ド・ラングレ「油彩画の技術」 [コメントする]

ド・ラングレ「油彩画の技術」


スレッド作成 : 管理人さん
 (2000/6/8 22:33:37 -
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グザヴィエ・ド・ラングレ(著)/黒江光彦(訳) 『油彩画の技術』美術出版社に関する掲示板です。


久しぶりの書き込みです。

三嶋 さんのコメント
 (2000/12/12 00:10:41)

ラングレの技法書やデルナーの技法書との出会いは、10年程前、ラングレの技法書は、5〜6年前、人に貨したっきりで、もう長い間読んでいません。
結果から言うと、この技法書の通りに描いてみても、ほとんどの古典絵画のマチェールのようにはなりません。
たとえばほんの1例を挙げると、その処方はいずれも薄すぎます。描いてみれば直感ですぐ解ると思います。
これは、使われている製品の組成、配合比が昔と今では違うので、(特にアーレムシッカチフ)そのせいなのか、翻訳の時点で食い違いがあるのか、根本からなのかは解りません。行程その他にも根本的に違うと言い切りたい所は色々あります。
しかし、私が声を大にして言いたいのは、ラングレの技法書等が怪しいからといって、無視するのはあまりにも勿体無いことだと思います。
むしろ熟読、研究をおおいにお勧めしたいです。
大変古い本ですが、これだけ詳しく、なによりも解り易い技法書は未だに無いかもしれません。
たとえ9割が無駄だったとしても、1割でも役立つ事があればそれは大きな財産です。そこから人それぞれの方法を見つけていったら良いと思います。
たとえば私の処方のルーツはラングレの技法書プラスアルファにあるし、(地塗り、作業工程等は全く違うやり方。技法書にはグリザイユ上のグラッシ云々と書いてあったような気が・・・。この問題については別項で詳しく書きたい。)
今でも財産として大いに役立ち、忠実にやっていることとして、市販の絵の具への練り合わせ材(処方は違いますが。)という発想です。私はこれを欠かさずやります。これによって生まれるメリットは大きいと思います。用意こそ最初は面倒くさいですが、描く最中はいちいち樹脂油を混ぜ合わさなくて良いため、時間が短縮でき、ナマもの、特に花を描くときにも有利です。
その他推測するに、絵の具層の濃度が均質になるため、絵の健康、上層への影響にも良いと思われます。筆のストロークもスムーズ、かつ均質なので、ぼかし込みが美しく、大変容易に行えます。
ドロッとした色の物体をすくって直接描くのは自分には快感でもあります。巨匠たちも同じ様にやっていたのではないかとさえ思ってしまいます。
意外にもこれをやっている人に会った事はありませんが、大いにお薦めしたい所です。
長文ついでにもう一つ。
技法書に凝り固まっている人に良く居るのですが、技法書に載っている方法、材料しか使おうとしない、認めない人がいます。石橋を叩いて叩いて叩き尽くした物しか使わないのも良いのですが、昔の巨匠はそんなに何百年もたったデータ等持って居いる筈もなく、みんなそれぞれ新しい材料や方法を注目、開拓していました。結果的に失敗する事もあります。ダヴィンチだってかなり間抜けな事をしています。
失敗、成功のデータを後世に残すのも画家の役目だと思います。(いざとなったら修復家がそれを補う)
まして現在は、顔料の耐光性等測定するフェードメーター等で、ある程度の予想すら可能です。あまり神経質になるのはどうでしょうか。


Re:久しぶりの書き込みです。

管理人 さんのコメント
 (2001/1/3 16:05:50)

三嶋哲也さん、
明けましておめでとうございます。
10年前というと18、9の年齢だったと思うのですが、その頃にラングレの熟読、研究を始められたというのは素晴らしいですね。同じ頃、私の方は月並みに予備校で芸大合格者の参考作品を見ながら石膏デッサンをやっていました。実際美術を目指す人のほとんどがそうなってしまうと思うのですが、三嶋さんの環境はかなりうらやましいです(とは言っても、石膏デッサンの日々も決して悪いだけではないのですが)。

ラングレの処方は市販製品が混ざっているので検証するのが難しいですね。僕の方は実際に試したのは地塗り材などの処方で、情けないことに溶剤の方は大部分パスしてしまいました。ハールレムシッカチーフではなくて、コーパルの入ったメディウムということにするか、素材の比率を書いてくれてもよかったと思うのですが、ただ実際には素材を利用するよりも、市販製品をうまく活用した方が効率がいいので、当時はその方がよかったのかもしれません。
薄いという話ですが、僕も数値を見ただけでもかなり薄いと思うのですが翻訳した人はどう思ってるんでしょうね。
処方の数値以外は、ラングレの本ではアトリエの方位とか光沢が引く原理など、いつまでも参考になるところ多々ありますよね。

>ストロークもスムーズ、かつ均質なので、ぼかし込みが美しく、大変容易に行えます。
これは三嶋さんの絵を実際に見て納得しました。昔の画家が絵具を使える状態に準備していたというのはよく言われますよね。しかし顔料から練る時間というのはただごとではないので、市販の絵具をうまくつき合っていくのが現実的ですかね。

すっかり返事が遅くなってしまいましたが、またお時間があればよろしくお願いいたします。


油彩画の技術

山崎 さんのコメント
 (2006/07/08 12:38:20)

翻訳者の黒江光彦氏は修復家であって、画家ではありません。黒江氏には色々お世話になりましたが、画家の感性によって処方は変わるでしょう、という常識的な回答と、この本の内容は「現代の画材で昔風の絵画表現を追及する」というものであって、研究書ではなく、実用書という色彩がつよいこと、また、著者は昔の画材研究を熱心にやってきたという経歴の持ち主でないこと、等の話を聞くことができました。これを基調に読めば、なるほど、納得できます。だって著者は「フラッシュ」という、舞台美術用、イラスト用、アニメ背景用、現代美術用の画材で本格的な絵画制作を試みる人なんですから。油彩画の処方として濃度が薄いというのは本当です。そのまま描くと平坦な画面になってしまいます。ですから著者のいうように、ある時点までは頼りないが、ひたすら描き込んでいくと突然画面の完成度を感じる、ということになり、著者はこれに「描く喜びを知る」という感性の持ち主、ということでしょう。しかし、これは個性であって、普通は「何時できるの?」と不安になって当然でしょう。これを一般的な、或いは、普通の「絵画的感性」とは、とてもいえないのではないでしょうか。これは「フラッシュ」で油彩画風の表現をする場合にも共通する問題、性質、手ごたえ、でありますから。著者の感性は、おそらく上記のようなものであり、それゆえ処方も薄くなったのだと推測します。


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