前回は、灰汁の中でパテを捏ねるところで終わっておりました。
そして、器の底には、鮮やかな青い顔料が沈んでいました。
パテは3回目の抽出をしたところで、ボロボロと崩れはじめたので、そこで1個目のパテは抽出を終えることにしました。
それから、2個目のパテも捏ねてみたのですが、こちらは松脂を多く入れすぎた為か、手に粘って作業しづらく、1回目の捏ねまでやって放置してしまっています。
さて、器の底に溜まっているウルトラマリンの顔料をどうするべきかですが、このあと、どうするかというと、チェンニーニの技法書には、洗浄の指示などがありません。樹脂が付いているので顔料を洗うのか、それとも樹脂が付いたままの方が屈折率が上がってより青く見えるのか、等々、論文では考察されていますが、ひとまず熱湯で洗ってみることにしました。これはどうも、あまりいい方法ではないようです。分離した樹脂に細かい顔料が付着して、それも一緒に流してしまいました。まずは、捏ねたときと似たような濃度に炭酸カリウムを入れ、アルカリ性にしたお湯で洗う方がよかったのだと思います。その後、pHが気になる場合は、普通のお湯で洗うとよかったのかも。しかし、結局何が一番いいかは私にはわかりませんが。
抽出前のラピスラズリ粉末と、抽出後のウルトラマリンの2者を、アラビアゴム水溶液を使って、顔料を紙に塗布してみました。

写真では違いが伝わらないかもしれませんが、抽出後のウルトラマリンの方が鮮やかな青です。
ちなみに、油絵具としての比較は画家の鳥越一穂氏が既にブログに写真を掲載されておりますので、当方は水性の技法で試し塗りすることにしたわけです。
参考までに↓顔料をそのまま紙の上に置いて比較してみました。
顔料の状態で比較すると、ラピスラズリ粉末は灰色がかった薄い水色、抽出ウルトラマリンはそれよりやや鮮やかな水色といった感じです。油やアラビアゴム水溶液などと混ぜると、ラピスラズリ粉末は黒っぽい青になります。紺と言ってもいいかもしれませんが、黒っぽくて、透明で被服力がありません。水に混ぜただけでも、顔料の大半が消えてなくなったかのごとくに透明化します。ウルトラマリンの方が一応、青であり、濡れて極端に透明になったり、黒っぽくなったりということがありません。やはり青の部分が多いと言えるでしょう。しかし、劇的な変化かと言えば、うわぁビックリというほどではありませんが、青として実用になるかならないかと境くらいには違うといえます。今回は意図的に質の悪いラピスラズリ原石を使用したので、それなりの青しか得られなかったのだと思いますが、それでも原石の粉末と、抽出後の違いは充分認識できたということで、ひとまず目的は達成しました。