「支持体と地塗り (7)」からの続き。
Re.「染み込む下地」問題の解決の視点2
Miyabyo さんのコメント
(2007/07/22 01:28:41)
ご返事では、
≪次々絵の具を載せていくという感じではなく、自分の絵をなぞりたくないということなんです。≫
とのことで、多少事情がわかりました。
以下補足しておきます。
≪石膏地(カセアルティーという水でぬれるもの)≫が、ルフラン社のCase - artiでしたら、
スレッド「支持体と地塗り」 (4)
カズ・アルティの使用説明書 (2002/09/19 22:26:51)
に、パッケージ説明書の訳および【解説】をしておりますので、参考にしてください。
≪染込みは完璧なんですが艶だけでなく発色の良さも消えてしまうようですね≫
「染込み」を調整するには、膠水、またはルツーセ(加筆用)をテレピンなどの希釈剤で薄めたもの、を塗布すれば、調整できます。
この塗布例(絶縁層の施しによる吸収性の調整)は、
スレッド「画材&技法 全般」 (7〜9)
「地塗りについて質問です」 uka さんのコメント(2003/05/12 06:49:06) に始まる私との一連のレスを参考にしてください。
また、物理的な「艶」は、絵具層そのものに求めなくとも、最終ワニスによってその艶加減をコントロールするという手もあります。
更に、「発色の良さ」は、多くの場合、下地がすっかり見えないほどの厚塗りでもしない限り、下地の白に色材を染込ませないことによってその発色が保てる場合が多いのものです。下地に絶縁層を施すのは、発色の良さを保つための一技術として使っている作家も多いのです。これも是非挑戦していただきたいところです。
実は最初のレスで、筆の勢いで、「ひょっとしたら、アフレスコ(affresco)やパステルの方が向いているのではないか」と書きたい誘惑を持ちつつ書かないでいたわけですが、今回のご返事からもその思いが残りましたので、ここに記しておきます。
●Forti, Giorgio, Antiche ricette di pittura murale - affresco, stereocromia, calce, tempera, olio, encausto, Cierre, 2002.
初版は1984年で、この書がイタリアの美術学校で、教本としているところもあるらしく、度々版を続けています。
日本でも何冊かフレスコ画を教える書がありますが、この書のように、古来よりある処方を踏まえた詳しい処方書はありません。
色刷りの図版は一切なくすべて線画によるイラストですが、かなり多いので、内容理解に大いに役立ちます。
パステルに関しては、私は参考になる書を持ちません。
何か良い処方が見つかるといいですね。では。
Re.「染み込む下地」問題の解決の視点2
凸ちん さんのコメント
(2007/07/23 05:36:54)
Miyabyoさんまたまたありがとうございます。
おおいに参考にさせてもらいます。
とりあえずは実際に今の方法で描いてみます。
lt さんのコメント
(2007/08/06 01:32:02)
半油性地を作ろうと思ったのですが膠の扱いが上手くいきません。
膠液を作りチタンとムードンを混ぜる所までは良いのですが、その後冷やしてから油を混ぜますよね。
その間に膠がゲル化してしまうのか、完成時には塗れる液体ではなくなってしまいます。
そのようになってしまってから、次に塗り重ねる時まで37度ほどで保存しているのですが...。
アドバイスをお願い致します。
ゲル化について
りか さんのコメント
(2007/08/06 01:33:53)
半油性地を作ろうと思ったのですが膠の扱いが上手くいきません。
膠液を作りチタンとムードンを混ぜる所までは良いのですが、その後冷やしてから油を混ぜますよね。
その間に膠がゲル化してしまうのか、完成時には塗れる液体ではなくなってしまいます。
そのようになってしまってから、次に塗り重ねる時まで37度ほどで保存しているのですが...。
アドバイスをお願い致します。
問題解決の刺激として
Miyabyo さんのコメント
(2007/08/07 02:36:40)
私はもっぱら油を用いない半吸収地をパネルに対してのみ使っていますので、経験に基づくレスをすることができません。
経験者のレスがあることを希求し、そのつなぎとして、ご質問の解決の刺激となりそうな部分を以下の書より引用しておきます。
●寺田栄次郎『絵画下地の研究−さまざまな地塗り塗料の比較研究−』
金沢美術工芸大学美術工芸研究所 1991年(非売品)
「金属製のボールに膠水を0.8容量ほど入れ、あらかじめ粉の状態で混ぜておいたチタン白と白亜を振り込んで入れ、膠水を吸収させたら料理用のヘラでダマがなくなるまで混ぜる。そのまま常温で冷まし、ゲル化しはじめるより2〜3度高い程度の温度になったら、ヘラでかき混ぜながら滴下して加える。リンシードオイルに樹脂やシッカチーフを加えるばあいは、あらかじめ油どうしを混ぜておく。
しばらくかき混ぜ続け、塗料の粘度が高くなりはじめたら、加える油の速度を少し早め、細い糸状にしてたらす。油を全て加えるまで、決して手は休めないこと。すっかり油を加えた後も、5分くらいかき混ぜ続ける。かき混ぜる間、ヘラは常に同じ方向にのみ動かすのがよい。
次いで、残りの膠水を加え1〜2分混ぜたなら、やはりかき混ぜながら少しづつ水を加える。失敗した場合は、このとき小さい油の粒が塗料の表面に浮かんでくる。
手でヘラを動かす代わりにハンドミキサーを使えば、より早くより確実に塗料を作ることができる。この場合の容器は、ハンドミキサーのビーター(攪拌棒)に合わせて選ぶ必要がある。あまり浅すぎるものや、逆に深すぎるものは望ましくない。ビーターの先が容器の底にとどき、しかも塗料でビーターの攪拌部分がすっかり隠れるくらいがよい。油を加えているあいだに、かなり空気が入り込み、塗料の体積が膨らむから大きめの器を用意すること。
この塗料調整の際に起きる失敗の多くは、油が分離することである。油の分離は、次の場合に起こりやすい。
∞韻亮舛悪い
∝運紊古い
Lを加えた時の膠水が熱い
ょ運紊稜仕戮薄すぎる
ゴ蚓舛搬亮全蚓舛領未かなり少ない
μを一度に多く加えすぎる
塗料と接する容器の縁やヘラ、ビーターの付け根に油がついたままである
➇油を加えている途中でかき混ぜるのをやめる
加える油の量が多すぎる
水で薄めすぎる
熱いお湯で薄める。」(77頁より)
※ヘラは、ゴム製は不可で、木ベラかプラスティックが良いとしている。
※見やすくするために、一部の構成を変えてあります。
※冒頭の理由から、引用部分への質問には応じかねます。
ひとまず、関連部分のみとしましたが、引用部分の前後にも、りかさんにとって有益な情報があるかもしれません。
非売品のため、美術系大学の図書館など、閲覧はかなり限定されるでしょうが、直接当たってみる価値はあると思います。
RE:ゲル化について
管理人 さんのコメント
(2007/08/08 19:41:46)
> 半油性地を作ろうと思ったのですが膠の扱いが上手くいきません。
> 膠液を作りチタンとムードンを混ぜる所までは良いのですが、その後冷やしてから油を混ぜますよね。
> その間に膠がゲル化してしまうのか、完成時には塗れる液体ではなくなってしまいます。
> そのようになってしまってから、次に塗り重ねる時まで37度ほどで保存しているのですが...。
ゲル化してしまったら、湯煎しながら、液状になるまで温めてゆけば良いと思います。
むろん、油が分離してしまうほど温めてはいけません。
液状になりかけたところで火を止め、その後は余熱で温める、あるいは火にかけずに湯煎ナベのお湯だけで温めるなどすれば、油が分離するほどにはならないかと思います。
失敗して油を分離させてしまうなどの経験は、最初は誰でもやるものだと思うので、失敗しながら覚えると思う方がいいでしょう。
しかしながら、温めても塗れるような状態にならないとしたら、処方に問題があるかもしれませんので、その場合は再度、詳細を添えて質問してください。
絵の具除去剤(リムーバ)使用後のキャンバス修復について
Atsushi さんのコメント
(2007/09/23 10:24:21)
初めて質問させていただきます。
ただ今、100号キャンバスに描き込んでいるのですが、一部のマチエールがどうしても気に入らなかったので、そこの部分だけ絵の具をリムーバで除去しました。(「リムーバ」とは、クサカベから出ている非塩素系の絵の具除去剤で、一般の塩素系「ストリッパー」よりは弱いようです)
さて、剥がれた絵の具を拭き取って、その上から新たに描こうとしたのですが、絵の具の乗りが大変に悪くてうまく定着しません。その上、発色も悪く、乾くのが極端に遅くて大変に困っています。
これは、おそらくリムーバで絵の具を除去する際に、下層の絶縁層(膠)の部分まで溶かしてしまったためかと思うのですが、この場合には再度、上から膠を塗る必要があるのでしょうか? あるいはアクリルジェッソかカゼインでも代用可能でしょうか?
また膠等を塗るとしたら、再度塗った絵の具をもう一度リムーバで除去した方がよいのでしょうか?それとも絵の具の上から塗っても構わないのでしょうか?
もし詳しい方いらっしゃいましたらお教え下さい。何卒よろしくお願いいたします。
RE:絵の具除去剤(リムーバ)使用後のキャンバス修復について
管理人 さんのコメント
(2007/09/27 00:08:20)
こんんちは。
> 剥がれた絵の具を拭き取って、その上から新たに描こうとしたのですが、
> 絵の具の乗りが大変に悪くてうまく定着しません。その上、発色も悪く、乾くのが極端に遅くて大変に困っています。
それは、剥離剤の成分がよく拭き取られていなかったことが原因かもしれません。
また、「下層の絶縁層(膠)の部分まで溶かしてしまったためかと」ということですが、膠層までということは地塗りもなくなって、画布が露出している状態なのでしょうか? それだとマチエールがどうこうという問題以前に、他の箇所との色艶のバランスが大きく崩れてしまうのではないでしょうか。
いずれにせよ、この辺は、支持体や地塗りなどの層構造をよく理解していれば、自ずと解決方法が見えてくると思います。逆に言うと、ご質問の文面だけで、正しい処置方法を回答するのは難しいです。
個人的な意見を述べると、気に入らない箇所を剥離剤で剥がして描き直すという描き方は、よっぽどのことでないかぎりお薦めしかねます。
ホルベインの画用液カタログにも、剥離剤に関して、「油絵具の消しゴムのように使えます」と書かれていますが、支持体から色彩層までの仕組みをよく理解し、さらにある程度几帳面な性格の人なら問題なくやれると思いますが、そうでなければ何らかのトラブルに見舞われるのではないかと思います。
油絵の場合、描いていて気に入らない場合は、乾燥する前にすぐさま布で拭き取ってしまうという方法があります。厚塗りの場合はナイフでかき取るのでもいいし。少しでも乾燥して粘りが出てからは、上記の方法は使えませんが、油絵は重ね描きもできることですし、多少は職人的緊張感を保つ為にも、剥離剤の使用はせずに制作するのが良いかと思います。
ありがとうございました
Atsushi さんのコメント
(2007/09/28 22:36:15)
管理人様
さっそくにレスをありがとうございました。
>膠層までということは地塗りもなくなって、画布が露出している状態なので>しょうか?
今回は剥離剤が非塩素系で弱かったためか、そこまではいきませんでした。よく見てみると地塗りの部分はちゃんと残っているので、支持体の構造からしても膠層まで溶かしてしまったというのは取り越し苦労だったようです。
その後、リムーバで一度けずり取った部分も、上から重ねて描いているうちに段々と発色を取り戻し、定着も安定してきましたのでひと安心しています。
しかしながら、ご指示通り今後は剥離剤を一切使用せずに制作しようと思っています。
ありがとうございました。
気泡の発生について
kobayashi さんのコメント
(2012/10/13 14:20:48)
市販の膠引きキャンバスに白亜地塗りを施した際、キャンバス表面に2、3ミリ程度の気泡が大量発生します。
地塗りを重ねても気泡が発生し、その跡がクレーター状になり、仕上がりがとても悪くなるので
表面を指や刷毛で撫でたりして対処しているのですが、気泡が広範囲に大量発生する為、相当骨が折れます。
下地塗料の処方、地塗り用刷毛やキャンバスに関してここ数年大きな変更はなく、地塗りを施したのは
つい先日の事ですので、気候が原因でもないと思いますし、何が気泡の発生に繫がっているのかわかりません。
どなたか詳しい方がいらっしゃいましたらアドバイスをお願い致します。
松川 さんのコメント
(2012/10/17 02:34:55)
処方も、刷毛もキャンバスも変わりないのに、突然変化するというのは変ですね。
霧吹きで少しだけ湿らせてから塗ってみてはどうでしょうか?
あとは、市販の膠引きキャンバスですが、「うさぎ膠引き」と表記されていれば、従来の膠だと思うのですが、「膠」とだけ書いてある場合は、PVAに変更されていることも考えられますので、確認してみてはいかがでしょうか?
若山 さんのコメント
(2013/04/24 20:09:13)
以前、テンペラを学んだ際に、キャンバス下地の材料に白亜地のものと、わざと細かいひび割れ効果を出すもうひとつの下地を紹介されました。そのひび割れ効果を出す材料をどうしても思い出せないので、教えていただきたいです。
あと、その材料は油絵キャンバスの下地としても使えるでしょうか?