『大聖堂・製鉄・水車 - 中世ヨーロッパのテクノロジー』
以下の本を読みました。
ジョゼフ・ギース/フランシス・ギース(著)『大聖堂・製鉄・水車 - 中世ヨーロッパのテクノロジー』
中世に関する書物の中でも読みやすく、そして面白い、と評判の本です。この他にも中世について書かれた同著者の本が多数出ていますが、一応買ってはいるもののようやく読み始めたような感じです。本書は、中世のテクノロジーについて語られていますが、中世初期から晩期にかけて非常に長い期間を一気に駆け抜けており、なかなか疾走感があります。詳しく書いたらきっと上中下3巻構成になると思います。技術的な説明は、文章だけで読んでいるよくわからない箇所も多々あるのですが、そういう単語はgoogleで画像検索しながら読み進めると、なるほどこれのことかと理解が捗ります。しかし、私としてはやはり駆け抜けてすう感じがどうしてもするので、思わず、気になった箇所にかんする本を注文していたりするうちに1万円ぐらい使ってしまいました。中世に関する先入観みたいなものをいろいろ覆される書です。最も感心したのは、大航海時代の原料動力ともなったとされる「香辛料」、これは一度肉に胡椒などの香辛料で風味付けしたらそれなしではいられずに胡椒を求めたとか、肉の保存に必要になったとか、それで法外な値が付き、それを求めて航海に出たなどとよく説明されたりしますが、本書によればそも思い違いだそうで、単調な食事をしていた庶民は香辛料を買えるような余裕はなかったし、香辛料を買える層の食事はもともと単調どころではなかったわけで。そして、・・・フィレンツェの商人フランチェスコ・バルドゥッチ・ペゴロッティが記した『商業の実践』には、一四世紀に商品として扱われた二八八種の「香辛料」が列挙されている - アニス、シナモン、クミン、ジンジャー、クローブ、ナッツメグ、コショウ、砂糖、ウイキョウ、鑞、ミョウバン、ローズウォーター、綿糸、ダマスカスの紙、糊、象牙、インディゴ、乳香、シェラック、麝香、亜麻仁油、硝石、ソーダ灰、石鹸、テレビン油、ヴェネツィアの銅、マチン、金箔などである・・・とありますが、こうなると、織物、穀物などを除けばほぼ全部「香辛料」ではないか。
という具合で読んでいて面白いのですが、ただ、気になる点もあります。例えば絵画技術について語っている箇所ですが「・・・油絵具は一二世紀の司祭テオフィルスの著作に登場するものの、亜麻仁油を精製して作る揮発性溶媒が主にヴェネツィアで開発されるまでは、卵をベースにしたテンペラ絵具が全盛であった。顔料と精製油を混ぜると、きわめて反応のよい絵具ができた。はやばやとそれを利用したのがブリュージュのファン・エイク兄弟やイタリアの画家たちだ・・・」とありますが、微妙に意味がはっきりしない文章です。まず亜麻仁油のような油脂を精製して揮発性溶媒ができるだろうか、これはちょっとわかりません。少なくとも油脂を蒸留で分離というのはできなかったと思います。これは松脂を精製してつくるテレピン油を言っているのかもしれません。となると、「顔料と精製油と混ぜると、、きわめて反応のよい絵具ができた」、この文章の意味ですが、搾油した油脂を精製あるいは加工して使えば確かに反応(乾燥)のよい絵具になりますが、前文を見ると揮発性溶媒のこととも思われます。そうするとファン・エイクがテレビン油を使ったと言い切ってしまうことになり、そして同時に油彩画発生のトリガーがテレビン油だと言い切ってしまうことになります。あと、ファン・エイク兄弟と同列にするほど、イタリアの画家たちは「はやばや」とそれを利用したのだろうか、という点とか。

西洋絵画とは何の関係もありませんが、以下の本も読みました。
白石太一郎(著)『古墳とヤマト政権 古代国家はいかに形成されたか』
歴史学者ではなくて、考古学者が書かれた本です。日本列島が古墳時代に入ろうとする頃の傾向として、地域差のあった列島の土器が、庄内式土器(土師器の初期または前段階)という同じようなものに一斉に換わります。また、九州から東北中部まで。弥生時代は環濠集落と言って、周囲に防衛用の堀を巡らした集落が一般的だったのが、その環濠が一斉に見られなくなる。日本海側の一部地域では、埋葬儀礼などに共通の習慣が見られるようになり、既に連合的なものが形成されていたと思われるが、近畿地方に最初の前方後円墳が登場すると、ほぼ列島全体が前方後円墳を作り出す。この前方後円墳が出現しようという時期が、魏志倭人伝の邪馬台国の時期ということを考えるとさすがに九州説は厳しいなと思わずにおれません。そして、その後も前方後円墳体制といえるものが非常に長く続き、更に大きく、そして列島中にものすごい数が作られます。道路網みたいなものがほぼ無い頃からと考えるとなかなかすごい事かと。前方後円墳は継体天皇以降も作られ続けるのですから、邪馬台国的なものの時代から、基本的な体制自体は連綿と続いていたのだと古墳は語っているように思われます。邪馬台という当て字みたいなものがどのくらい当時の音声を反映しているのかはわかりませんが、連合の中心地もその頃から”やまと”っぽい名前だったとも考えられます。個人的には倭人伝とか邪馬台国がどうとかは私はあまり関心がなく、ただただ土器の様式や、前方後円墳の分布状況などが、当時の状況を物語っていると思うのです。ここからは私の考えですが、文字とか紙とか文書とか、宣誓書とか契約書みたいなものがない時代だとしたら、前方後円墳を作り、同様の儀式を行なうという行為がヤマト連合に加わるという契約書代りになったのかもしれません。契約書みたいに定期的に作っていたから、全国にこれほど多くの前方後円墳が残されるに至ったのではないかと。町中に著名人の銅像が立っているウィーン市では、冗談で人口の半分が銅像だと言ったりしますが、日本の場合は人口の半分が前方後円墳だと言えるでしょう。というのはさすがに言い過ぎですが、倭国の人口の半分はハニワである、という冗談ぐらいは言っても差し支えなさそうな気がします。

| 書籍・雑誌・漫画・アニメ | 12:02 AM | comments (0) | trackback (0) |
オークのドングリから芽が出て伸びてきている様子
ヨーロッパ北部を代表する樹種とも言えるオーク(ヨーロッパナラ)
ヨーロッパナラ
建築、造船の材料、ウィスキーやワインの熟成用の樽材、革鞣しのタンニン、そして絵画用支持体などに使われたこの木のドングリから芽が出たのを観察しているのですが・・・

こちらが4/18の写真。
ヨーロッパナラ
パカーっというか、出ました!って感じです。

そしてこれは現在。
ヨーロッパナラ
ちょっとエイリアンっぽいなと思わないでもないですが、こんなふうに伸びてくるのですね。これって、ドングリ植えるときは、あまり土の奥に入れない方がいいのかもしれません。いや、むしろ安易に拾い集めずに放っておいて芽が出たところを鉢に移すというのがいいのかも。

| 家庭園芸 | 12:55 AM | comments (4) | trackback (0) |
Vol.32 Leonardo da Vinci:Pupil,Painter and Master
National GarellyのTechinical Bulletin、なんとなく定期的に買ってはいるものの、熱心に読んだものもあれば、ページを開きもせずに放置しているものもあるという状態です。思うに、最初から最後までしっかり読まねばならないとか思うからいけないのでしょう。
 National GarellyのTechinical Bulletin
適当にパパッと目を通して、大意を掴めればそれでいいというくらいの気持ちになるべきなのがいいんじゃないだろうか的に考えなおして、改めて読み始めようと思いました。実は講師の仕事の時間割の都合で、授業の合間に3時間ほど暇な時間ができてしまったので、その時間を活用しようかなと・・。いや、というか、なんか最近いまいち活力がないというか、やる気が起こらないのですが、せめてこういうときは本くらい読んでたら、時間のロスも多少はカバーできるような気がしないでもないように思ったのですが、いずれにしても1冊6千円くらいするものなので、ちょっと気合いを入れて読んでいきたいと思います。ちなみに、現在はPDFで公開されており、わざわざ買うこともないのですが、なんとなく惰性で買ってしまっています。実はこのあおりで、かつてはプレミア価格がついていた古い号も手が届きそうな値段に変わってきており、それらも買ってしまいそうで心配なのですが・・・。

とりあえず目を通してみたのは、Vol.32 Leonardo da Vinci:Pupil,Painter and Master
 National GarellyのTechinical Bulletin
いくつかの作品について書かれていますが、だいたい大ざっぱに概略を述べれば、パネルの上に地塗りは伝統的な二層のジェッソ(ジェッソグロッソとジェッソソティーレ)、そして下絵(ドローイング)はどうも2回やるのがレオナルドの特徴らしい。はじめに線的なドローイング、その上に油の含んだインプリマトーラ、これは鉛白をたっぷり含んでいるようで、現在は鉛白の鹸化により当時より透明化が進んでいると思われるが、それを考慮しても、当時も初めのドローイングは透けて見える程度に塗ってあり、その後、2回目のドローイングとなるが、これは太めの筆で行なわれ、茶系のモノクローム画風に描かれたようである。カマイユと言われる感じであろうか。顔料に関してはかなり克明に記述されている。メディウムに関してはhear-bodied walnut oilと書かれていることが多い。これは本書の後半で扱われるレオナルド以外の作品でもだいたいそうである。イタリアの画家がWalnut oilを使うのは普通のことであるけれども、個人的に助剤となる成分、樹脂とか松脂とか、そういうのが気になるのだけれども、顔料と比較してメディウムに関することは本書ではそれほど克明には書かれていないようです。後半はダ・ヴィンチ以外の作品について書かれていますが、その中の1点でパネルについて書かれている箇所が面白く、イタリアの作品なのでポプラであるが、板材の切り出し方はtangential cut(対義語はradical cut?)であるが中心に近いもので、vertical grain(対義語はflat grain?)である模様。最初何言っているかわからなかったけど、英語ではこんなふうに言うのか。

| 書籍・雑誌・漫画・アニメ | 10:47 PM | comments (0) | trackback (0) |

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