プラトン『プロタゴラス』中澤務訳読了
プラトン(著)『プロタゴラス あるソフィストとの対話』中澤務訳、光文社古典新訳文庫読了

若き日のソクラテスが、ソフィストと対話で対決するという、結論はあやふやに終わるものの、過程の展開はなかなかの物語です。プラトンは一度読んだら次々読まねばならぬような気分に陥って、なかなか止めることができません。30書ほどなので、いずれは尽きるかと思いますが。プラトンについて、あるいはプラトンの諸作品について解説した本も読みたいと思って集めていましたが、どうも、そういうのは読まずに予備知識を必要最低限にして読んだ方が面白いし、考えさせられるところもあるようだと考えなおしたところです。解説書ってばオチまですっかり書いてたりしますが、ふつうの名著に関してはそれでいいと思うのですが、プラトンではそれはいかんでしょう。対話と一緒になって体験したいところです。

プラトンとアリストテレスは、西洋の美術を理解する上では欠かせない存在といえるでしょう。中世からルネサンスにかけて、あるいはその後も、極めて重要だったはずですが、私自身は長年西洋絵画について考えてきたにも関わらず、その重要性に無頓着だったのは、まぁ、いい出会いがなかったのでありましょう。もちろん、プラトンについては講義でも書籍でも触れる機会が多かったはずですが。そもそもプラトンを解説するときに真っ先にイデア論を持ち出すというのがどうかという気もします。特にイデア論を図解して、解説代わりにするとか、功罪の罪しかないような気がします。後の新プラトン主義についてなら、それでもいいかもしれませんが。イデア論はむしろ忘れて、プラトンの対話篇の面白さとか魅力について語るべきでありましょう。メディチ家界隈が、ちょうど東ローマ帝国滅亡等により、本物のプラトンを入手できるようになって、そしてそれに触れたときの感動というのがちょっと解ったような気がしないでもない気分になりました。そして、ふと教科書に載っている「アテナイの学堂」を見てみると、猛烈に感動的な作品であり、ルネサンスを代表する傑作であったと今になって気づいたところです。イタリアに行って実物を目の前にしたときでさえ、さほどの関心は示さなかった自分なのですが、単に無知であっただけでしたなぁ。今ではアテナイの学堂について半日は語れそうな自信もありますが、それもまた迷惑なだけですが、それはともかくとして、プラトンはルネサンス現象の重要な原動力の一つであり、これを抜きにしてルネサンスについて語れないと言ってもいいかと思いますが、少なくとも私の個人的な経験では、洋画の教育機関において、プラトンへの感動みたいな話はついぞ聞かなかったので、聞いてないよ、そんなことは、という気分であります。今では誰でもわかっていることですが、専攻名に洋画とあっても、西洋文明とはあまり関係なかったのでありましょう。

西洋美術史が専門ならば、たぶん必読書として読んでいて、その魅力と重要性について語ることができるのでしょうが、単に美術教師であるとか、実技系の先生であるとかであったら、プラトンを一通り読んでいるという人は逆に非常に希であることでしょう。私もこの歳になってプラトン読んでるというのもどうかな、という気持ちもなきにしもあらずですが。しかしながら学生時代に読んでもピンとこなかったというもの確かです。実は実際に読んだはずなのですが、何を感じたのか記憶に残っていないものでして。というのも、ホメロスとヘシオドス、それから、ギリシア史の知識、できればヘロドトスやツィキュディデス、そから古典ギリシア悲劇の数々を読んでないと、何言ってるかわからない。註によってちゃんと解説はされていますが、誰それによって何年に書かれた作品、などという解説を読んだところで、あまり意味はありません。それだけでは、なんでそんなものにいちいち言及するか共感できないでしょう。そして登場人物の数々。プラトンには古代ギリシア史の登場する実在の人物が多数登場して対話に参加しますが、アルキビアデスが何をやらかした人か、とか、そのときのアテネの状況などを知ってないと面白さ半減でありましょう。ですから、それなりの分量の読書というか知識があってその魅力がわかってくるという性質はありますので、その辺の教養がやがてアカデミズムと言われるものになってゆくのでありましょう。

美術において、特に現代の画家にとってはアカデミズムと反アカデミズムというと、写実主義と印象派みたいに考えてしまいがちですが、それは本質的な違いではないですな。古代彫刻をどのようにデッサンするかということも、二次的なことであって(それは既に古代ギリシアのアリストテレスも詩学で述べていることですが)、そもそもなぜに古代彫刻を手本とするのか、収集するのか、石膏像にして展示するのか、という大きな問題がある点は念頭においておかねばと思うわけです。まぁ、正直、現代で絵を描くうえでは、どうでもいいことですが。しかしそのようなことはともかくとし、本書『プロタゴラス』はプラトン入門にも良い、と解説にありましたが、今のところは、個人的には『饗宴』が最もインパクトがあってお薦めかな、と思うので未読の方は是非読んで欲しいところです。が、たぶんホメロスとヘシオドスを読んでないと、ふたつのヴィーナスの違いとか、ヴィーナスへの思いとかピンとこないかもしれない。難しいですな。

| 書籍・雑誌・漫画・アニメ | 11:25 PM | comments (0) | trackback (0) |










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