ワーグナー:ニーベルングの指環/カールスルーエ・バーデン州立歌劇場
現在、自家用車で片道1時間の道程を通勤しているので、買いためたCD BOXを聴きながら過ごしているとは前に書きましたが、この度、ワーグナー:ニーベルングの指環/ノイホルト指揮/カールスルーエ・バーデン州立歌劇場CD14枚組を聴き終えました。格安の指輪全曲BOXとして割と知られて存在ですが、格安の割には良い演奏だと評判なのですが、個人的には格安じゃなかったとしてもかなりCDなのではないか、とお薦めしたい気分です。全体的にかなりパリッとした演奏で、非常に聴きやすい、というか、かなり聴きやすい。そして、その割に要所ではなかなか迫力があります。ライブだけあって、臨場感があり、なんだかんだでけっこう感動的です。ジークフリートの終盤とかかなり迫力です。神々の黄昏も素晴らしい。個人的にはショルティのスタジオ録音のCDよりもずっと感動的な演奏である気がするんですが、どうでしょう。ただし、車載CDで聴いたせいかもしれません。エンジン音とか、ロードノイズとかあっても、聴きやすいという面があったかもしれません。部屋でヘッドフォンをかけてじっくり聴くと、ちょっともうちょっと凄かったような気がしたんだが、というのは多少感じないことはないですけれども、それでも、指輪を通して聴いたことがないという人に何か進めるとしたら、今のところはこのBOXが一番いいかなぁと思います。14枚も聴いていると、頭がワーグナー脳になり、ワーグナー意外の音楽を聴こうという意思がちょっと湧かなくなってきたりするところが怖いところです。
それにしても、ふつうに暮らしていたら、指輪のBOXを通して聴こうなどという余裕はなかなかないわけで、買ったまま放置しているCDがけっこう積まれているのですが、聴く機会があってよかったような。しかし、通勤時間が長いとは言え、意外とCD BOXというのは聴き終わらないもので。なんとなく繰り返して聴いてみたり、SDカードに入っているアニソンを聴いてみたりといろいろ気分にもムラがあって、まぁ、月に1BOX聴けたらいい方かもしれません。あるいは2ヶ月に1BOXかもしれない。次ぎに何を聴くか、というのはけっこう重要な選択である。


| 音楽 | 11:19 PM | comments (0) | trackback (0) |
ベートーヴェンについて大いに語る
歴史上の人物で私が最も尊敬しているのはベートーヴェンであり、ベートーヴェンが突出し過ぎて世の中で他の人物が何をやっていようとも割とどうでもいいかなと思うほどですが、他人にこれを理解してもらうのはなかなか難しいところです。なんと言ったらいいんでしょうか、敢えて説明するとすれば、クラシック音楽にもいろいろなジャンルがありますが、ほとんどのジャンルでベートーヴェンの作品が頂点を極めていると言える点でしょうか。弱点を挙げるとすればオペラ分野であり、ヨーロッパ文化の代表格と言えば、音楽に限らずあらゆる分野の芸術が集約しているのがオペラであって、そういう意味ではベートーヴェンは結局1作しかオペラを残せなかったことを考えると、極めて致命的な弱点と言えるのですが、たとえ1作だったとしても、ビゼーのカルメン級の作品だったら文句はなかったところですが・・・まぁ、しかし実は近年のオペラ文化の衰退っぷりは凄まじく、西洋文化を代表するような格を保てなくなりつつあるということもあり、相対的にベートーヴェンの弱点は克服されつつあります。そもそも、オペラで華々しく成功していたらベートーヴェンではないような気がします。が、しかしいずれにしても、そのような業績面の事などはむしろどうでもいいのかもしれません。ただの小品などにおいても、旋律の誇り高き気高さにおいて、別格のような気がするのです。というわけで、年末年始は訪問者も少ないので、この隙にひっそりとベートーヴェンの交響曲のベスト盤を自分なりに考えて語ってみたいと思います。ベートーヴェンの交響曲は9作あります。まずは第1番から・・・

■交響曲第1番■
交響曲ジャンルでベートーヴェンの本領が発揮されるのは第3番『英雄』からであり、第2番まではまだ初期作品群です。解説書などでは、ハイドン、モーツァルトなどの古典派作曲家の技法を踏襲しつつ、しかしながら所々ベートーヴェンの個性も垣間見える段階である・・・という説明がされていることが多いのですが・・・。しかし実はよく聴いてみると第1番はたいへん魅力的な曲であり、ベートーヴェンの作品全体を聴き込んでみると、第1番は既に完全にベートーヴェン的であり、非常に聴き応えのある曲です。第1番を甘く見る者は素人と言えるでしょう。第1番の魅力が伝わらなかったのは、前世紀の大編成のオーケストラで聴いていた為に、曲と演奏がかみ合っていなかったのではないかと思います。というわけで、お薦めはやはりピリオド奏法の録音がいいんじゃないかと思います。というわけで、推奨版はピリオド奏法のCDの中から、ガーディナー指揮&ORRがベストといえるでしょう。特に第4楽章は快活で、これを聴くと活力が沸いてきます。大編成オケと比較してもむしろかえって立派な感じに聞こえるのは何故なのでしょう。なお、ハイドン交響曲全集など聴いたあげくに再び本曲を聴くと感慨深いものがあるというか、印象がだいぶ変わります。

■交響曲第2番■
第1番同様、様式的には従来の古典派の範疇にあるものの、演奏時間もそれなりに長くなり、なかなか勢いのある曲で、愛聴するファンも多いと思いますが、私も非常に好きな曲です。後の傑作と比べるとまだ小さいですが、従来の交響曲の範疇ではかなりの規模と言えるでしょう。ベートーヴェンは古典派に分類される作曲家ですが、次作の第3番「英雄」はロマン派のスタート地点ではないかと言われるような大曲であり、ゆえに本作がハイドンから連なる純粋に古典派的な交響曲の最高峰ではないか、という説を唱えたいところです。良く言及されることですが、ベートーヴェンの難聴が悪化した時期の作品であり、有名な「ハイリゲンシュタットの遺書」を書くなど、ベートーヴェンにとっては辛い時期だったにもかかわらず、そういうところをまるで感じさせないところが逆に泣かせるところです。で、お薦めは、ヒコックス指揮ノーザン・シンフォニア・オブ・イングランドです。小編成のオーケストラで演奏しているようですが、ピリオド奏法に慣れてから改めに聴くと、モダン楽器としては丁度よい編成に思えます。指揮者もオケも一般的な知名度は無いと思われ、もう生産されることはないと思いますが、amazonで中古CDが1円とか売られているので、格安で入手可能。または、同じくAmazonで全集がダウンロード販売されています。ガーディナー/ORRのCDも大変お薦めと言えます。速いテンポで進行し、非常にメリハリがあって、大いに盛り上がります。勢いがありすぎて、バランスを欠いているような点が無きにしもあらずなので、初めはヒコックスを、その後にガーディナーをというのが私もお薦めコースです。しかしこの曲はどの録音で聴いても、曲の魅力が十分に伝わるような気がするので、基本的にどのCDでもいいのかと思います。

■交響曲第3番『英雄』■
ベートーヴェンの「英雄」は交響曲界の中でも屈指の傑作であり、交響曲というジャンル自体がこの曲によって大きく変化したと思われるぐらいの影響があったのですが、それどころか音楽史自体がこの曲で分岐するんじゃないでしょうか。BBCが放送したドラマがDVD化されており、『フィルム「英雄」永遠に音楽が変わった日』というタイトルで販売されていますが、全くの誇張というわけでもないと思います。私が一番最初にこの曲の存在を知ったのは高校時代に世界史の先生が「世の中にこんなすごい曲があるのかと思った」というような話をしたときで、それほどすごい曲とはどんなものだろうかと思ったものですが、実際聴いてみると高校生の自分にはよくわからなかったのが正直なところです。この曲の良さを理解するまでは、多少時間がかかるような気がします。さて、本曲で最も気に入っている録音はヘンリー・アドルフ指揮/西ドイツフィルハーモニー管弦楽団というCDです。私が大学生の頃、書店などで格安CDとして売られていたものであり、他の曲と2枚組で500円前後で並んでた記憶があります。まだCDというものが安くなかった時代で、レコードショップで何を買うか、尻から血が出るほど悩みつつ買っていたような時代だったから、この格安品は重宝したものです。最近ネットで検索して知ったのですが、この指揮者、いわゆる幽霊指揮者で、実際には存在しない人物だったとか。アルフレート・ショルツという人が、放送局などの大量の録音の権利をまとめて買い取り、適当な名前やときには自分の名前を付けてCDにして販売していたそうな。そんな中の1枚だったわけです。この英雄のCDは、特に強い個性というものはなく、最初に聴いたときは薄い印象の演奏であり、さすが格安CDのクオリティだと思いました。当時熱心に聴いていた朝比奈隆やフルトヴェングラーと比べると、実に薄っぺらい印象があったのですが、今になって振り返ってみると、このCDが最も繰り返し聴いた「英雄」でした。酷く強調したりとか、そういうところがないせいか、何度聴いても飽きません。第1楽章は最高の演奏といえるでしょう。第4楽章もいいと思います。今ではさすがに売ってないと思いますが、たまにヤフオクに出品されてたりするので是非聴いてみてください。最近よく聴くのはガーディナー/ORRであり、ちょっとないくらいのスピード感が心地よく、これもまたお薦めです。

■交響曲第4番■
ベートーヴェンの交響曲に私如きが何か苦言を呈したりするようなことはおこがましいにも程があるけれども、しかしあえて何か言うとしたら第4番はどうもちょっとどうかなと思うところがあります。序奏から始まって速度が上がって盛り上がる展開は第1番、第2番と共通して、第4ではちょっと演出が過剰気味になった感がなきにしもあらずです。第2番くらいがバランスが良かったような。この曲の緩徐楽章は好きです。いろいろ聴いてはみたものの、お薦め盤は、まだ保留というところです。敢えて挙げるとすれば、ホグウッド/アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージックです。しかしまだまだ勉強不足なのでしょう。いろいろ聴いてみたいと思います。

■交響曲第5番『運命』■
この曲の最高の演奏はカルロス・クライバー/ウィーフィルのCDでしょう。異論はあると思いますが、そんなに多くはないと思います。これほど格好良い「運命」は他にありません。格好いいのに、決して軽くないところが凄いと言えるでしょう。なお、私が個人的にこの曲の中で最も好きなのが第2楽章です。これほど心を慰められる緩徐楽章は他にありません。前掲のクライバーのCDは第1楽章の格好良さと、第4楽章の盛り上がりで頂点を極めていますが、第2楽章も素晴らしいものの、何か少々もの足りないような気がします。物足りないというよりは、逆に足りすぎていて、心を慰められないというか。フルトヴェングラーのCDは第1楽章の運命の動機や第4楽章の勢いなどが話題になりますが、私としては第2楽章に着目して、このCDを採り上げたいような気がします。

■交響曲第6番「田園」■
この曲は「田園」という情景を表すようなニックネームが付いているだけあって、いくぶん標題音楽的な傾向がみられます。しかし厳密にはこれはまだ標題音楽ではなくて、純粋音楽のジャンル分けされるようです。「標題音楽」とはブリタニカ国際大百科事典によれば「楽曲の様式。文学的,絵画的,劇的な内容を暗示する主題や説明文,すなわちプログラムを伴った音楽。器楽曲に多く用いられ,絶対音楽に対する。ロマン派におけるシューマンの標題付きピアノ曲,ベルリオーズの標題交響曲,リストや R.シュトラウスの交響詩などが最も代表的なものであるが,国民楽派の風景や伝説を描いた音楽や,瞬間的なイメージをとらえた印象派の音楽も標題をもっている」とされています。その対義語は絶対音楽(absolute music)であり、同事典によれば「音楽以外の制約から解かれた,すなわち他の芸術と結びついていない純粋な音楽をいう。したがってそれは,言語内容を音に響かせようとする意図や,対象的なものを模倣あるいは描写しようという意図,また感情などを表現しようとする意図はもたず,音楽的形式や秩序そのものがその存在の根元をなしている」。標題音楽と絶対音楽に優劣は無いと思うし、どちらも楽しみたいところであるけれども、交響曲という様式は絶対音楽向けのような気がしているし、ベートーヴェンが最も力量を発揮するのも絶対音楽分野のような気もする。そして、一般的な認識ではベートーヴェンの田園は厳密には絶対音楽の範疇だけれど、これが交響曲分野での後に隆盛する表題音楽にかなり影響があったのではないか、それどころか後の標題的な交響曲や交響詩の草分け的存在、いやむしろ発生源ではないか、とも思うので、実はあまり好きな曲ではなかったりします。第1楽章に関してはどのCDを聴いてもそれなりにいいなとは思うのですが、全体を通してどうかというとお薦め盤はまだ保留です。

■交響曲第7番■
リズムを重視した独特の曲調で、他の作品と少々雰囲気が異なるような気がします。ベートーヴェンの生前に成功を収めて何度も演奏された模様ですが、実は現在、ベートーヴェンを代表するような曲でも、生前は不遇な目にあってる作品は多かったので、そういう意味でも第7番は初見でも理解しやすい名曲だったのでしょう。しかし、リズム重視でわかりやすい雰囲気がある為、私はベートーヴェンにしては外面的な感じの作品だと思っていました。いい曲だけれどもそれほど聴き込んでみるほどの要素はないかな、それほど大した曲ではないような、というか、正直にいうとちょっと変な曲だなと思っていたのですが、ガーディナー/ORRの録音を聴いてからは、全くその考えが変わりました。今では指折りのお気に入りです。この演奏は本当に素晴らしい。古楽器で小編成、異様に速いテンポであり、そんなに迫力があるはずはないのですが、これほど誇り高い第1楽章が他にあるでしょうか。この演奏を聴くとまさに第7番こそがダントツで9曲中最高傑作と言いたくなりますが、しかし、他の演奏を聴くと、そうでもないという気がするので、厳密にいうと、ガーディナー/ORR演奏の第7番に限定されるのかもしれません。

■交響曲第8番■
ベートーヴェンの交響曲は奇数番号に革新的で規模の大きな曲が多く(英雄、運命、第九など)、偶数番号は逆に落ち着いた感じの曲が多いという傾向があります。奇数番号が男性的、偶数番号が女性的と表現さてることもあります。そんな偶数番号の作品の中で、最も有名なのはたぶん「田園」ですが、個人的に最高傑作だと思うのは、第8です。この曲はどの演奏を聴いてもそれなりに曲の魅力は伝わりますが、ヒコックス指揮ノーザン・シンフォニア・オブ・イングランドが特にお薦めです。オケの編成、テンポなど、絶妙なバランスで、初見には最適かと思います。第8番の場合、非常に速いテンポで劇的な演奏が話題になる傾向があるのですが、私はこれくらいがちょうどいいと思います。特に気に入っているのが第4楽章で、バランスのいいテンポと、それでいてどことなく哀感のある音作りが素晴らしいと思います。そんなに知名度の高い指揮者でも楽団でもないので、たぶん偶然なのかと思いますが。現在はAmazonでダウンロード版で全集が出ているの購入可能です。前にも書きましたが、ガーディナー/ORRのCDが非常に素晴らしいです。特に第1楽章は最高の出来映えで、これほど感動的な第8番は他にないというほど立派です。

■交響曲第9番■
フルトヴェングラー&バイロイト(1951)足音入り、これを聴かずして第九は語れないところです。これを聴かないというのは人類としてどうかと思いますが、しかし、これを日常的に聴いている人もそう居ないんじゃないかと思います。いや、けっこういらっしゃるかもしれませんね。しかし、いろんな録音を聴いたうえで、フルトヴェングラーを聴くと感動もひとしおだと思うので、まずは他を挙げるとすると、快速な例としてはシャルル・ミュンシュの録音と個人的に好みです。古楽器演奏ではガーディナー/ORRがよろしいかと思います。これは古典的な急緩強弱を踏襲しつつ非常にコンパクトにまとめているので、ピリオド奏法に拒否感がある人でもすんなり受け入れられるのではないかと思います。まず、第1楽章が活気に溢れており、一分の隙も無いような密度になっています。第4楽章はこれは正直けっこう感動的な演奏なので是非聴いてもらいたいところです。古楽器演奏なので、たぶんコンサートホールで聴いても、おそらくあまり迫力はないのでしょうが(先ほどから古楽器演奏のCDを大いに薦めていますが、大ホールでのライブを聴くとけっこうガッカリすることが多いですよ)、CDで聴く分には超絶感動の嵐的な録音です。古楽器演奏とは思えないくらい正統派中の正統派的な印象を持っています。

というわけで、この文章を最後まで読んだ人はまず居ないと思いますが、良いお年を。

| 音楽 | 01:39 AM | comments (0) | trackback (0) |

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