鉛白からマシコット(リサージ)を作ってみる。
■毒物注意■

鉛白を熱して、マシコットあるいはリサージと呼ばれるものにしてみる実験。

マシコットはかつて西洋絵画で使用されたすず鉛黄色(lead tin yellow)の名称とされることもあるようですが、今回は鉛白を加熱して作る一酸化鉛(PbO)。マシコットとリサージは顔料屋では同じものとして販売していることも多く、正直のところ両者の厳密な違いが自分には未だによくわからないのだけれども、例えば『絵画材料事典』の記述からすれば、マシコットは鉛白をゆっくりとローストした溶融していない一酸化鉛であり、一方リサージは溶けた金属鉛を直接酸化させてつくる溶融した酸化物、というのが書籍やネット上によく書かれている。けれども本によって説明が随分異なるのが悩みの種である。いずれにしても今回行なうのは鉛白を熱して黄色またはやや赤味のある顔料を作るという実験である。

まずは100均のフライパンに顔料を載せる。鉛白は毒性もあるのでアルミホイルに包んで加熱するという方法もあるが、今回は空気に触れていなければならないのではないか?と思ったのでフライパンを使用。

マシコット

どの書物でもひかえめにゆっくりローストするよう書かれているので、弱火で加熱。と言っても直火なのでけっこうな温度だと思うが、間もなく黄色みを帯びてくる。マシコットあるいはリサージの説明では、色は明るい黄色~やや赤っぽい黄色、オレンジぐらいの範囲とあるが、顔料屋で販売されているマシコットのサンプル画像などを見ると、白っぽい黄色、あるいはクリーム色と呼ばれるようなものが多く、この写真の時点で終わりでもいいかもしれないが、まあ、ものは試しなのでそのまま加熱を続ける。

リサージ

だんだん赤味を帯びてくる。事前にネット顔料屋のサンプル画像をいくつか見てまわったのだが、リサージの名で売られているものと同じような色合いっぽい。マシコットというと黄色、リサージは赤(オレンジ)という説明が多い。顔料サンプル画像もそうである場合が多いが、しかし逆の説明がされている本もあったり。

ところで、焼いているうちに顔料が妙に飛散しやすくなっているような気がした。毒物であるからして気を付けなければ。

massicot litharge

完成(?)した顔料。ちなみに、マシコットもリサージも購入したことはないので、これでいいのか悪いのか不明。気が付いたことがあれば、コメント欄にてご指摘を。

| 絵画材料 | 07:17 PM | comments (14) | trackback (0) |
管理人さんが最近行なっている自家製焼き顔料を展色材で練り合わせたとき、どのような色調になるのかちょっと興味があります。

後、実際に油絵具として使ったときの、使用感、乾燥速度など。

自宅で昔ながらの鉛白顔料を自製するという企画を期待したいところですが、さすがに無理ですかね。
| オーテカ | EMAIL | URL | 2008/04/29 07:38 AM | J5bmsd5o |

コメントどうもです。

オーカーとシエナと今回の鉛白の3回試みただけですので、あまり語るほどのものでもないのですが、まずは展色材に混ぜた状態の色についてですが、例えば、前に写真を載せたオーカーだと、焼いた状態の写真はかなり明るい色ですが、油で練ると相応に暗くなり、絵具のレッドオーカー、あるいはよく使う市販の油絵具に例えれば、マツダのバーント・シェンナ(特にスーパーじゃない方)のような感じでしょうか。画面に塗ってもそんな感じです。私はこのような色を、カマイユと呼ばれている工程でよく使用するので、いずれ替わりに使ってみようかと思います。しかし単に焼くだけの作業ですから、市販の焼成土性顔料と比べて何か優れた面があるかというと、初めから特に何も期待していないです。天然の土性顔料は産地により違いがありますから、入手した様々な土性顔料から作れるとすれば、それが利点になるかもしれません。

鉛白は実用品として本格的に自製しようと考えたことは一度もないですけれど、原理は単純なので試しにやってみようかと思ったことは何度もあります。せっかくなので、近いうちにお試し程度にやってみようかと思います。
| 管理人 | EMAIL | URL | 2008/04/30 12:15 AM | N9zc8W5U |

はじめまして、いつも興味深く楽しく拝見させて頂いております。
私も最近鉛白を焼いてミニウムを作ろうと色々試しているのですが、そもそも実物を見たことが無いので、出来上がった色(ホルベインのフレンチバーミリオンよりちょっと明る目のオレンジっぽい色)が本当にこれで良いのかよく分かりません(クレマーのオンラインショップの画像を見る限りではモニターだからかもしれませんが、かなり鮮やかな赤色をしている気がするのですが)。
管理人さんはミニウムを作られた事はございますか。
| いのうえ | EMAIL | URL | 2010/11/05 03:59 PM | GT6UNOSg |

Miniumを作りをされているのですか。
興味深いコメントありがとうございます。
よろしければ、具体的に挑戦された方法など、コメント頂ければ幸いです。

私はMiniumを作ったことはありません。Minium作成は加熱時間がずっと長くなりそうなので、なかなか挑戦するに至りませんでした。

しかし、もしかしたら買った物を持っているかもしれないと思って顔料の棚を探したら、以前、Natural Pigmentsより購入した物がありました。

↓こちらのものになります。
http://www.naturalpigments.com/detail.asp?PRODUCT_ID=457-10S

実物を見た感じも、バーミリオンより明るいオレンジと言う表現でおおよそ一致しておりますが、私も写真に撮ったりはしましたが、パソコンの画面で見ると鮮やかさが増して、どうしても実物と違う印象になってしまいます。もし制作にチャレンジされるのでしたら、こちらを入手されてみてはどうでしょうか。

予想ですが、色は加熱の加減が、元の鉛白などのソースによって変わってきて、幅のあるものが得られると思いますので、無理に市販品に合わせなくてもよいかと思います。たぶん、すでに立派なminiumかと思います。

P.S.赤の絵具をいろいろ試していたところでして、Miniumがあっことを思い出しましたので、さっそく使ってみたいと思います。
| 管理人 | EMAIL | URL | 2010/11/06 09:43 PM | sIcqiUZw |

訂正です。

× 加熱の加減が、元の鉛白などのソースによって
○ 加熱の加減や、元の鉛白などのソースによって
| 管理人 | EMAIL | URL | 2010/11/06 09:49 PM | sIcqiUZw |

ご意見有難うございます。
確かに自分で作った物でもカメラの画面で見てみるとちょっと赤っぽいですね。
Natural Pigmentsからは前にネットの輸入代行を使って(英語というか外国語がまったく出来ないので…)幾つか顔料を購入した事があるのですが、毒性の高いものは税関に没収されるのでは…と思いミニウムなどは購入しませんでした。

どうやら没収されないのですね。

それはさて置き、私が試みたミニウムの作り方について喜んで記させて頂きます。
まず、鉛白(私が試したのはホルベインのシルバーホワイトです。他のメーカーや製法の鉛白を使えば管理人さんの仰る通り違った結果になるかもしれません)を土鍋の中に入れ、スプーン等で玉になっている部分を解します(以前は顔料を焼くときに管理人さんと同じく鉄製のフライパンを使用していましたが、長時間熱していると表面が剥がれて顔料に混ざるのでミニウムを作る時の使用はお勧めしません。また、私が100均で購入した土鍋の説明書?には「空焚きは絶対にしないでください」と書いてあり、自己責任に於いて無視しましたが、途中で水さえ入れなければ問題ありませんでした。熱している最中に1、2滴水を垂らしたら割れてしまいましたが…)。

次に、土鍋に蓋をし、コンロを弱火にして加熱します(私は、ガスコンロを長時間つけていると何か起きるのではと変な想像をしてしまうので電気コンロを使用していますが、熱源は何でも良いと思います。ただ、ここで云う「弱火」はあくまで私の持っている電気コンロに於いての「弱火」です)。

このまま数時間熱しますが、熱する時間は鉛白の量によります。
リサージやマシコットの色を通り越すと赤茶っぽくなります。
最終的には、鍋の底の熱が直に伝わっている部分の色が赤黒に、上の方の多少温度の低くなっている部分がレーキ顔料の様な色になります。
スプーンで上下を混ぜて見ると色が入れ替わります。またスプーンで掬って熱から離すとオレンジっぽい色に変化します。落とすと元の色に戻ります。
顔料全体がその様な状態(赤熱?)になったら火を止めて、冷めればオレンジ色になりミニウムの完成です。

また、本来ならまめに攪拌すべきなのでしょうが、攪拌せずに放置しておいてもミニウムは出来ます。
しかし、底の方に黄色っぽい物が出来てしまいます。この黄色っぽい物が何なのか、出来上がったミニウムの色にどこまで影響するのかよく分かりませんが、攪拌してしまうと分からなくなります。この黄色を取り出して冷ましても黄色のままなので、そのせいでよりオレンジっぽくなるのかもしれません(しかし、少量なので余り関係ない気もしないでもない様な気もしますが…)。
放置せずにまめに攪拌すれば恐らくこの黄色っぽい物は出来ません(私は正直面倒なので一晩放置しています)。

以上が私がミニウムを作る際の方法です。
文が纏っていませんが、少しでもご参考になれば幸いです。
| いのうえ | EMAIL | URL | 2010/11/07 03:57 AM | GT6UNOSg |

詳細なコメントありがとうございます。
実体験が伝わってくるような感じで、たいへん興味深く読ませて頂きました。

Miniumについて書かれたものを、改めて目を通してみましたが、色味については、いのうえさんの記述と一致しておりますので、おそらく立派なMiniumであろうかと思います。素晴らしいです。

底に黄色のものができるのはどういう反応なのでしょうね。
リサージや鉛丹を作るのは、鉛と酸素を熱で反応させることでしょうから、底の酸素が足りないとか、あるいは温度が違うか、あるいは土鍋の釉薬と反応したのか。化学は未だに苦手です。

http://www.7key.jp/data/design/color/red/entan.html
なお、↑のような記述によると、正倉院に使われた当時は黄色味のあるものが上質とされたいう話ですね。

ガスカセットコンロは、最近は安全装置がついているそうですが、長時間になると確かに向いていないし、危ないかもしれませんね。

Miniumが出来れば、あとはLead tin yellowなど、いけるかもしれませんね。

顔料の購入ですが、個人輸入で少量買う分には(保証はできませんが)まず大丈夫だと思います。しかし残念ながら輸入代行業を通すと、商業的な輸入となりそうなので、関税通過が難しくなるか、あるいは代行業者に断られてしまう可能性が高いと思います。
| 管理人 | EMAIL | URL | 2010/11/08 12:17 AM | sIcqiUZw |

黄色い物はフライパンの時も出来ていたので恐らく釉薬との反応ではないと思われます。
高温時に鉛が生成される手前の状態に似ているので、やはり温度や酸素に関係が在るのではないかと思います。
しかし、私自身、化学に無知なので、やはりよく分かりません(無知なのは化学だけではありませんが…)。

Lead tin yellowは半田等を酢酸等の気体と反応させて、それを加熱すれば~…とか想像していますが、色々試してみたいと思います(最近は鉛‐錫合金ではない半田が多いそうですが)。

画材の輸入は、いつか自分でやってみたいと思うのですが、やはり英語の壁が高いですね。
それにしても、語学もそうなのですが、化学や数学(特に幾何的なもの)など、学生の時に聞流していたものが、絵を描く職を目指す様になって、特に古典的な技法に傾倒するに当たってこれ程必要になってくるものとは思いもしませんでした。二十一の今になって後悔しております。

しかし、その様な技術を希うことで、それらを学び直す良い機会になっているのかもしれません。
| いのうえ | EMAIL | URL | 2010/11/08 06:55 PM | GT6UNOSg |

高校の授業の化学は、個人的には生物、地学と比べてつまらない印象があったのですが、今だったら真剣に聞いていたかもしれませんね。。。

しかしまだ二十一ということでしたら、苦手の克服はいくらでもできそうですし、英語は品物を注文する分には限られた語彙を覚えれば済みますし、ネット上に取引方法など解説されているサイトもあるので、すぐにできるようになるかと思います。

では、また何かチャレンジされた際はご報告ください。
| 管理人 | EMAIL | URL | 2010/11/18 12:21 AM | sIcqiUZw |

ありがとうございます。
色々頑張ってみたいと思います。

という事で早速色々やってみたので、ご迷惑かと存じ上げますが、ご報告させて頂きたいと思います。

まずミニウム作りを他のメーカー(一社ですが)の鉛白を使ってやってみました。
今回は浅岡窯業原料株式会社という所の鉛白で1K1400円で売っていました。
ミニウムにして見た所、やはりメーカーによって結果が異なる様で、ホルベインのハッキリとしたオレンジ色に比べ浅岡窯業の物は少し控えめと云うか曇った様なオレンジ色になりました。

ついでに浅岡窯業のミニウムを使ってブラックオイルも作ってみました。といっても、そもそもブラックオイル自体初めて作ったので鉛白やマシコット=リサージを使用した物と何か違いがあるのか分かりませんが…。

また、この項と関係在りませんが薬局からカナダ・バルサムを入手したのですが、なんか凄まじい粘性です。
テレビンと無水エタノールとで溶かしてみた所、テレビンは軟らかくなるだけですが、エタノールは何故か乳濁してしまいました。また放って置くとヨーグルトかプリンみたいに纏り、混ぜると液状に戻ります。
管理人さんはカナダ・バルサムを入手、使用された事はありますか?
| いのうえ | EMAIL | URL | 2010/12/05 08:55 PM | GT6UNOSg |

がんばってらっしゃるようで何よりです。一回で結論を出さずに、比較実験しながら、進めてゆくというのは大事なことですよね。

あと、古代の書物では、鉛から鉛白をつくり、鉛白から鉛丹を作る作業が述べられていますので、鉛板から鉛白を得て、そこから鉛丹という具合で実践されると、一連の流れとなって理解できるので、学習としてはいいかもしれません。それに、市販品の場合、メーカーを代えても、元が同じである例にも出くわす可能性がありますし。

カナダバルサムは俵屋工房さんより頂いたものを持っておりますが、活用するには至っておりません。確かに非常に粘性が高いですね。
バルサムの粘性ですが、我々の手元に画材として届くバルサムが、樹木からとれたときの粘性と同じかどうかもわかりませんし、私はまだまだその辺はわからないことだらけで、なかなか語るに至りません。楽器製作者の方などは詳しいと思いますけど。。。
| 管理人 | EMAIL | URL | 2010/12/09 01:15 AM | sIcqiUZw |

ご返信有難うございます。

鉛白の自製はヤフオクで鉛板が売っていたので、その内やってみたいと思っています。
因みに銅板は近くのホームセンターで売っていたので酢酸銅を作ろうと色々やっているのですが、一ヶ月程前から大き目の容器に入れて効率よく得ようと、ペットボトルとビンに切った銅板を入れ、ペットボトルの方にはそれまで足し増しして使ってきた緑に変色した酢を使用し、ビンの方には新しい酢を入れ、今に至るまで放置しているのですが。一週間目ぐらいからペットボトルのほうに菌糸みたいな感じで白っぽい水色の結晶の様な物が出来始め、最近その一部が青になっています。これは何なんでしょうか、非常に気になります。
管理人さんも酢酸銅をお作りになられていましたが、その後変化はありましたか?
| 井上 | EMAIL | URL | 2010/12/20 11:22 PM | vJHMN6ww |

おはようございます。
凄い実験ですね。化学薬品を扱うような安全な部屋ならともかく、さすがに自宅では怖いのでできません。

荏油と桐油を手にしてから、密陀僧あるいはマシコットの入手先について調べていました。国内では手に入れるのが難しいようですが、ナチュラルピグメントでは販売されていますね。

荏油にマシコットを入れて煮沸すると密陀油ができるそうですが、作り方がわかりませんし、ブラックオイルの荏油バージョンをイメージしているのですが、全然違うものかもしれません。また資料を当たってみたいと思います。

桐油でシルバーホワイトを練ったらほぼ1日で乾燥していました。
| 憂愁庵人 | EMAIL | URL | 2013/06/24 10:20 AM | QcOY2GAQ |

密陀僧はナカガワ胡粉さんから購入出来ました。鉛白から自作したリサージのような肌色?ではなく鉛錫黄のようなはっきりした綺麗なレモンイエローで鉛丹自作の際の鍋底の副産物に似ています。naturalpigmentではリサージで油絵具を作れないと書いてありましたが、これなら違う結果が得られるかもしれません。
| ばか | EMAIL | URL | 2018/08/10 09:40 PM | jrqjez6k |











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