絵具メーカー クサカベ様工場見学に行ってきました。
先日、絵具メーカーのクサカベさんの工場見学に行って参りました。古吉弘先生始め、画家の方々、画材研究をしている美大生など、精鋭揃いで訪問致しました。ご参加頂いたメンバーですが、ホームページをお持ちの方々のみ、紹介させていただきます。
古吉弘先生 http://www.geocities.jp/paintingsfuruyoshi/
小林聡一先生 http://soichi-kobayashi.com/
疋田正章先生 http://www.masaakihikida.com/
中村圭吾先生 http://www.s-art-web.com/artist/nakamurakeigo/top.html
美大在学で絵具研究をしている高森幸雄君 http://www.yukio-takamori.com
彫刻家花田麗様 http://www.zokei.net/friends_gallery/gallery/18_hanada/index.htm
西川ケイコさんとその一派 http://art-b.net/

もっと広く告知して参加者を募ろうかとも思っていたのですが、絵具作り講習も受講したかった為、mixi等限られたところで集めまして、参加したかったのに行けなかった方は誠に申し訳ございません。後日、別の機会に何か催し事を開催したいと思いますので、よろしくお願い致します。

では、記憶が薄れないうちに自分用のメモも兼ねて、レポート致したいと思います。
基本的に断りのない限りは油絵具の話だと思ってください。

クサカベ様本社及び工場(埼玉県朝霞市)です。
絵具メーカー クサカベ様工場見学

まず案内して頂きましたのは、油とステアリン酸を混ぜるお部屋です。
絵具メーカー クサカベ様工場見学
顔料と油のみでは分離しやすいので、油にステアリン酸を添加します。ステアリン酸は70℃以上で溶解するので、上のような機械で加熱して混ぜます。顔料によって適切なステアリン酸の量が異なり、数種類の混入量のステアリン酸を加えた媒材が用意されていました。
絵具メーカー クサカベ様工場見学
傾向としては、軽い顔料にはステアリン酸を多く、重い顔料にはステアリン酸が少なく、となるようです。似たような役割のものに蜜蝋がありますが、絵具の質感を変えるので、より油と近いステアリン酸を使用するそうです。

こちらは体質顔料。
絵具メーカー クサカベ様工場見学
白い方が炭酸カルシウム、茶色い方はアルミナホワイトです。既に乾性油と錬られてあります。アルミナホワイトは炭カルに比べて透明度が高いので、乾性油(リンシードオイル)の色の影響を受けて、茶色に見えます。
体質顔料としては、炭酸カルシウムの方が主に使われているということです。ムードンや沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムなど、我々が普段使っているものは酸に溶ける可能性があるので、体質顔料用の炭酸カルシウムを使用するとのこと。これは体質顔料という名前で売っているそうです。アルミナホワイトは粘りが強いので好まれないようです。

こちらはミキサー
絵具メーカー クサカベ様工場見学
これで乾性油と顔料を混ぜ合わせます。下に見えるのが混ぜた状態です。粗練り工程ですので、まだ艶や滑らかさはありません。次のロールミルで丁寧な練りの工程を経ると、艶のある油絵具になります。

みなさんもおそらくご存じかと思われますが、3本ロールミルです。
絵具メーカー クサカベ様工場見学
顔料は寄り集まってダマになっているので、これをときほぐさなければなりません。3本のミルの間は、ほとんど隙間がなく、そこを通り抜けることによって、粗練り時の粉の塊がときほぐれ、綺麗に分散されて、滑らかで艶のある絵具になります。
ロールミルの素材ですが、通常鉄製を使用するのですが、鉄よりも固い顔料も多く、そちらには石製(御影石)やセラミック製のミルを使用、ただし、石製は現在は生産されていないので珍しいそうです。セラミック製は石より滑るようですが、石製が生産されていないので、現在はこちらを使うそうです。

次に品質管理のお部屋に案内して頂きました。
絵具メーカー クサカベ様工場見学
ミルで錬られた絵具、練り、固さ、色合いなどをチェックするところです。錬ったものから引き算はできないので、足し算で調整していきます。色合いを調整する際は同質の原料で調整するそうです(カドミウムイエローならカドミウム系で)。厳密に同じ色は作れないそうです。私は天然の土性顔料などがロットで色が違ったりするだろうという点に注目していたので、その点を質問してみましたが、そもそも天然顔料を使用しているという絵具、たとえば、イエローオーカーなどの土性顔料は、顔料番号等で天然を表わしていたとしても、100%天然ということはまずないそうです。というのも、絵具メーカーさんが原料を入手する時点で、人工の酸化鉄等が含まれているそうです。土系は輸入であり、外人は平気で嘘を付くので、天然という話を容易に鵜呑みにしてはならないそうで。これは思い当たることが沢山あります。なお、炭酸カルシウムや白亜は100%天然だそうです。
アイボリーブラックは牛骨を使用していたが、狂牛病の影響で入手困難になり、現在国産を使用しているけれども、供給等に関して不安なところも多いようです。カドミウムレッドは、かつては産業用に広範囲に使われていたと思うのですが、現在は絵具用ぐらいにしか用途がなくなってきているようで、原料自体はアメリカにある1社しか製造しておらず、そこが止めたら全世界的に廃盤になる可能性も。

なお、錬った絵具は熟成させます。熟成は基本的にただ寝かすだけのようです。よりしっとりした艶が出ます。水彩絵具は水分がとんで固化することもあるので、熟成工程はないとのこと。

こちらはチューブに絵具を詰める機械です。
絵具メーカー クサカベ様工場見学

次に絵具づくり実習です。今回の参加者の方々は、実は絵具の手練りに関しては、長年の経験をお持ちの方が多かったのですが、それでもたいへん勉強になりました。

まず、絵具の原料をいろいろと見せて頂きました。
絵具メーカー クサカベ様工場見学
これはラピスラズリです。私のモノよりも超デカくて色が濃かったです。
確か、11万円で購入されたとおっしゃておりました。
他にもドラゴンズブラッドも見せていただきましたが、これも私がこの前買った塊よりずっと大きくて迫力がありました。

絵具メーカー クサカベ様工場見学
ステアリン酸の混入された油を使って、顔料を練りました。

今回の参加者の多くが、ミノー絵具を愛用されている傾向がありまして、その件に関する質問が多くありました。
クサカベ絵具とミノー絵具の大きな違いですが、まず、ミノーにはスタンドオイルが含まれているそうです。これまで大きな差は体質顔料の量かと思っていましたが、いろいろ絵具の性質などを差別化を計る上で結果的にやはりミノーの方が体質顔料は少なくなるようです。ミノー絵具のシルバーホワイトがたいへん軟らかくねっとりしており、とても使いやすいのですが、何が含まれてこのような質感になるのか、たいへん話題になっているのですが、その点に関してはいろいろとヒントを頂きましたが、やはり企業秘密ということでした。

それと、前々から気になっていたことがあるんですが、昔、私が油を描き始めた頃は、絵具の乾燥が今よりもっとずっと遅かったような記憶があるんですよね。最初に油絵具を使ったときは、その乾燥の遅さに驚いたもので、数日たってもキャンバスの絵具が動きまくるような感じで、本当に乾燥するのだろうかと不安になるくらいだったのです。絵具の使い方がわかってきて、多少厚く塗ってもそこそこの速さで乾燥するようになったのかなとも思っていたんですが、実は、現在市販されている油絵具は昔よりも乾燥が速くなるように作られているそうです。乾燥に1週間かかるとクレームが酷いそうで。乾燥が速くなるのはいいことかもしれませんが、それによって失われるものもありそうな気がしないでもないです。当サイトの掲示板でも、乾燥を速くするにはどうするかという質問は度々ありますが、乾燥が遅いことによる利点を説いたり、乾燥が遅いことによるウェットインウェットの技法が、かえって作品の制作速度を高めることもあるという話をするようにしています。

以上です。間違った記述が御座いましたら訂正致しますのでご連絡ください。また、参加メンバーの方々で、他に追記したい内容が御座いましたら、コメント欄にご記入ください。

最後に、素晴らしい講習を提供していただいたクサカベ様に御礼申し上げます。
※問題のある記述、写真等ありましたら、削除いたします。

| 絵画材料 | 11:24 AM | comments (3) | trackback (0) |

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