『西洋絵画の画材と技法』 - [リンク集&参考文献]

美術史の文献

本頁では美術史関連の本を紹介しています。本Webサイトは絵描く人のためのサイトですので、本項のリストも絵描きの教養を想定して作成しています。実技系の学校では、本ばかり読むような行為はあまり関心されないことが多く、大学という機関の中でさえ、美術の歴史に関して、思い込みや伝聞による怪しげな情報のやりとりが行なわれていたります。何かについて語るならそこそこの勉強は必要と言えるでしょう。とは言いつつ、やはり時間は限られています。そこで、主に実技家のために、効率よく手短に学べるような書籍を中心に本項リストを作成しました。楽しく読め、それでいて内容が深く、一冊で多くの情報を得られるような書を選択したつもりです。私自身がまだ若輩者であるがゆえに、全ての範囲を網羅というわけにはいきませんが、少なくとも私より若い世代に役立つことを願っております。

※技法・材料に関わりのある本は「技法書の紹介」ページに掲載しています。特に歴史的な技法書は「昔の画家などの古写本・手記」に記載しているので、そちらも合わせて確認してください。
※修復・調査報告等は「保存修復、美術館の刊行物、図録等」に記載。
※和書・洋書の購入はAmazon.co.jpで。古書は日本の古本屋、洋書古書はabebooks.comBookfinder等がお薦め。詳細は図書の入手方法を参照。
※書籍が売られていない状態は「品切れ重版未定」や「絶版」のケースがありますが、どちらであるか確認が難しいため、すべて絶版と表記しています。

美術史

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馬杉宗夫(著)『ロマネスクの美術』八坂書房,2001 ★お薦め★

ロマネスク美術の入門書として最適。文章が素晴らしい。
図説的なものでは↓。
辻本敬子(著),ダーリング益代(著)『図説 ロマネスクの教会堂』河出書房新社,2003

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佐藤達生(著),木俣元一(著)『図説 大聖堂物語 ゴシックの建築と美術』河出書房新社,2000 ★お薦め★

豊富な写真と優れたテキストで、最初に読むのに最適の入門書。
以下もお薦め。
酒井健(著)『ゴシックとは何か - 大聖堂の精神史』ちくま学芸文庫
佐藤達生(著)『図説 西洋建築の歴史』河出書房新社,2005
馬杉宗夫(著)『ゴシック美術 - サン・ドニからの旅立ち』八坂書房,2003
馬杉宗夫(著)『シャルトル大聖堂―ゴシック美術への誘い』八坂書房,2000

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箕輪成男(著)『中世ヨーロッパの書物 - 修道院出版の九〇〇年』出版ニュース社,2006 ★お薦め★

美術史において、中世の写本と言えば、なんと言っても豪華な彩飾写本であるが、本書は数の上でも影響力でも本来の主役である非彩飾写本がテーマ。
以下の2冊も是非読んでおくべし。
箕輪成男(著)『パピルスが伝えた文明 ギリシア・ローマの本屋たち』出版ニュース社,2002
箕輪成男(著)『紙と羊皮紙・写本の社会史』出版ニュース社,2004

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Edited by Paul Williamson,THE MEDIEVAL TREASURY - The Art of the Middle Ages in the Victoria and Albert Museum,V&A Publications,First 1986,New 1998

ヴィクトリア&アルバート博物館の図録。

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ブルース・コール(著)『ルネサンスの芸術家工房』ぺりかん社,1995 ★お薦め★

中世後期〜ルネサンス時代の工房の様子、当時の社会環境、絵画の役割など。当時はまだ芸術作品や芸術家という考え方はなく、絵画は家具や装飾と同列の存在で、画家は絵を作る職人だった。持って生まれた才能ではなくて、何らかの縁で工房の徒弟になり、技術的な訓練の後に画家になった。彼らは技術者であって、材料をよく知り、完成度の高い絵を仕上げた。
他に以下の書もお薦め。
アンドリュー・マーティンデイル(著)『中世の芸術家たち』思索社,1979
山本義隆(著)『一六世紀文化革命』みすず書房,2007

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岡部紘三(著)『フランドルの祭壇画』勁草書房,1997 ★お薦め★

論文を集成したものだが、非常に読みやすく且つ面白い。初期フランドル絵画の概観に最適。
余裕があれば以下の書も。
M・フリートレンダー(著)『ネーデルラント絵画史 ヴァン・エイクからブリューゲルまで』岩崎美術社,1983
E・ダンネス(著),黒江光彦(訳)『ファン・エイク ゲントの祭壇画』みすず書房,1978

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宮下孝晴(著)『フレスコ画のルネサンス 壁画に読むフィレンツェの美』NHK出版,2001 ★お薦め★

NHK人間講座「フィレンツェ・美の謎空間 フレスコ壁画への旅」のテキストを編集しなおしたもの。中世後期からルネサンス、バロックまでのフレスコ画の歴史、特に技術的な歴史がよくわかる。

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レオン・バッティスタ・アルベルティ(著) , 三輪福松(訳)『絵画論』中央公論美術出版

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ヴァザーリ(著)『ルネサンス画人伝』白水社,1982

ふざけているのだろうか?と思うほど面白い逸話が散りばめられた評伝。
ジョルジョ・ヴァザーリ(著)『続 ルネサンス画人伝』白水社,1995
ジョルジョ・ヴァザーリ(著)『ルネサンス彫刻家建築家列伝』白水社,1989
『列伝』冒頭の「技術論」と伝記各部の序論を訳出(絶版)↓
ヴァザーリ研究会(編集)『ヴァザーリの芸術論 芸術家列伝における技法論と美学』平凡社,1980
「技術論」の訳出英語版(現在も入手可)↓
Vasari on Technique,Dover Pubns,1980

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ヤコポ・ダ・ポントルモ(著)/中嶋浩郎(訳)『ルネサンスの画家ポントルモの日記』

宮下孝晴の解説付。
他に、当時物としては以下のようなものも。
ベンヴェヌート・チェッリーニ(著)/大空幸子(訳)『チェッリーニわが生涯』新評論,1983
古賀弘人(訳)『チェッリーニ自伝 フィレンツェ彫金師一代記』(上・下巻)岩波文庫,1993

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片桐頼継(著)『レオナルド・ダ・ヴィンチという神話』角川書店,2003 ★お薦め★

従来の虚像とは違うリアルなダ・ヴィンチ伝。文章も読みやすく、入門に最適。
以下の書も。
片桐頼継(著)『よみがえる最後の晩餐』日本放送出版協会,2000
↑NHKスペシャルで使用されたCGの紹介という、あまり有り難みのない構成だが、『最後の晩餐』についての解説は秀逸。

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フランチェスコ・モッツェッティ(著)『ティツィアーノ - ピエトロ・アレティーノの肖像』三元社,2001

ピッティ美術館蔵ティツィアーノ作『ピエトロ・アレティーノの肖像』について書かれた本。著名な毒舌文筆家アレティーノ等、ティツィアーノ周辺の人間関係が興味深い。以下の本も同時に読むとさらに面白いかも。
『ティツィアーノ「パウルス3世とその孫たち」 - 閥族主義と国家肖像画』三元社,1996
ロドヴィーコ・ドルチェ(著)『アレティーノまたは絵画問答―ヴェネツィア・ルネサンスの絵画論』中央公論美術出版,2006

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ベルトルト・ヒンツ(著)『ルーカス・クラーナハ(パルコ美術新書)』PARCO出版,1997 ★お薦め★

「・・・宮廷画家の任務は、美術史の研究対象として記録に残るような、宗教画や神話画、肖像画、木版画および銅版画などの枠をはるかに超えるものだった。クラーナハに対して支払われた賃金記録のわずかに10パーセントしか、この種の仕事に該当しない・・・(本文より)」
実業家として大成したクラナハは極端な例ではあるが、現代人がイメージする画家という職業と、ルネサンス以前のそれとでは、全く異なるものであることを改めて実感させられる。

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ヴェロニカ ブリューン・デ・オーサ(著)『エル・グレコの生涯 1528-1614神秘の印』 ★お薦め★

エル・グレコの伝記小説。クレタ島から、ヴェネツィア、ローマ、トレドと渡り歩いたグレコだけあり、淡々と話が流れつつも、ティツィアーノやティントレットなどの大画家はむろん、比較的マイナーな画家も多数登場、その他の歴史上の人物も絡んで、最後まで飽きさせない。グレコ作品の解説書としても秀逸。

ヨーロッパ史

ヨーロッパの歴史や地理について多少は知らないと、美術史の本を読んでもなかなか理解が深まらない。というわけで、以下はヨーロッパ史の入門書となりそうなものを紹介。「ヨーロッパ」の範疇に入らないものや、神話に関するものも含まれていますが、細かいことは気にせずに。

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小玉新次郎(著)『新書東洋史〈9〉西アジアの歴史』講談社,1977

聖書の物語を理解するには、古代西アジアの地理・歴史を知らないと始まらない。
小林登志子(著)『シュメル 人類最古の文明』中央公論新社,2005
松本健(編著)『NHKスペシャル 四大文明メソポタミア』
月本昭男(著)『ギルガメシュ叙事詩』岩波書店,1996
中田一郎(翻訳)『ハンムラビ「法典」』リトン,2000
Dominique Collon , Ancient Near Eastern Art , Univ of California Pr , 1995
里中満智子(著)『アトンの娘 ツタンカーメンの妻の物語』中公文庫コミック版全3巻

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松本仁助,岡道男,中務哲郎(編)『ギリシア文学を学ぶ人のために』世界思想社,1991

ギリシア文学の整理整頓に最適。トロイア戦争を舞台に英雄や神々の緊迫したやりとりを描くホメロス作『イリアス』、トロイア戦争後の英雄オデュッセウス帰還の物語『オデュッセイア』。ヘシオドスの『神統記』は世界の創造や神々の系譜について語っており、後のギリシャ神話を題材とした作品の原典となる。ギリシア悲劇作家アイスキュロスの『アガメムノーン』はトロイア戦争に勝利して帰国したアガメムノーンが、妻クリュタイメーストラーとその情夫アイギストスによって殺される物語。同じくギリシア悲劇作家ソポクレースはヘラクレスの死を描いた『トラーキースの女たち』、父アガメムノーン王を殺害した母への復讐の一念に生きる『エレクトラ』等。ヘロドトスは『歴史』で神話とは切り離して歴史を書き、歴史の父と呼ばれる。

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松本仁助,岡道男,中務哲郎(編)『ラテン文学を学ぶ人のために』世界思想社,1992

古代ローマ文学の大観を掴むのに最適。ウェルギリウス作『アエネーイス』はトロイア戦争後、英雄アエネーイスが地中海を渡り歩き、ローマの基礎を築くまでを描く叙事詩。ギリシア神話を巧みな語り口で叙述し、ローマ時代以降ギリシア神話の定番となるオウディウス『変身物語』キケロの著作集、ユリウス・カエサルの『ガリア戦記』、歴史家タキトゥスの『年代記』『ゲルマニア』等々。帝政末期にはキリスト教文学が主流になるが、ルネサンス絵画の題材としても頻繁に登場するヒエロニムスなど西洋美術に深く関わる情報が尽きない。

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里中満智子(著)『マンガ・ギリシア神話』全8巻 ★お薦め★

ルネサンス以降の西洋絵画はギリシア・ローマ神話を描いた物が非常に多く、主題を理解するには、それらの物語を知っていないと始まらない。里中満智子(著)『マンガ・ギリシア神話』全8巻は、独自の解釈や漫画家としての個性は押し出さずに、中立的な観点から淡々と物語を描いており、その場その場で辻褄の合わない神話の数々を全8巻で体系的にまとめ上げている。

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塩野七海(著)『ローマ人の物語』新潮社

小説を読むように楽に古代ローマの歴史を読むことができる。非常に面白くてわかりやすく書かれており、入門に最適。全15巻。

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塩野七生(著)『わが友マキアヴェッリ フィレンツェ存亡』

ルネサンス盛期から終焉までのフィレンツェ史入門に最適。
以下はヴェネツィア史入門に最適。
塩野七生(著)『海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年(上)』
塩野七生(著)『海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年(下)』

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永井豪(著)『ダンテ神曲』(上・下)講談社

永井豪がドレ画にインスピレーションを得て漫画化。
寿岳文章(訳)『神曲〈1〉地獄篇』集英社文庫
『絵で読むダンテ「神曲」地獄篇』

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江村洋(著)『ハプスブルク家』講談社現代新書

ハプスブルク家入門書の定番中の定番。同時代のヨーロッパ史についてあまり知識がなくても読めるような配慮が随所に見られるので、ヨーロッパ史の入門書ともなるかもしれない。
江村洋(著)『ハプスブルク家の女たち』講談社現代新書
菊池良生(著)『ハプスブルクをつくった男』講談社現代新書

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ヒュー・トレヴァー=ローパー(著)『ハプスブルク家と芸術家たち』朝日選書

ハプスブルク家の中でも芸術保護で知られる四人の皇帝・国王を取り上げて、芸術との関わりを描く。歴史家が著わした本であるため、瑣末な様式論に陥ることなく、ダイナミックな読み物となっている。
美術とはあまり関係ないが、以下もお薦め。
渡辺護(著)『ハプスブルク家と音楽 王宮に響く楽の音』音楽之友社,1997
カミロ・シェーファー(著)『ハプスブルク家の音楽家たち』音楽之友社,1998

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西川和子(著)『スペイン宮廷画物語 王女マルガリータへの旅』彩流社,1998

名画を交えつつ、スペイン・ハプスブルク家の歴史について語る本。これ以上ないくらい易しい文章で書かれていながら、内容はしっかりしているので、入門に最適。
映画『女王フアナ』、または文庫『女王フアナ』もスペイン・ハプスブルク家の入門用としてお薦め。

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長谷川輝夫(著)『聖なる王権ブルボン家』講談社,2002

アンリ4世からルイ16世までを一望。

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ブリティッシュ・キングダム DVD-BOX

プランタジネット家のヘンリー2世『THE LION IN WINTER 冬のライオン』、ヘンリー8世の生涯を描く『キング・オブ・ファイヤー』、エリザベス女王からジェームズ1世までを描く『レジェンド・オブ・サンダー』の3作を収録。DVD6枚組。レンタル店にも置いてある。

旧約・新訳聖書

西洋絵画、特にバロック以前の絵画の大部分はキリスト教にまつわる物語を描いたものであるからして、その物語を知っていなければ、どのような場面を描いているものなのか全く理解できない。内容がわからなくても、絵の美しさを楽しめれば良いのだという人も居るが、知らないということは非常に多く物事を見落としてしまう。そこで、以下は、旧約・新約聖書や、外典、聖人伝などの理解の助けになるような本や映画を紹介。

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聖書の世界〈第1巻〉旧約 (1970年)

第1巻が1970年発行。少々古い。全6巻・別冊4巻から成る『聖書の世界』講談社は、複数の研究者による旧約、新約及び外典の敷衍訳。「そのまま読んでよく分かるように書き改めた聖書」を意図しているようだが、実際はある程度の基礎知識がないと難しい部分も多い。本書を薦める理由は、古書店で全巻セットをそれほど高くもない価格で入手できるという点に尽きる(バラで買うのは得策ではない)。現在市場にある類書は、これから分冊されて出ているものもあり、細かい点を気にしなければ、充分価値在り。ネット、リアル店舗に限らず、6巻セット、または別冊込み10巻セットを見付けた場合に限りお薦め。

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フラウィウス・ヨセフス(著)『ユダヤ古代誌〈1〉旧約時代篇』ちくま学芸文庫

創世記から始まる聖書の物語を読むのに最適。紀元1世紀にユダヤの歴史家が書いたものだが、現代人が書いたどの本より読みやすい。細かい点で聖書と違う部分もあるが、下手な新書を読むよりは、歴史的名著で入るのもよいかと。

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ヤコブス・デ・ウォラギネ(著),前田敬作(訳),今村孝(訳)『黄金伝説』1,平凡社,2006

13世紀に編纂された聖人伝の集大成。日本語訳は長らく入手困難だったが、コンパクト版になって復活。これを読むのは少々大変かもしれないが、一部を抜粋し、易しい言葉で訳した抄訳版あり↓
藤代幸一(訳)『黄金伝説抄』新泉社
抄訳版だけでも、絵画によく登場する聖人が出ており、そこそこ参考になる。

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加藤隆(著)「『新約聖書』の誕生」講談社選書メチエ,1999 ★お薦め★

矛盾する4つの福音書が生まれる経過が、実にわかりやすく描かれている。西洋絵画の主題を理解するという目的のうえでは、あまり関係のない本だが、記憶に強烈な印象を残すので、ある意味、入門書的役割を果たすかもしれない。。

以下は聖書の物語を題材にした映画。概ね時系列準。
天地創造(1966年 伊米)
・ソドムとゴモラ(2000年 独伊米)・・・「ソドムとゴモラ」というよりアブラハムの生涯全体を描いた内容だが、それはそれで良し。
・ソドムとゴモラ(1962年 米)・・・未見。
・イン・ザ・ビギニング(2000年 米)・・・アブラハム〜十戒まで。
十戒(1956年 米)・・・十戒の映画は山ほどあるが、1956年版が傑作。
ヨセフ物語〜夢の力〜・・・アニメ。イスラエルの民がエジプトへ移り住む経緯が。 ★お薦め★
プリンス・オブ・エジプト・・・アニメ。モーセのエジプト脱出。 ★お薦め★
サムソンとデリラ(1949年 米)・・・初期のハリウッド大作史劇。登場人物の容貌が白人的過ぎて、リアリティに欠ける。
サムソンとデリラ(2004)・・・サムソンとデリラの映像作品は山ほどあるが、無難で入手しやすい一品。
・ソロモンとシバの女王(1959 米)
・クイーン・オブ・エジプト(1995 米)・・・正確にはエジプトではなくシバの女王。ソロモン王が登場。


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最終更新日 2007年10月28日

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