バリー・M・カッツ(著)『世界を変える「デザイン」の誕生 シリコンバレーと工業デザインの歴史』
バリー・M・カッツ (著)『世界を変える「デザイン」の誕生 シリコンバレーと工業デザインの歴史』

ちょっと読みにくかったけれども、なかなか興味深い本です。本のタイトル(邦題)はいまいち意味がわからないけれども、副題は具体的であり、シリコンバレーにおける工業デザインの歴史が語られつつ、デザインとは何かという感じの内容になっています。

かつて製品開発は技術者が中心となって行なわれ、デザイナーは最後の最後に呼ばれて基板や部品を覆うカバーを考えるだけ、という程度の存在であり、まさに末端の仕事で、会社から見るとデザイナーというのはエンジニアに成れなかった者がする職業とまで思われていたし、とくにシリコンバレーではデザイナーとすら名乗りもしなかった模様です。しかし、それがやがて製品開発はまずデザインを決定し、それを実現するためにエンジニアが開発する、というように現在はすっかり順序が逆転しています。そこに至るには無数の物語があったはずですが、数十年に渡るその過程がシリコンバレーを舞台に描かれており、これはなかなか勉強になると言えるでしょう。

ほんの20年くらい前は、電気製品の類いは日本製品が世界中を席巻しており、どの分野でも高いシェアを有していたものです。しかし、その後なんだかんだで生産技術が平均化してくると、売れる商品を作るにはデザインがポイントとなってくるわけですが、日本製品はデザインが弱いな、というのはなんとなくみんな思っているんじゃないかと思いますが、あれよという間に急速に存在感を失っていった気がします。デザインというのは、もちろん見た目だけで無くて、ソフトウェアやサービスなども含めてのデザインですが、見た目だけの話をしても、テレビなんか、某レグなんとかは葬式会場に置く為に墓石風にデザインされたのかと思う感じで、なんとも購買意欲湧かない感じでしたが(でも、まぁ買いましたが)、そもそもBCASカードとか使い勝手が悪くなりそうな要素がある時点で駄目なんだと思いますが。特に技術力を喧伝するタイプの電機メーカーにこのような傾向が強く、そしてたいへん残念な末路を向かえてしまいました。技術力は大変大事ですが、しかし工業界がデザインの研究に膨大な投資をしているときに、それに乗り遅れている的なところはあったんじゃないかなと思います。もっとも新しいデザインに投資というのは運ゲー的なところがあるのも確かで、うまく行かなかなかった事例も数多あるのですが、しかし避けては通れないのが現状でありましょう。

というわけで、中高美術の授業で最も強化すべきはプロダクトデザインなのではないだろうか、などと最近よく思ったりするのです。日本のグラフィックデザインはけっこういい線行っているんじゃないかなっていう気はなんとなくするわけです。弱いのはプロダクトかなと。ちなみに教科書の方は時代を反映して絵画もプロダクトデザインも分け隔てなく扱ってます。プロダクトデザインの教員向け研修とかもあったりするのですが、木を削ってスプーンを作る、とかそんな感じだったりするのです。もちろん、まぁ、手に持って使うものですから、それもプロダクトデザインではあるわけですが、なんかそうじゃなくて、時代に合ったものを研究しなくてはならないのではと思ったりします。今の学校では理系エンジニア的な進路の受験で使われる教科が重要であり、美術はそんなに重要ではない的な位置あるわけですが、現在の流れ的には、全てのジャンルにおいて、デザインが中心となって進む状況なので、進路に関係なく強化した方がよさそうな、という気はしますが、美術の時間を増やしてたところで美術教師にそれを扱う能力がない可能性は大であり、あんまり意味ないかもしれません。純粋美術系の学科を出た者が生活の為に先生になるという傾向はどうしてもあるので、現場を知っている人が降臨してくるというのはあまりなさそうです。美大のファイン系と言えば、創作活動というのは展覧会で発表することが目的で、絵を売って生活しているという感じではないような雰囲気の中で育ち、それを美術だと思っているところがあるので、数十年前にふつうにあったような応用美術への偏見を未だに持ち続けている傾向さえあるのではないか。純粋美術と応用美術の差が開きすぎると双方にとってロクがことがない、とウィリアム・モリスも言ったそうですが、まさに日本はその状況なんじゃないでしょうか。

というわけで、このような本を読むべき、というふうに思うわけですが、本書がお薦めできるかどうか微妙です。文章があまり親切でないので、理解するのに時間がかかりましたし、なんか込み入っているところは読み飛ばしてしまいした。シリコンバレーの歴史というか、各企業の名前と業績を知っていないと、全く理解でないと思います。たぶん、ふつうはアップルくらいしかわかんないし、それもiphoneは知っていても、LISAとかの話をされてもピンとこないであろうし。でも、やはり工業デザインの歴史と言えば、なんと言ってもこの辺の話が一番肝であろうし。

| 書籍・雑誌・漫画・アニメ | 11:36 PM | comments (0) | trackback (0) |










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