まだ鉄媒染をやったことがないことと、黒を染めてみたいという理由から、今回は五倍子染めに挑戦。染めるのは綿のTシャツ。

五倍子(フシ、ゴバイシ)は、ヌルデの木に寄生する虫が作るコブで、タンニンを含み、鉄媒染すると黒の染料になる。
まずは、(というか、かれこれ2週間前の話になるが)媒染液を作るところからスタート。錆びた鉄クギをお酢に入れて作るそうで、錆クギなんて以前は山ほどあったのだが、物置の整理をした際に処分してしまっており(全部ステンレス製に買い換えた)、タイミングの悪さを思いながらホームセンターで新品を購入。熱湯に通すとすぐに錆びるというので湯で煮てみたら、空気に触れた瞬間からどんどん錆びが出る。そのまま屋外に1週間放置し、充分に錆を出させた。
今度は酢に漬ける。お酢は安価なミツカン酢を使用。ワインビネガーの臭いに悩まされた後だと、ミツカン酢とかもう全然平気である(以前はこの程度の臭いでも駄目だったんだが)。100均の瓶に錆び鉄釘を入れ、水で倍に割った酢を注ぎ、フタをして1週間以上置く。鉄釘は同じ重量なら、小さい釘の方が表面積が大きくなってよかったのかもしれない。
というわけで、2週間かけて媒染液を作ったのち、いよいよ五倍子の登場である。使用したのは藍熊染料(株)の五倍子。
木村光雄(著)『自然の色と染め』によると「粉砕して煮出し、鉄媒染することによって灰色~黒色に染めることが・・・」ということなので、乳鉢を使って粉砕(すり鉢の方がよかったかもしれん)。
粉砕した五倍子を釜戸で煮出すこと、1時間強。
煮出しを行なっているうちに、染める予定の布を水に浸ける。「タンニン類は木綿繊維に大きな親和力を持っていますから、前処理無しでよく染着します」(木村光雄(著)『自然を染める』P.71)という話なので、みょうばんなどによる先媒は行なわず、単に水に浸けておくだけに留めた。
充分煮出したら、いったん布で濾す。
染液はこんな感じの色で、この時点ではお世辞にも綺麗な色には見えない。黒でもない。
人肌より多少高いくらいの温度までさめたら、再び鍋に戻し、染める対象たる布(今回は綿のTシャツ)を入れて、再び加熱する。いきなり高い温度で布を投入するより、40℃ぐらいから徐々に加熱していった方が最終的により色素が浸透するという話だそうだが。このようにして、15分くらい煮込んだ。
さて、いよいよ鉄媒染剤の登場である。
布と染液を別様器に移し、鍋には新たにお湯を沸かして、そこに予め作っておいた鉄媒染液を入れて加熱する。

見た目はふつうのお湯っすね。
そこに五倍子の染浴に浸けていた布をよく絞って投入、すると一気に真っ黒に変化するのだが、なかなか凄い光景である。まぁ黒というよりはちょっと紫っぽい感じであるが。

とにかく、よくかき混ぜながら、しばらく加熱。ムラを少なくするには、よくかき混ぜるのが肝要だそうである。
時間が経つにつれ、どんどん濃くなってゆく。
水洗いする。
干す。
こんな感じっすね。

繰り返し染浴と媒染剤に浸けるなどすれば、もっと濃い黒になるであろうけれども、自分で着るシャツとしてはこれくらいの色がいいかなってことで終了。