前回は、50号の木枠に張った生地キャンバスに水を引いたところまで書いたと思います。水を吸ってピンと張った生地は乾くに従って、伸びて緩くなります。それを外して、自作していた30号のパネルに膠で接着します。
板に布を貼る場合、板に膠液を塗り、生地にもたっぷりと膠液を付けて、ヘラなどで押し広げつつ貼ることが多いと思いますが、今回は木枠に画布を張るように、キャンバス釘やガンタッカーなどで乾いた亜麻生地を張り、その上から薄い膠液を染みこませ、浸透させて接着したいと思います。その方が布の目が均等になるように張れそうな気がするからです。
なお、修復家志村正治氏が作成したビデオ『基底材』にもこのような貼り方が紹介されています。100号ぐらいの大きなパネルに膠で布を貼る方法として紹介されていたと思います。膠液の濃度は通常使われる10%前後の濃度ではなく3%で貼り付けておりましたが、ただしこれから私がやるように、「釘で生地を張ってから」膠液を染みこませるという工程ではなかったと思います。3%濃度でも充分貼れるという話だけはしっかり覚えていますので、この3%を信じてやってみたいと思います。
キャンバスタックスとガンタッカーを組み合わせつつ、パネルに生地キャンバスを貼りました。

言い忘れましたが、パネルは予め膠液を塗布し、乾燥させています。これは前膠と言いますが、これをやっておかないと、板が膠液を吸いすぎて、接着剤不足となってしまいます。それと、膠液を吸って布が縮むことを想定し、釘は多めに打っています。
で、その上から、3%濃度の膠液を熱いうちに塗っていきます。

刷毛にたっぷりを染みこませ、塗るというよりは、どっさり膠液を置くような感じで満遍なく塗布していきます。一部だけ浮いてきたりすると失敗ですから、全面にしつこく念入りに膠液を付けます。この辺は念入りにやるわけですが、それほど協力にパネルと膠を接着しなければならないわけではありません。むしろ仮止めくらいの役割でよいと思います。支持体の本体は画布であり、パネルは抑えとしての存在ですから。あるいは何かの理由で分離しなければならないときのことも考えると、接着力はほどほどで充分であると思います。

心配なのは、乾燥する工程で布が緩みますから、その影響で凹凸状に波打って固定されるケースです。キャンバス作りでは薄い濃度の前膠などで起こりやすい現象です。
そして、一日経って乾燥した状態です。

すごく綺麗に、平らに貼られています。私としては充分成功です。これに地塗りをして、支持体の完成となりますが、気が向いたら地塗り工程も書きたいと思います。