葡萄の残渣を焼いてヴァインブラックを作る試み。
ヴァインブラックの素材は「葡萄の蔓」(または枝)と書かれていることが多い。葡萄は栽培したことがないので、実体験としてはあまり知らないのだけど、ネットで画像などを見る限りでは、葡萄の蔓はなかなか凄い。葡萄を栽培してたら、蔓とかいっぱい出てきそうである。ウィトルウィウスの書にもヴァインブラックが出てくるけど、古代地中海世界でも、その後のヨーロッパでもワインがずいぶん飲まれていたようだから、葡萄の蔓は捨てるほどあったのだろう。顔料として適していたのは確かであろうけども、たくさん在ったというのも、ヴァインブラックが使われた理由かもしれない。そう考えると、個人的に葡萄とほとんど接点のない自分にヴァインブラックを作る理由はあるのかと自問せざるをえない面もある。しかし、身近に葡萄の蔓はないけれど、素材として「絞りかす」などと書かれている書物もありまして、考えてみるとワインを作れば絞りかすも大量に残ったであろうし、これも使われたことでしょう。クヌート・ニコラウスの本だと「ワインブラック」と書かれていましたが。

絞りかすでよいのなら、食べかすでもいいかもしれぬ、というわけでスーパーで葡萄を買ってきた。
ヴァインブラック
アメリカ産オータムローヤルというものである。どの種類がいいかとか迷いそうなところであったが、店頭にこれしかなかったもので、他に選択肢がなかった。桃があったら、ピーチブラックに路線変更したところであろうが、今はもう無いようだ(経験者の方の話によると桃核炭はたいへん固いそうで)。

まずは、買ってきた葡萄を完食する。
ヴァインブラック

量が足りないような気がしたので、さらにもうひとパック買って食べたが、この時点で何か非常に間違っているような気がしないでもない。

ここで一例として、ヴァインブラック製法のソースを挙げてみると、ウィトルウィウスの建築書では、まず、油煙(ランプブラック)と思われる顔料の製法が書かれ、その後、その顔料が間に合わなかった際の応急の手段として、炭系の黒の作り方が述べられている。「・・・葡萄の枝または脂気の多い削り屑が燃やされ、それが炭になった時火が消され・・・」(『ウィトルーウィウス 建築書』東海大学出版会)という具合である。ウィトルウィウス、テオフィルス、チェンニーニに、さらりと目を通したが、黒系の作り方はだいたいみんな似たようなものである。

今回は、以前、デッサン用木炭を作ったときの方法でやってみたいと思う。すなわち、半密閉の容器内で蒸し焼きにする方法である。

蒸し焼き用の容器として、100円均一でスチールの小物入れを購入。
ヴァインブラック
葡萄の食べかすを押し込み、フタにはガス抜き用の小さな穴を開けておいた。

カセットコンロで蒸し焼き開始。
ヴァインブラック

この容器、スライド式のフタがついていのだけど、隙間からガスが抜けていゆく。
下手すると酸素が供給されて灰ができてしまうかもしれぬと、ちょっと心配。

量が少ないからか、30分程度で煙が出なくなったので、火を止めた。
あまり続けると灰になるので、頃合いを見て止めるのだが、その辺のタイミングの判定がまだまだよくわからない。

う~ん、微妙な炭ですなぁ。
ヴァインブラック

やはり蔓の方がいいか。
蔓、写真で見る限りでは、炭を作るのに向いてそうな予感がする。蔓そのものが売っているところはあまり見ないが、葡萄の蔓で作った工芸品はいっぱい売っているので、それを使うという手もある。しかし、そういうのは手作り品が多く、作者に悪いような気もする。あるいは葡萄に限定せずに、何らかの蔓でよいなら、庭にないこともない。蔓植物なら、一般的な木材よりも軟らかくて顔料にしやすいという可能性も考えられるが、その辺は今後の課題である。

しかし、失敗かと思われた食べかすの炭であるが、乳鉢でゴリゴリとやってみると、なんかいい感じの黒であるような気がしてきた。
ヴァインブラック

これがどんな色になるかであるが、実は既にボーンブラック作りも進んでいるので、そちらと一緒に比較しつつ試したい。

| 絵画材料 | 01:34 AM | comments (0) | trackback (0) |










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