1577 -1640 ルーベンス [コメントする]

1577 -1640 ルーベンス


スレッド作成 : 管理人さん
 (2000/11/24 00:55:58)

ピーテル・パウル・ルーベンス(リュベンス、リューベンスとも表記)のスレッドです。
Pieter Paul Rubens
生:1577年、ジーゲン(Siegen ドイツ)
歿:1640年、アントワープ

・各画家のスレッドは基本的にその画家の材料と技法、及び伝記的・歴史的事実や作品等の話題を扱うこととします。
・文献の紹介、材料や技法に関する考察、質問等を歓迎しております。
・文献情報は材料と技法という枠に限らず、その画家に関するものを広く収集できればと思います。
・その他、材料や技法に関する気楽な雑談等もどうぞ。


ルーベンス作品等

窓の鳥 さんのコメント
 (2000/12/11 16:26:43 -
E-Mail Web)

管理人さんがせっかくスレッドを作ってくれたので、少々書き込みます。

日本でルーベンス作品を観る機会というのは、企画展がほとんどだと思います。(国立西洋美術館に数点とヨールダンスの作品がみられるが、残念ながら作品レベルはあまり高い物ではない)
企画展で来日する作品は、おおよそどんな種類の美術品であっても最高傑作に類するものは、残念ながらほとんど来ません。
どの国も国宝級の物を容易には外国(ましてはるか東洋のはずれまで)には出さない物です。
本当のルーベンスの最高レベルを観るにはやはりヨーロッパに行くしかないでしょう。

ルーベンスの技法の基本は、板を基底剤としたきわめて伝統的なフランドル絵画です。
ボッシュやワイデンを観た後にデューラーを観て、さらにルーベンスを観ると技法的な継承と発展を実感出来ます。
このあたりの感じは画集などでは絶対に理解できない事ではないかと思います。

具体的な技法は割愛させていただきますが、
絵の具の組成にかんしては、顔料と乾性油と樹脂の具体的使用量は記録には出てきません。
ただ、人から聞いた話しでは、(不確実な情報で申し訳ありませんが)サンシックンドリンシードを愛用はしていたようです。
「私は、これ以上の油を知らない」と書き残しているそう。
樹脂は分かりませんが、使ってはいたと思います。ベネチアテレピンだと思うのですが、乾燥時間を考えるとちょっと疑問が残ります。
当時はダマールは一般的ではなかったように思います。マスチックの方が可能性は高いとは思います。あくまで可能性のレベルですが。

テンペラの使用に関しては、下層部分では使っていたと思いますが、混合技法と呼ばれるほどには使われていないと感じました。このあたりは意見の別れる所ですね。


Re:ルーベンス作品等

管理人 さんのコメント
 (2001/1/2 04:47:23)

せっかく書き込んでいただいたのに返事が遅くなってしまってすみません。

本物を見るべきだというのには賛成です。僕は窓の鳥さんほど長くは向こうにいなかったですけど、何よりも参考になりました。
国立西洋美術館にあるのは下絵かスケッチみたいな感じの絵ですね。ルーベンスの絵は工房で作っていたんで何人もの手によって完成された作品よりルーベンス自身の手になる下絵の方をありがたがったりすることもありますが、やはり誰の手になろうと、しっかりとした完成作品の方をはじめに見たいところですよね。

企画展も予算の関係なのかなかなかいいものが来ないし数も少ないですよね。以前もウィーン美術大学のコレクションが来てましたが、たがか大学のコレクションなのにいいものは何ひとつ来てなかったです。僕も現地で何回か見ていたはずなのに記憶にない絵ばかりで、こういう絵もあったんだと思いました。実際にはあれ以上のものがあって、大学にそういう資料があるというのは、気軽に研究できてさすが大学という感じです。うちの大学なんか年に1週間しか来ない市川○之助教授の為に、数十億円出して舞台装置を作るそうな。

それからルーベンスは板にこだわっていたんですよね。僕が見たのはウィーン博物館のがほとんどだったんで、あそこはルーベンスの絵も20点近くあるんですが、キャンバスの作品が多いんで、ルーベンスというと、巨大なキャンバスというイメージありました。あそこも、ちょっと変わったコレクションらしいですが。
http://www.khm.at/staticE/page441.html
↑こんな感じのやつですね。5mを越える絵というのもすごいです。


基底材

窓の鳥 さんのコメント
 (2001/1/5 13:22:53 -
E-Mail Web)

お返事ありがとうございます。

そうですか。ウィーン博物館には、キャンバス作品が多いのですね。(それにしてもすばらしいコレクションですねー!!)

逆にプラド収蔵作品にはキャンバスに描かれたものは、(私の記憶の限り)一枚もないのです。
面白いですね。

キャンバスを使った場合でも、地塗りは水性地塗でしょうね。ティッツアーノのように。
その場合、キャンバス目が邪魔して、あのルーベンス独特の流れるようなタッチは出にくいような気もします。

そういえば、テッツアーノ作品のルーベンスによる模写もいくつか収蔵されていますが、(プラドに)それも板でした。

たしか、画家として最初に注文を受けた祭壇画を板に描いた所、作品がテカリ過ぎてクレームがついて、キャンバスをつかって(艶をおさえるため)別の絵を描いたと、どこかで聞いた覚えがあります。

それ自体、凄い技術ですよね。
つまり求める効果を得るためには、技法や基底材を自由に変化できたのではないかな。


ウィーンのルーベンス

管理人 さんのコメント
 (2001/1/6 15:48:47)

せっかく盛り上がってきたのでいろいろ書きましょう。

ウィーンのは少し変わったコレクションで、なにかしらいわく付きのものや、下のような個人的な作品が多くあります。
http://www.khm.at/staticE/page147.html
他にも、画集でよく出てくるメドーサの首の絵や、自画像等があります。ルーベンスの絵は女性の肉体がかなりフクヨカというか肉がすごいんで、その点で好きでない人も多いようですが、ウィーンの作品はなぜか裸の描写が控えめなので印象がかわるかもしれません。

キャンバスの場合は絵が全体的に青の印象を受けます。と言ってもこれはウィーンの作品だけの話で、ルーブルのは赤が基調の絵なので保存修復の関係かもしれません。しかしデルナーの技法書にも「ルーベンスの麻布画は板とは逆に大変涼しげな銀灰味を帯びた全体調子を示す。この原因は中間調子の灰色で着色された半白亜地であり・・・」などと書いてありました。「涼しげ」というのはまさにその通りだと思います。
↓このような感じです。
http://www.khm.at/staticE/page440.html
工房の人がよってたかって描いたのかもしれませんが、相当うまいです。人物の肌など、アンバーで形を起こしていって、最後の方に被覆の色を置いていると思うんですが、その辺の技術が極まっています。

同じヨーロッパでも、美術館が違えば絵の質が全く違いますね。画家にしろ技法書を書いている人にしろ、ホームとする美術館の違いで随分見解が分かれるかもしれません。デルナーの混合技法も、一見なぜあんな複雑な手順になったのか不思議に思えますが、アルテピナコテークでデューラーの作品に囲まれていたら、あのような結論に達してもおかしくないかもしれません。と言いつつ、私はアルテピナコテークってまだ行ったことはないんですが。しかし、ウィーン美術史博物館にもデューラーやクラナハの小品が展示されている有名な一室があるんですが、そこの作品を見ていると、案外あの手順でやったかもしれない、と思えてきます。デルナーが間違っている点は、なんでもかんでも混合技法にしてしまったことでしょう。
ちなみにその一室っていうのは非常に小さな部屋で、↓のようなものが並んでました。
http://www.khm.at/staticE/page443.html
http://www.khm.at/staticE/page755.html
http://www.khm.at/staticE/page243.html
正直ちょっと気味が悪い部屋ですけどね。

ウィーン美術史博物館


窓の鳥 さんのコメント
 (2001/1/7 02:48:44 -
E-Mail Web)

またまた、お返事ありがとうございます。

なるほど。確かに、修復の問題はありますね。
美術館によって修復に関するスタンスがかなり違う分けですから。
なぜキャンバスの場合「涼し気な…」状態になるのかはちょっと実作を目にしないとなにもいえませんねー。

よく言われることですが、ルーベンスは工房作品がほとんどなので純粋に彼一人の作品を断定するのは難しいと。

その通りなのですが、ルーベンス工房あるいはルーベンス派作品とされるものにはレベルのかなり落ちるものがあり、それをよく観察すると、塗りぼかしを多用しすぎて調子がしまっていない物が多いんですよ。

不透明部分と透明部分の使い分けあるいは融合が上手く無い。
そのあたりにルーベンス本人の手際の良さや才能を強く感じるんですよ。

ひるがえって14、15世紀のフランドル絵画を観ると、作家によって違いは有るのですが、基本は透明描法という気がするのです。塗りぼかしはあまりしていない。絶対では有りませんが。
この辺の拡大解釈をすると、たしかに混合技法という考えに辿り着くかもしれない。
しかし、水彩絵具のみで緻密な表現ができるようになると、混合技法にこだわることもないと感じもします。個人的な感想ですが。


ルーベンスについて。

ゼレアー さんのコメント
 (2002/06/08 00:04:32)

こんばんわ、ゼレアーです。
国立西洋美術館の常設展は、私もよく観させてもらっています。デ=へームの静物画や青い聖母の絵も素晴らしいのですが、やはり目玉は、ルーベンスの下絵というかプリマ画みたいな未完成(?)の作品だと思っています。たしか、2点ほど展示されていますが、ルーベンスの技法の一端を垣間見ることができて貴重だと思います。デルナーの技法書に出てくる「斑紋状の下塗り」がはっきり出ていますし…
ルネッサンス・バロック系の絵画なら、完成作品よりは未完成画のほうを観たいと感じるほどです。絵を学ぶ者にとって、すごくいい勉強材料ではないかと。これは、管理人様とは違う考え方ではありますが…


『ド・マイエルン手稿』に残されたリューベンスの技法

miyabyo さんのコメント
 (2002/09/16 18:13:13 -
E-Mail)

私も「眠る二人の子供」は好きです。また彼の技法を知るうえで非常に参考になります。有色下地の上に蔭への移行部に使用した灰色(シルバーW + ピーチB 《+ アズライト》)が良く観察できます。
さて、「窓の鳥」さんの書き込みに、
《人から聞いた話しでは、(不確実な情報で申し訳ありませんが)サンシックンドリンシードを愛用はしていたようです。「私は、これ以上の油を知らない」と書き残しているそう。》
とあるのを見て、多分そのオリジナルソースはリューベンスと同時代の医者ド・マイエルンが画家から直接聞いた内容を記した『ド・マイエルン手稿』ではないかと思いますので、以下その部分を訳しておきます。
なお、文献に関しては「絵画技法全般」の書き込みもご覧下さい。

 (No.121, v. d.Graaf,ド・マイエルン手稿. p.191. 独:No.11, 仏:fo1.96, p.23)
 リューベンス氏
 注意− 青でそうするように、汝の絵具を塗りやすくするには−その結果よく混ざるし色褪せもしないが−、とはいえすべての絵具にもいえることだが、描いている最中に、湯煎で抽出した明るい色のヴェネツィア・テレピン油に、時折筆をちょっと浸せ。それから、その同じ筆で絵具をパレットで混ぜよ。
  【欄外付記:精製テレピン油(Aqua di Ragia) 私は見た。】【訳注】私とはド・マイエルンです。

 (No.122, v. d.Graaf,ド・マイエルン手稿. p.191. 独:No.328, 仏:fo1.150, p.146)
 騎士ピエトロ・パウロ・リューベンス
 騎士リューベンス氏は言っている。いかなる絵具も急いで練る必要があるときは、Aqua di Ragia(すなわち、松の木から採取された軟らかくて透明な樹脂から抽出した油で、芳香があり、水で蒸留してきれいなテレピン油になる)と混ぜるべきだ、これは良い油だが、スパイク油ほどの輝きはない、と。
 スマルトを美しくそして鮮明にするには、そのコクのあるワニスで手早く練り、それを静かに、しかも注意深く施すことが肝要である。また、まだ濡れているときに絵具を混ぜてはならない。というのも絵具を台無しにするからだ。だが、塗ったところが乾いたならば、汝がやりたいようにその上に仕事ができる。
 これは灰青にも最適である。アズライト。ウルトラマリンとウルトラマリン灰は、遠景の仕上げに使うと美しい。 【訳注】スパイク油はラヴェンダー油

 (No.147b, v. d.Graaf,ド・マイエルン手稿. p.203. 独:No.7, 仏:fo1.7, p.20)
 テレピンは、精製テレピン油又はペトロールが蒸発するようにやがて乾燥し、水に耐えることができない。(空気、水??−V.D.グラーフ ベルガー及び仏版は「水」)に耐える最上のワニスは、一切煮ずにリサージ(セリューズでも試してみよ)を加え、太陽で濃くなった乾性油から作られる。
  【欄外付記:リューベンス氏の忠告。あとのサッレ大尉のところを見よ。】

以上が、『ド・マイエルン手稿』でリューベンスに関するすべてです。
「私は、これ以上の油を知らない」は、他の画家から聞いたところで云っています。



●森田恒之『「マイエルヌ手記」覚書−書き残された17世紀フランドル絵画の技法−』「みづゑ」別冊61, pp.98-104(1970)
 ド・マイエルン手稿から一部引用しながら表題の油絵の技法を辿っています。ド・マイエルン手稿の内容を本邦で初めて紹介した記事です。ちなみに、この手記は英国で書かれているものです。にも関わらず、なぜ17世紀フランドル絵画の技法なのかといえば、当時の英国で活躍した画家はほとんどフランドルからの出稼ぎだったからです。この当時英国でかかれた技法書にニコラス・ヒリヤード『写本装飾術』(1600年頃)と、ド・マイエルンの要請で執筆したものの決定版を見せられなかったエドワード・ノーゲートの『細密画論』(1621-26、1648-50)がありますが、題名から判るように、油彩画に関する書ではない、つまり当時の英国生まれの画家の絵画技術は遅れていたのです。
参考になれば幸いです。


『ド・マイエルン手稿』でしたか。

窓の鳥 さんのコメント
 (2002/09/17 12:53:41)

miyabyo様
初めまして、窓の鳥です。

とても詳しく、かつ貴重な情報をありがとうございます。

『ド・マイエルン手稿』でしたか。
私はマドリードで先輩の模写画家(日本人)から聞いたので、出典は分かりませんでした。
私が顔料を練る時に「サンシックンドリンシード」を主に使っているとその先輩の模写画家に話した所、そのような話を聞かされたのです。
(ちなみに私は現在シルバーホワイトのみ手練りしていますが、油は生のリンシードにしています。)

miyabyo様はドイツ語とフランス語で読まれたのですね。凄い!。

< (No.147b, v. d.Graaf,ド・マイエルン手稿. p.203. 独:No.7, 仏:fo1.7, p.20)
テレピンは、精製テレピン油又はペトロールが蒸発するようにやがて乾燥し、水に耐えることができない。(空気、水??−V.D.グラーフ ベルガー及び仏版は「水」)に耐える最上のワニスは、一切煮ずにリサージ(セリューズでも試してみよ)を加え、太陽で濃くなった乾性油から作られる。>

この部分が「サンシックンドリンシード」に近い部分ですね。乾燥剤(リサージ)をいれるのですね。

大変勉強になりました。


リューベンスの青

miyabyo さんのコメント
 (2002/09/25 23:25:58 -
E-Mail)

窓の鳥さんへ 

 <(ルーベンスはスマルト青が多いですよね)>

 ラピスラズリを使う彩色法は一緒独特で、じつは個人差や時代差があまりないようです。

 彩色法の基本は、下層にラピスラズリより安いアズライトや、更に安いスマルトなどの青顔料をおいて、上層にラピスラズリを置く。

 『ド・マイエルン手稿』では、英国で活動していた画家たちの画法を観察したり、聞き出した情報をまとめて、次のようにいってます。

《青の扱い方: 白を加えると明るくなり、3、4種類の色ができる。さらに青を加えるか、第一層目に少量のレーキを混ぜておくと、色が沈む。ウルトラマリンだけは、いかなる場合もスマルトの上からグレーズせよ。
 チェンドレ(* アズライトのこと)はウルトラマリンに次いで非常に美しい青である。白、その他の色で調合せよ。
 スマルトは、アスヘン(* 並質以下のアズライト)またはチェンドレと同じように扱え。》
fol.8.

《美しい青の使い方: スマルトと鉛白を混ぜて作った層のみを塗れ(鉛白の量が増えれば、それだけ絵具はらくに塗れる)。暗部はレーキを塗り、その上からウルトラマリンでグレーズせよ》fol.95.

《美しい青の扱い方: スマルトと鉛白で衣文を全部描いたあとに、暗部を同じようにレーキで塗れ。その上から、絵具がまだ新鮮なうちにウルトラマリンの粉末をかけ、余分な色を非常にやわらかい羽毛ではらいおとせ。》fol.96.


 たとえば、
ベルギーのブラッセル王立文化財研究所で、有名な「十字架降下」の修復にあたり、大々的な予備調査が行われた(1962年刊)のですが、それによると、
 ラピスラズリ、アズライト、スマルト、インディゴの4種の色材が検出されており、特にスマルトを多用したという形跡はありません。むしろ、使う必要もない背景の空にさえラピスラズリを使っているくらいです。

 また、ワシントン・ナショナルギャラリーの報告書“Rubens’s The Gerbier Family”(1973)他10冊ほど見てみましたが、同じでした。

《参考》『色彩から歴史を読む』監修 神庭信幸 他 ダイヤモンド社1999年の中に、「ルーベンスの色彩を支えた絵画技法」pp.92-112. という一文がありますよ。


<実作を模写した感触では、ルーベンスよりは楽に描けたと記憶しています。>

  羨ましい限りです。 では、また。


窓の鳥 さんのコメント
 (2002/09/26 09:32:44)

miyabyo様

<ラピスラズリ、アズライト、スマルト、インディゴの4種の色材が検出されており、特にスマルトを多用したという形跡はありません。むしろ、使う必要もない背景の空にさえラピスラズリを使っているくらいです。>

<また、ワシントン・ナショナルギャラリーの報告書“Rubens’s The Gerbier Family”(1973)他10冊ほど見てみましたが、同じでした。>
<《参考》『色彩から歴史を読む』監修 神庭信幸 他 ダイヤモンド社1999年の中に、「ルーベンスの色彩を支えた絵画技法」pp.92-112. という一文がありますよ。>

大変詳しい御指摘ありがとうございます。

なるほど、使用している顔料事体には、ルーベンスもヴァン・ダイクも大差ないのですね。
ということは、用い方のちがいによる所が原因となりますね。

ルーベンスの青は、作品の見た目での判断ではあまり「ウルトラマリン」系の色味を感じないのですよ。
(少なくとも、プラド美術館収蔵の物は。)
<ウルトラマリンだけは、いかなる場合もスマルトの上からグレーズせよ。>
と『ド・マイエルン手稿』では書かれているそうですが、このグレーズ部分があるいはルーベンスの場合少ないのか、できるだけ避けていたのかもしれませんね。なにしろ大作でも1週間ほどで完成させていたそうですから。
(想像の域を出ませんが)
<<実作を模写した感触では、ルーベンスよりは楽に描けたと記憶しています。>>
<羨ましい限りです。 では、また。>

原文の状態でヨーロッパの技法書類を読めるmiyabyo様の方が、私には遥かに「羨ましい限り」です。


再び、リューベンスの青について

miyabyo さんのコメント
 (2002/10/03 09:43:29 -
E-Mail)

窓の鳥さんへ

 リューベンスの青で、追加しておかねばならない色があります。
 検出例がほとんどないので、実験的に使用したのかと思って、あえて控えていたのですが、窓の鳥さんがプラド美術館収蔵の<ルーベンスの青は、作品の見た目での判断ではあまり「ウルトラマリン」系の色味を感じないのですよ。>とのことなので、今一度調べ直したら、数例でできたので、リューベンスのパレットとして挙げていいだろうと考えました。

 ちなみに、私はストか何かの理由でプラド美術館内に入れず、いたし方なくトレドまで行って、エル・グレコに噛みついたという厭な思い出があります。

 プラドの修復報告書を読んだことがないので何ともいえないのですが、Verditerの可能性です。ゲッテンス/スタウト『絵画材料事典』p.92のBlue Verditer(blue bice)です。乱暴な言い方をすれば、アズライトの人工版みたいなもの。その使用がはっきりしている作品は、
 《The Gerbier Family》 Washington, National Gallery of Art
 《Samson and Delila》 London, National Gallery

 人工青は、古くから銀を使ったものと、銅を使ったものが2種あったのです。リューベンスが使っていたのは銅から作る青で、遠くはエジプト・ブルーも銅を使った青ですが、これとは別種です。源はすでに8世紀末〜9世紀初期とされる『ルッカ手稿』にその処方が見られます。

 《銅華について。 混ざりもののない銅版を取り、強力な酢の上にそれを吊るせ。酢に触れないようにして、それを太陽の下におけ。二週間後、容器を開けて板を取り出せ。その風化物をかき集めよ。そうして汝は高純度の銅華がえられる。》

 これを発展させたものは、12世紀頃現存の状態になる『マッパエ・クラヴィクラ』にあり

 《もしも汝が、別の青を作りたいならば、もっとも純粋の銅を入れたフラスコを取って、その半ばまで石灰を入れ、それから強力な酢でそれを満たせ。それに覆いをし、そして封をせよ。次に土の中、又は他の温かい場所にフラスコを置き、1ヶ月間そこに置いておけ。のちにフラスコの蓋をとれ。この青は他の青ほどよくはないが、木や漆喰壁の絵画には役に立つ。》【訳注】「他の青」とは銀を使った青のこと。

 整理すると、リューベンスの青は、ラピス・ラズリ、アズライト、スマルト、インディゴ、ブルー・バイスの5色。

 「フェルメールの技法」でも書きましたが、ラピス・ラズリ、アズライト、スマルトには、それぞれ色味や粒子の大きさに応じて、各工房にそのヴァリエーションが揃えてあったので、プラドで見られた絵具が<スマルト>なのかどうかは、ブルー・バイスも含めて考えた方がよさそうです。

以上、補足しておきます。


ヴェクサン さんのコメント
 (2004/04/02 01:36:42)

ルーベンスは真筆見ないと駄目ですね。
アントワープにあるルーベンスの家に自画像があるけど、まあ傑作ですね。
目が合ったとたん電流がながれました。
マドリで見たマリー ド メデシスの肖像も何気なくあったのですが完璧ですね。
工房のヨルダンスなどの手が入ってるのは胃にもたれそうで大味


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