カタコンベに行ってみよう!
映画『薔薇の名前』について語る第4弾、最終回です。


相変わらず動画の再生数が延びませんが、仕方ないとこです。本ブログでは原作についても語らねばならないと思いますつつ久々にページを開いてみましたが、原作を読んだのはかなり昔の話でして、それからヨーロッパ中世に関する本をやまほど読んだということもあって、改めてあちこち見てみたら、何気なく出てくる人名とかが、みんなけっこうなじみ深いものだったりして、非常に面白いとか、そんなレベルじゃないくらい興味深いという感じでだいぶ印象が変わりました。中世神学とかその辺も踏まえると益々楽しめるものだと思いました。今すぐ読み返してみたいところですが、思わず中世関連の本をまとめ買いしてしまったので、それを読んでからの楽しみとしたいと思います。そして、原作について語るにはまだまだ勉強不足だと感じたので、それは止めにして、その他のことをちらほらと。

動画ではカタコンベについて話題になっていますが、ヨーロッパの大きな教会や聖堂の地下にはたいていカタコンベというものがあって、髑髏がやまほど積まれています。そして、たいてい見学できるようになっています。ガイドツアーに参加する形式が多いようです。ただし、有名な聖堂の場合は、整備され過ぎてしまって、綺麗すぎてリアル感がなくなっていることもあります。ウィーン市だと、有名なシュテファンドームのカタコンベは、観光客向けに綺麗になり過ぎていたかな、という記憶があります。ウィーン市ですと、聖ミカエル教会のカタコンベが比較的昔のままのリアルさを残していたような気がします。
昔のことなので、記憶が曖昧なのですが、以下の動画がたぶんそれかな、と。


映画に出てくるようなカタコンベではありませんが、カプツィーナー納骨堂は必見と言えるでしょう。マリアテレジアを初めとする、ハプスブルク家の納骨堂で、世界史に登場する皇帝、皇后、その子孫らが埋葬されているのですが、マリアテレジアの棺の豪華さはすさまじいものがあります。奥の方にゆくと非常に小さな棺がたくさんあるのですが、親近婚をくり返すうちに乳児死亡率が高くなっていたようで、小さな棺が並んでいる部屋はちょっと怖い感じがしました。最近ではオットー・フォン・ハプスブルクも埋葬されたそうです。神聖ローマ帝国もオーストリア帝国も今は無くなっていますが、私などには全く縁がないことですが、ハプスブルク家は今でもヨーロッパ貴族階級の頂点として君臨しているのかもしれません→『世界の富の99%はハプスブルク家と英国王室が握っている』

私がいろいろ訪ねる機会があった図書館の中でも、もっとも印象に残っているのは、ウィーンのプルンクザールです。
かつて王宮だった建物の一角にかった記憶がありましたが、なかなかすごいです。薔薇の名前とはそんな関係ないですけれども、豪華本も多数拝めます。
https://www.onb.ac.at/en/rent-support/renting-premises/state-hall/

図書館としては大英図書館が有名ですが、昔は大英博物館内にあったのですが、現在は図書館は別に場所に移動しています。図書の閲覧は研究者などではないとできなかったような気がしますが、展示室があって、有名な図書を見ることができました。ベオウルフの写本とか、マグナカルタなどあったような。けっこうたくさん見ることができました。

| 映画 | 12:41 AM | comments (0) | trackback (0) |
薔薇の名前について語る動画の第3弾、写本制作の動画やらいろいろ
映画『薔薇の名前』について語る動画の第3弾です。


動画内で紹介しているMedieval Craftsmen Scribes and Illuminatorsという本ですが、これは非常によい本です。是非お手元に一冊ということですが、これはMedieval Craftsmenというシリーズの一冊で、他にもいろいろな職人のものが出版されています。Painters (Medieval Craftsmen)は中世の画家について。Glass-Paintersはステンドグラス?、Masons and Sculptorsは石工と彫刻家について。なお石工は建築家といえるでしょう。大聖堂などの石の建築は石工が経歴のスタートだったいうのを読んだ気がするのですが。他に、Medieval GoldsmithsEmbroiderersなどいろいろありましたが、これらの半分くらいは入手したものの、読む時間がない。時間がないというのは言い訳に過ぎませんので読まねば。

写本制作に関しては以下の動画がたいへん参考になります。素晴らしいです。

英語ですが、私ですら聞き取れるので、たぶんそれほど大きな困難はないと思います。
まずは羊皮紙の作り方から始まります。石灰水に浸けたりして処理したものを特別なナイフで毛や余分なものをそぎ落とし、またその間、枠に張って引っ張っていたりなど、しっかり映像化されております。羽ペンの作り方も紹介されています。鳥の羽を熱した砂に入れて固くして、それからナイフで形を作ります。なお、この映像を見て私もやってみましたが、いきなりはうまくいきませんでした。一応ちょっとは文字など書けましたが、すぐに駄目になってしまったのですが。インクはオークの虫瘤によるタンニンのインクについても一応触れられていますが、映像で使っているのはランプブラックのインクのようです。という具合で、写本制作について語られていきます。

ゴシック期、あるいはロマネスクもそうだと思いますが、彫刻に派手な色が塗られていたという話を動画でしておりますが、イメージとしては以下のブログの記事が参考になるかと思います。
http://coutances.blog62.fc2.com/blog-entry-5.html
夜に彫刻をライトアップして、彩色されていた状態を再現するイベントっぽいです。

| 映画 | 01:18 AM | comments (0) | trackback (0) |
中世とアリストテレスについて考えてみる
映画を紹介する動画 『薔薇の名前』 その2
#1の続きです。



さて、動画の中でもいろいろ語っておりますが、この映画、ある程度、中世に関する予備知識がないとよくわからないと思います。特に最後のオチはいったい何だよと思うかも知れません。なので、私ができる範囲で説明してみたいと思います。補足したいことも多々ありますので。

中世の初期から中期においては、文化の担い手は修道院でした。やがて都市が勃興し、技術は都市の職人へ、学問は大学へと主役的な役割が移行していきますが、映画の時代はもうすでにかなり移行してしまったという時代でしょう。テオフィルスが修道士だったのに対し、チェンニーニが職人だったのもそれを物語っているような気がします。映画において最後に大図書館が燃えてしまうのも、それを象徴していると言えます。大量の書物が燃えてしまってなんというもったいなことだろうと思ってしまいますが、もしかしたらその役割を終えたのかもしれません。

この物語でキーとなるのがアリストテレスの書です。その内容を巡って連続殺人事件が発生するわけですが、中世におけるアリストテレスの重要度がわかっていないと、きっと意味不明な結末と思われてしまうことでしょう。この時代、アリストテレスは非常に重要な存在でした。哲学、神学、自然科学などの学問においては、聖書と並ぶぐらいの存在感があったと言えます。それをちょっと手短に説明してみたいと思います。古典古代から中世の哲学の考え方として特徴的なのは、現実の世界の上位に普遍的な何かがあって、キリスト的にはそれは神ですが、それについて考察するのが学問といえました。プラトンのイデア思想をさらに特化した、現在では新プラトン主義と呼ばれる考え方と、キリスト教が結びついたという感じでしょうか。そのような考え方を通して、現実の物質や現象などについても考察を深めてゆくわけですが、現代人からみると自然科学のようなものはまるで進展しないように見えます。

一方、中世初期にはアリストテレスの本はヨーロッパにはほとんど伝わっていませんでした。アリストテレスはアラビアの方に伝わってイスラム勢力圏で盛んに研究されます。やがて、十字軍の往き来などで、アリストテレスとプトレマイオスが(アラビアから翻訳で)西洋に再び知られるようになります。これが12世紀ルネサンスというものです。アメリカの歴史家ハスキンズが提唱、著書『12世紀ルネサンス』という本に書かれています。日本語訳が出ていますが、日本人の著者が書いた伊東俊太郎(著)『十二世紀ルネサンス』(講談社学術文庫)が、入手しやすく、その後の成果もフィードバックされているので、こちらでもよろしいかと思います。15世紀の盛期イタリアルネサンスの前に、古代の哲学書が復興するという、ルネサンスがあったわけです。ギリシア・ローマの古典文化の書物の数々が翻訳され、文献的に古典復興が起こりました。大翻訳時代とも言われます。映画で最初に殺されるのもギリシア語翻訳家です。キーパーソンである盲目の老人はイベリア半島から来たという設定になっていたと思います(ちなみに、文書作成の下地としてはカール大帝の頃にカロリングルネサンスというのもありますが)。中世哲学の発展や考え方については、八木雄二(著)『神を哲学した中世 ヨーロッパ精神の源流』 (新潮選書) という本がお薦めの書と言えます。

アリストテレスはプラトンのイデア論とは違って、現実の物質について考える傾向があり、場合によっては、近代的な自然科学の発達を促した可能性もあるのですが、中世ヨーロッパの大学や修道院ではその違いはあまり伝わらず、専ら哲学する為(普遍について考える為)の道具として使われたようです。哲学ツールとして非常に優れていたようで(この件に関しては私の手には負えませんが)、深く考察するという面については深化して、たぶんその後の西洋哲学のベースになったのだと思われます。というわけで、大学や修道院では現代人が思うような自然科学、実験や追試をくり返すような自然科学には至らなかったのですが、チェンニーニなど、中世の職人による技法書を見ると(あるいは修道院でもテオフィルスのような役割の人の書を見ると)、仕事をする上で化学実験に近いことが日々くり返されるわけで、やがて職人階級において突出した成果が現れます。それに関しては山本義隆(著)『一六世紀文化革命 1』などが面白いので、合せて読んでみるといいんではないかと思います。

| 映画 | 04:25 AM | comments (0) | trackback (0) |
映画を紹介する動画 『薔薇の名前』 その1
美術に関する映画を紹介しようという動画を作ってみました。最初に取りあげたのは『薔薇の名前』です。


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THE NAME OF THE ROSE (仏・伊・西独/1986) ヨーロッパに異端審問の嵐が吹き荒れている1327年、北イタリアのベネディクト修道院に会議の準備のためにバスカビルのウィリアムと見習い修道士メルクのアドソがやって来る。だが、修道院に着いた二人を待ち受けていたのは、不可解な殺人事件だった。文書館で挿絵師として働く若い修道士が謎の死を遂げ、それに続いて、ギリシャ語の翻訳を仕事とする修道士が殺されたのだ。ウィリアムは事件の究明に乗り出し、この事件が文書庫と関係があるとにらむが…。イタリアの記号学者ウンベルト・エーコの描くメタファーと引用に散りばめられた、知の迷宮世界を映画化した中世ミステリーの佳作。
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グーテンベルクの活版印刷術発明発明以前の話です。写本と言われる手で筆写する本が多数出てくるのですが、中には豪華な装飾が施された写本がいくつも登場するということで、美術的にも面白い映画です。映画の設定年代は1327年、テオフィルスの技法書(テオフィルス「さまざまの技能について」)とチェンニーニの技法書(チェンニーニ「絵画術の書」)の間くらいでしょうか。修道士テオフィルスが活躍したのが、おそらく11世紀末から12世紀初頭、チェンニーニの絵画技術書が書かれたのは1400年頃、しかし書かれている技術はジョットから連なる工房で、以前から引き継がれていたものだと思われます。ジョットの没年は1337年なので、彼の活躍した時期と被っています。装飾写本というのは非常に大事です。
我々は美術館の壁にかかっている額縁に入った絵画や、イタリアの礼拝堂の壁画などにばかり目がいった状態で美術の歴史、あるいは絵画の歴史を俯瞰しがちですが、忘れてならないのが、写本装飾の細密画です。いや、挙げていけば、厳密にはもっと他にもいろいろあるのですが、まぁとりあえずそのひとつということで。絵画の様式の変遷で、何か空白がありそうだとか、いきなりなんでこんな完成度の高い様式が出てきたのだろうかと思うとき、写本の細密画にも目を向けてみたいところです。というか、中世ではむしろ写本の方が主役じゃね?的な感じかもしれません。ということで、そんな写本に興味を持つきっかけになるかもしれない映画ですので、未見でしたらご覧になってみてください。

なお、写本に興味を持つだけでしたら、ただ見ているだけでもなんとなく面白いかと思いますが、内容を理解しようとなると、中世に関する予備知識がある程度必要になってきます。というわけで、この動画の続きでは、その点について語っていきたいと思います。

| 映画 | 07:33 PM | comments (0) | trackback (0) |
The Wizard of Speed and Time - Mike Jittlov (1988)
ゲームでも映画でも世界史ものが好きなので、そんなのばっかり見ているのですが、世界史ものを除くて、最も好きな映画は何かと言えば、Mike JittlovのThe Wizard of Speed and Time(1988)です。

ストップモーションで映画を撮っているマイク・ジトロフという人物が主人公(作者が主演している)で、紆余曲折の末に映画を完成させるまでの物語ですが、劇中に短編映像が多数出てきて、終始楽しい映画です。80年代の映画なので、今のような高性能のパソコンはありませんから、フィルムで合成してストップモーションアニメを作っていますが、現在のフルCGの映画よりずっと面白いです。

この映画を知っている人はほとんどいないと思いますが、youtubeにFull Movieが上がっているので、全編観ることができます。


残念ながら日本語字幕はついていません。日本では当時、字幕付ビデオテープが販売されていたのですが、それらしいものがニコニコ動画にあがっているので、字幕が欲しい人はそちらをご覧ください。

ちなにみに日本版のタイトルは「マイク・ザ・ウィザード」です。私がかつて観たのはVHS版ですが、もはやビデオデッキもないし、DVD版がないものだろうかと探してはみたのの、米国でも公式にはDVD版は販売されていないようです。作者がネットでDVD版イメージを無料配布しているようですが。知る人ぞ知ると言った感じですが、ニコニコのコメントなど観ると、一度観た人は思わず何度も、テープがすり切れるまで観てしまっている様子が覗えます。

| 映画 | 05:03 PM | comments (0) | trackback (0) |

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