『西洋絵画の画材と技法』 - [材料] - [媒質・メディウム]

調合画用液

加筆用ワニス(ルツーセ)

ルツーセ、ルワーセ、加筆修正用ワニス、Retouching varnish、Retoucher

コーパルワニス、スタンドオイル、ブラックオイルなど、強力な皮膜を作るメディウムで描いた層は、次の層を弾いて、うまく絵具をのせられないことがある。また、油絵具は乾燥するにしたがって少し艶が引き、艶の引いた画面と新たに加筆する絵具との間に、色の差が生じる。そのような場合に加筆用ワニス(ルツーセ)を塗布し、画面を濡らすことで作業をやりやすくすることができる。濡れた部分と乾いた部分の色の差というのは、油絵ではそれほど大きくないので大した問題ではないが、各層の食いつきを良くし、弾きを防ぐという意味での樹脂の役割はたいへん大きい。

ルツーセは、ダンマルなどの軟質の樹脂とテレピンで作ることが多い。保護ワニスで使うダンマルワニスよりもずっと薄いニスでよい。ルツーセの場合は、保護ニスのように完全に乾燥した画面に塗るわけではないので、その後の乾燥過程のためにワニス層に通気性をもたせなければならない。また、ダンマルのみの層ができると、絵画層の中に溶剤に溶解する層ができることになる。そのような意味で、もっとずっと薄い、ダンマル1に対しテレピン5〜6ぐらいが良いかと思う。

ルツーセの処方
ダンマルガム:1
テレピン  :5

メーカー製のものは合成樹脂とぺトロールによるものが多い。実は、私は市販のルツーセを使ったことがない。市販のダンマルワニス、または自分で溶解したダンマルワニスを、テレピンに少し加えて、それを薄く塗布するだけで、それまで弾いて描けなかった画面にも、何の問題もなく絵具がのるようになる。

保護用ワニス(タブロー)

保護用ワニスは、その名のとおり、完成した絵の画面を大気中のガスやチリなどから保護するためのニスである。同時に、艶の調整の役割も果たす。ニスの引き方によって、油絵具の美しさが最大限に引き出されることもあるので、あまり軽視せずに、樹脂の選択や、濃度、塗り方など、いろいろ試しておきたいところである。

保護ニスはそれ自身が汚れたり変色たら、新たに塗り直しができるように再溶解性のあるニスを使う。天然樹脂ではダンマル、マスチックなどが使われる。かつてはコーパルワニスが使われたこともあったらしいが、再溶解ができない点と、黄色い色が付くことで、今は使われていない。メーカー製のものは再溶解性のある合成樹脂とぺトロールによるものが多い。

保護ワニスの用途で使うダンマルワニスはダンマル1に対し、テレピン3〜4の割合で配合する。市販のダンマルワニス、タブローは、1:2の配合であることが多いので、少し薄めて塗布する。いっぺんに塗るよりも、薄めのニスを二回に分けて塗る方が自然な美しさがでる。

タブローの処方
ダンマルガム:1
テレピン  :3〜4

完成後、六ヶ月から一年かけて画面を完全に乾燥させたあとに塗布する。暖かい部屋でやる方が、ワニスがよく伸びて作業しやすいし、曇ったりする現象も起きにくい。画面をすこし太陽光に当てて暖めるとなお良い。つや消しの保護ニスを作るために、蜜蝋やシリカを加えることもある。ただし蜜蝋を入れたものは埃が付きやすい。

箔接着用メディウム

ジャパンゴールドサイズ、油性ゴールドサイズ、ミクスチョン、ミッショーネ、Japan Gold Size、Oil Gold Size

イコン画など中世のテンペラ画には、背景に金箔を貼っていたり、箔によって物体を表現してる箇所(黄金の冠など)がある。箔の接着方法としては水性のものと油性のものがあり、このメディウムは油性の接着剤である。箔を全体に貼るときは、手間がかかるが水性の方法の方が美しといわれる。油性の接着剤は、部分的に金模様を入れたいときに使用することが多い。金の模様や、聖人の後光、金の冠などを付けるときである。先にこのメディウムで箔をつける箇所を塗り、それが乾く直前に箔を貼って乾燥後に不要な部分を刷毛で取り除くのである。

市販されている金箔貼付用メディウムには様々なものがあるが、概ね乾性油コーパルなどの強い樹脂乾燥剤を加えたものが多い。ヨーロッパの画材店に行くと乾燥速度によって6時間、12時間、24時間など、名前に乾燥時間がついたものが売られている。日本ではジャパンゴールドサイズのみが手に入る。ホルベイン工業のジャパンゴールドサイズの組成はコーパル樹脂、スタンドオイル、ターペンタイン、シッカチーフと同社の『絵具の事典』に記載されている。


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