー/イングリッシュ・バロック・ソロイスツ)、バッハの管弦楽組曲は誰も知っている名曲揃いですが、私は特に第2番ロ短調が好きです。短調のバロック曲というだけで、心を揺さぶられるものがありますが、これは長年、ミュンヒンガーのCDを愛聴しておりましたが、このガーディナーの演奏は、それと比べるとあまりのスピード感で、早口言葉かよ、という感じなのですが、序曲は旋律が聞き取れない程でした。しかし慣れるとけっこう癖になります。こちらの方がずっとバロックっぽいなという気もします。こちらに慣れてしまうと、戻れないような気もします。しかし今のところ、どちらか一方を選べと言われたら、ミュンヒンガーの方を選ぶとは思いますが。そしてヘンデルのオラトリオ「メサイヤ」(ガーディナー/モンテヴェルディ合唱団)、メサイヤは大仰な演奏が多くて、あんまり好きではないのですが、こちらはヘンデル時代を再現するかのようなピリオド演奏です。一回聴き通してみましたが、清明で聴きやすい演奏です。そして、たぶん小編成だと思いますが、盛り上がるところは盛り上がります。CDで聴く場合はこちらの方がよいかもしれません。しかし、メサイヤって英語なんですね。ラテン語、ドイツ語、イタリア語と違って、英語の宗教曲ってちょっと違和感ありますな。それから、カリッシミ:最後の審判(ガーディナー/モンテヴェルディ合唱団 )。こちらは盛期バロックの作曲家。安かったので思わず買ってしまいました。バロックという時代はけっこう長い。そして、まだまだ知らないことがたくさんある。古典派以降の音楽はめぼしいものはだいぶ聴きましたが、バロックはまだまだカオス的に膨大な世界が広がっているので、こちらを探っていきたいところです。

| 音楽 | 03:16 AM | comments (0) | trackback (0) |
ティントナー:ブルックナー交響曲全集を買う
また無駄なものを買ってしまいました。
ティントナー
ティントナー/ブルックナー:交響曲全集
http://www.hmv.co.jp/news/article/1401300027/

もっと他に買うべき物がたくさんあるような気がするのですが。

最近、ブルックナーの交響曲第3番を良く聴くようになっており、頭の中で絶えずブルックナーが響いている感じなのですが、しかしながらこの第3番、ブルックナーの交響曲の中でも個人的にあまり積極的に聴こうとは思わない曲でした。むしろ初期作品である1~2番の方が好きだったくらいです。もともとブルックナーの曲は、いずれもいきなり魅力がわかるようなものではないのですが、そんな中でも最後までよくわからない曲だというのが正直な印象だったわけです。この曲の理解しがたさは、初めて演奏されたときのエピソードに現れているかと思います。初演はブルックナー自身が指揮をすることになったのですが、当時やはり曲の良さが理解してもらえず、楽章の合間毎に次々と聴衆が帰ってゆき、演奏を終える頃には数人しか残っていなかった。さらに団員までもそそくさと帰ってしまい、ステージにブルックナー1人取り残されたとか。このときのショックでブルックナーは1年間、作曲ができず、毎日ドナウ川に通って川岸の砂粒を数える日々が続いたという話です(普段から砂粒に限らずなんでも数える癖があったそうですが)。クラシック音楽では、今は名曲として知られる曲でも、初演時は意外と失敗しているケースが少なくないのですが、その中でも、ダントツの不遇さで伝説として語り継がれるレベルといえるでしょう。

それはともかくとして、私としては、これもまた理由はよくわからないのですが、最近になってなんとなく部分的にいいなぁと思いはじめ、そして気が付いたらかなりお気に入りの曲になっていました。これは演奏によっても、違うかと思います。CDによってはどの部分を聴いてもさっぱり良くないのですが、いい演奏だと、どの部分も味わい深い旋律のように聴こえてきます。ニ短調ということもあり、どことなく遺作である第9番に通ずる雰囲気が漂っています。

この曲は最初に作曲されたときの状態である第1稿、作曲が自身が後に改訂した第2稿、晩年にさらに改訂した第3稿があるのですが、ふつう演奏されるのは、第2稿か第3稿になります。先の初演の話の時点で、既に第2稿だったようなので、やはり晩年の第3稿と第2稿のいずれで演奏するかが問題となります。その2つのうちでも、校訂者によっても微妙に譜面が違っており、マニアの方々の間で熱く議論されていたりします。ちなみに演奏時間は、第2稿が平均60分、第3稿が55分となっていますで、最終的にけっこうカットされているところが多いと言えます。従って、どちらかというと第2稿の方が好まれる傾向があるようです。ブルックナーは自分の作品をやたら改訂することで知られていますが、技術的に成熟した晩年の改訂の方がよく出来ているのではないかとふつう思うところが、実際は改訂によってカットされる部分が多くて、逆にスケールダウンしてしまうこともあるのです。第3稿はちょっと終楽章が短くて物足りないかな、とか、感じるわけです。

そして、ほとんど話題になっていない第1稿はさらに長い状態であり、70分くらいの演奏時間になります。第2稿改定時に大幅にカットされており、元はかなりの大曲だったようなのです。となると、やはり第1稿を聴いてみなければならんという気持ちになってくるわけです。ネットで検索しつつ、いろいろ調べてみましたが、第1稿の演奏という、かなり限られた音源の中でも特に評判がよいのが、ティントナー指揮のCDでして、そんなわけで、ここまで説明が長くなりましたが、今回購入した件となります。単品で第3番だけのCDを買った方が安く済むのですが、ティントナーという人物の来歴を読んでいたら、思わず全集のBOXを買わずにいられませんでした。

さっそく聴きました。ブルックナー交響曲第3番の第1稿。演奏が遅めのテンポのせいもありますが、全体で77分もあり、ブルックナー後期の大曲に匹敵する作品となっています。第1楽章がなんと30分もかかる。第2楽章もたいへん雄大な感じで、演奏も曲も共に素晴らしいと言えます。第3楽章も。そしてフィナーレも充分に長く、むしろかくあるべきといった感じです。第3稿では短すぎてオマケみたいになっていますが、本来こちらの方がずっとバランスが良いんじゃ思われます。これを聴いてしまうと、もう第3はこれしかないんじゃないだろうか、的に思うのですが如何でしょう。

このBOXには、習作とされる0番、00番も含めて計11曲が収められているので、順次聴いていきたいと思います。放置して忘れてしまう可能性も高いですが。。。

| 音楽 | 10:35 PM | comments (0) | trackback (0) |

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