数年来クラシック音楽の安いBOXを大量に買っていたため押し入れに積まれていっているのだけれども、ここ数ヶ月はAmazon Music Unlimitedで音楽を聴くようになって、ほぼ全くと言っていいほど物理のCDもmp3も買わなくなりました。クラシックのBOXは30枚とか平気であったりするし、保管も再生時の入れ替えも面倒なので、ストリーミングで聴けるというのは圧倒的に便利ですな。しかし、全くCD買わないというのは経済的にはどうなのだろう。ただでさえ、大した数の購入者はいないだろうに、ますます誰も買わなくなるのか、まぁ、もともと市場が狭いからあんまり関係ないか。それはともかく、買ったら枚数多そうなCD群として、ブルックナー交響曲全集など聴き渡り歩いていたのですが、ハインツ・レーグナー他による全集がなかなか素晴らしかったです。1~3番はザンデルリンク等、他の指揮者による演奏で、4番以降がレーグナーですが、ざっと聴いてみた感じでは緩徐楽章が軒並み素晴らしいものでした。特に第8番の第3楽章はこの世のものとは思えない美しさです。ただ、やはりレーグナーの場合は、全般的にフィナーレに立派さが欠けるような尻すぼみ感があるのは確かで、そもそもレーグナー以外の演奏家だとしても、ブルックナーの場合は全集だと、どうしても気に入るのとそうでないのがあって、通して聴いていると微妙な気分になってくるもでありますな。
というわけで1~9番まで満遍なくそれなりにいい感じの全集は何かというのを考えて聴いてたんですが、クルト・マズアとゲヴァントハウス管弦楽団による全集が、けっこういいんじゃないかなと。クルト・マズアは音楽評論家からは酷評されていることが多いような記憶があるのですが、この全集はなかなかよろしいような気がします。激しくテンポを変えたり、過度に強奏したりすることもほとんどなく、また、長い曲が多いので終盤にダレてくる演奏もあるけれども、そういうのもなく、とにかくバランスが良い。1番~9番まで、安心して聴いていられる。各曲の名盤はそれぞれあるだろうけれども、全集を一個選ぶとしたら、これがいいな、と今は考えているくらいです。実は昔、図書館から借りて聴いたこともあったけれども、その時の印象は、特徴の薄い演奏だなと思ってすぐ忘れてしまったのですが、いろいろ聴いてみたあとだと、どうもこれがいいんじゃないかな、と考えが変わったともいえるでしょう。1番はなかなかパワフルでこの曲の若々しさが生かされているように思う。2番はもともと曲が取り留めないの構造なのでなんとも評価し難いけれども、第二楽章などたいへん美しい。3番は全体的に自然な流れでこの曲の魅力が引き立っている。4番はこれはむしろかなり出色な出来映えの名演であるような。大曲である5番はダレることもなく、かといってうるさく聞こえる部分もなく、この曲の録音の中でもかなりバランスの取れている録音ではなかろうか。長大な曲だけれども終始安心して聴くことができた。6番は曲自体が比較的小型な為かレーグナーのテンポの方が合ってそうな気もするけれども、ズンズンズンとインテンポで進行するこちらも決して悪くない。7番は特に第1楽章が美しい。代表作である第8番も良い。最高に素晴らしいというものではないけれどもブルックナーを十分堪能できる。これは他の曲ならともかく、ブルックナーの場合はそれ自体がなかなか難しいのではないでしょうか。第9番だけがちょっと強弱が過ぎた感があるものの、それはたぶん普段シューリヒトの枯れた9番ばかり聴いているからであろう。というわけで、もし無人島にブルックナー全集を一個だけ持っていけるとしたら、今のところはクルト・マズアをチョイスしたいところであります。でも、まぁ、まだまだ聴いてみますが。