油彩による静物画作成の例を紹介します。フランスの著名な静物画作家、シャルダンの模写を行ないつつ、油彩の効率的な描写について考えてみます。
とくにシャルダンの技法を正確に再現しようとしたものではありません。美術館にゆくと、過去の巨匠たちが修行時代に行なった模写をいくつか見ることができますが、それらはかなり自由な解釈で模写されていることが多く、自分の技法に合った形で画家の中に取り入れられていく様子が伺えます。今回もそれに倣ってみようと思います。
合板に膠で麻布を貼り、鉛白とチタン白の混合による明るい白の下地を作りました。シャルダン自身は板ではなくキャンバスに描いていますが、油性地を使用したと聞きます。
イエローオーカーで全体に色を付ける。これにより画面全体に暖かさと統一感を与える。オーカーにも赤味のあるものからカラシ色のものまで、幅広い色味の顔料があります。市販のチューブ絵具では、個人的にミノーのオーカーが暖かい赤味を持っていて、好んで使っています。なお、清涼感や鋭さを出したければ、オーカーではなく灰色を引くのも良いかと思います。この絵具の層をインプリマトーラと言ったりします。素描のあとに行なうこともあれば、あとから素描することもあります。吸収性のあるキャンバスでは、この層によって吸収性の調節をしたりします。
アンバー系の絵具で下素描を行いました。シャルダンのような絵の場合、それほど細密な素描は要らないと思います。細部よりも、むしろ物の大きさや位置関係を入念にチェックした方が良いでしょう。
あまり下素描を意識せずに、バーントシエナなど、赤褐色で色をつけてました。物体の境界線の移行を自然にするため、線を跨ぐように塗っていきます。
バーントシエナ、オーカー、アンバーで明暗をつけてゆく。褐色など、単色で下地を作っていくことをカマイユと言います。白黒のモノクロームで描画するときはグリザイユなどと言ったりします。古典的な絵画ではこの違いは大きいが、シャルダンの当時の絵では、もはやこのような言葉はどうでもいいと思う。ちなみに、アンバーは多少ブリードする傾向があるらしく、この時点ではあまり多用すると、後から画面が暗くなると感じます。
菓子パンなど、量感を出したいところを、鉛白を使って盛り上げます。鉛白の盛り上げが確実に乾燥した後、このあとにグレースを行って色をつけてゆきます。
背景の固有色も塗っていく。この段階でのグレースには、鉛白を混ぜています。乾燥が速くなり、丈夫な皮膜になります。また、自然で柔らかな色調になります。
シャルダンはかなり遅筆であり、常に全体の色価を確かめながら、進めていったと聞きます。

あとはひたすら描画を続けます。概ね、シルバーホワイトを多く混ぜた被覆の色で描画し、それが乾燥した後に固有色のグレースをかけています。最後に染料系や合成顔料などの鮮やかな色をグレースします。
主に土製顔料を中心に描き込んでいますが、鉛白の盛り上げ、土製顔料のグレース等で、美しく輝く色合いを出すことが可能です。最後にほんの少し、有機顔料の色で部分的に描画、グレースします。
メディウムにはサンシックンドリンシードオイルと、生のリンシードオイルを基本に、樹脂、バルサムを多く含めたメディウムを使用しました。
最終更新日 2003年3月12日
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