2022,05,16, Monday
以前『B.C.1177 古代グローバル文明の崩壊』を読んで面白かったので、同著者の『トロイア戦争:歴史・文学・考古学』も読んでみました。イリアスはいいですな。私は文学というジャンルはあまり読まないのですけれども、古代の文学は好きでしていろいろ読んだりはしているのですが、何か一番かというと、なんだかんだでイリアスは別格です。ありとあらゆる書物の中でも最も好きな本ともいえるかと思います。戦場で一騎打ちをはじめるイリアスのような戦争は現代では現実的でないとも言われておりますが、しかしまぁ戦争とは考えず人生のようなものかと思えば、我々は常に何かしかの困難の中にいて、そしてその中で命の長さは限られていて、その中でどうして生きてゆくべきかというとイリアスは規範でもあり慰めでもあります。作中ではどんどん容赦なく人が死んでゆくのに、その物語が慰めになるというのは不思議なものですが。イリアス自体も良いのですが、いったいどこまでが史実を反映しているのかとか、そのような考古学的な本を読んだりするのも楽しいというか、結局結論は出ないようなものですが、でも、そういうのも面白いのです。
西村賀子著『書物誕生 あたらしい古典入門 ホメロス『オデュッセイア』〈戦争〉を後にした英雄の歌』も読みました。ホメロス作品では、私は断然イリアス贔屓であり、それはたぶん歴史好きだからだろうかと思われます。文学好きならオデュッセイアなのでありましょう。というのを本書を読んで思いました。しかしいずれにしてもあまりオデュッセイアについて深く考えてこなかったのですが、本書を読んでみたらその内容といいますか構成の深さを知って自分の無学を恥じ入るばかりです。もう一度読み直さねば、と言いたいところです。とはいえ、実は本書の内容も前半はイリアスに割かれている記述が多く、特に古代から中世・近世にかけての受容史みたいな話はイリアスが中心となっており、その辺をついつい熱心に読んでしまったのは事実であります。特に中世にイリアスが西ヨーロッパでどのように認識されていたかというのは前々から気になっていたことでありました。その件に関する参考文献も多数紹介されてありましたので、追って入手に努めたいと思います。 吉岡幸雄著『日本の色を歩く』を読みました。天然染料をはじめ、朱や赤鉄鉱など、幅広く、そして読みやすく書かれておりますが、類書もたくさん読んではおりますが、しかし、何を読んでも、やはりまだまだ知らなかったことは多いなと思いました。とりあえず、クチナシの苗木を購入しました。さらに著者の父と思われる吉岡常雄著『帝王紫探訪』も購入して読んでおるところです。これは貝紫についての本ですが、私もついにこれを試してみたいという気分がわき起こってきておりまして、どうやって貝を入手しようか調べているところです。 |
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