矢野徹(著)『ウィザードリィ日記-パソコン文化の冒険』を読む。
ハインラインの作品やデューンシリーズの翻訳などで知られる矢野徹氏が書いたパソコン体験記。1986年というパソコン黎明期の時代に、当時62歳の著者がPC-8801mkIIMRを購入するというすごい話である。ちなみに矢野氏がMRを買った翌年に、僕はその次の機種であるMHを入手しているが、そのとき中学1年生でした。MRとかMHとかって、2Dと2HDのフォーマットで苦労するんだが、そういうのも書かれていていろいろ思い出した。
ちなみに僕は高校時代はSF以外の文学に意味はないと思っていたほどSFが好きだったから、矢野氏が訳した本は山ほど読んでる。ハインラインの『宇宙の戦士』は定番として、『スターマン・ジョーンズ』とか『メトセラの子』とか、とにかくいろいろ読んだ。特に『宇宙の孤児』はSF好きになるきっかけになった本で、今でもマイベストSFの5本の指に入る作品である。『デューン砂の惑星』は、読んだ当時は一行一行が凄絶名文だと思ったものである(今読むと、それほどでもないけど)。『ゲートウェイ』も良かった。ハインラインやフレデリック・ポールの作品は、矢野氏の文体や性格が似合っていたのだと思う。ちなみに(翻訳ではない)矢野氏自身の著作を読んだのはこれが初めてだったりする。SFが好きで8bitパソコン使いだった自分としては、本書はいつかわ読んでおかねばと思っていた一冊だった。

で、本書の内容は、矢野氏が1986年に同業者の安田均氏が書いた『SFファンタジィ・ゲームの世界』という本を読み、そこに紹介されていたウィザードリィをプレイしたくなって、すかさずNECのPC-8801mkIIMRを注文する、その後の奮闘記となっている。ゲームプレイ中はかなり妄想が入ってるけど、日記の内容は販売店やメーカーへの不満とかゲームの感想とかそんな感じで、なんというか今のネット上の個人日記そのもの。ネット上に日記が溢れている現代では1600円払って読みたいと思うかどうかはちょっと難しいところだが、とりあえず前述のメディアのフォーマットの話とか、当時を実体験した人じゃないと全く意味が通じない箇所も多いので、広く万人にお薦めできないのが残念。で、この人の文章を読んでいるうちにいろいろ思い出したが、高校時代にSF以外の文学を一段下と見て、SFばかり読んでいたのは、この人が訳書の後書きとかに書いて文章の影響だったかもしれん。というか、モロにそうだと思う。世の中のさまざま問題について解決策が検討されるのがSF、そして人間の存在の意味を問う哲学の考察を客観的に行っているのもSF、とそう思っていた。今もちょっと思ってるかも。高校生ったら、影響受けやすい年頃だろうし、しょうがないだろう。それに未だにたまに右っぽい発言をしてしまうことがあるが、それも矢野徹の影響だ。

ところで、比較するのもなんだが、矢野氏の日記に比べると、安田氏のゲームのレビューは全く古さを感じさせないところがある。なおかつ読者を限定しないので、一般市民にお薦めすることもできる。他のゲーム評論家が書いた記事とか、昔の雑誌のゲーム記事とか、たまに読み返してみたりするけど、それは自分にとっては面白いが、その当時を知らない人には興味を引きつけないものであろうとは思うが、しかし何故だか安田氏のゲーム紹介記事は普遍的な魅力を備えていて、古ゲーをよく知らない人が読んでも、きっとこのゲームをプレイしてみたいぞと思わずにいられないだろう。これは大人になるほどそう思う。中学生はその点に気づかずに、安田氏のレヴューはスルーしてしまうことも多かったのだ。というわけで、安田氏の本を読んだら8801を買わずにいられなかった62歳の著者は大人だったのだ。


| 書籍・雑誌・漫画・アニメ | 10:07 PM | comments (0) | trackback (0) |










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