このページでは、顔料と乾性油を練り合わせて、自ら油絵具を作る方法を紹介します。画材店にゆけば、豊富なブランドの市販絵具を購入することができますが、必ずしも自分に合ったものがあるとは限りません。現代の絵具は印象派風の表現を想定して作られていることが多く、クラシカルな絵を描こうと思ったときに、その特徴が弊害になることもあります。市販の絵具がすべて悪いというわけではありませんが、人それぞれに求めるものも違いますので、
以下のものを用意してください。
| 材料と道具 | |
|---|---|
| 材料 | 顔料、乾性油 |
| 道具 | 練り板(大理石パレット等)、練り棒、空のチューブ、 ペインティングナイフ、パテヘラ |
大理石パレットを在庫している店はあまりないので、購入する場合はメーカーのカタログを見ながら品物を注文することになると思います。国内で販売されているものでは、アルテージュが輸入販売している大理石パレットが無難な製品です。大きさ30×40cmで1万円程度の製品があり、これで十分かと思います。大理石板を持って帰るのは大変なので配送してもらいましょう。なお、インターネット通信販売を行なっているゆめ画材さんが、アルテージュの大理石パレットを扱っています。空の絵具チューブは、大きな画材店で購入可。
顔料は、国内の大手画材メーカーがそれぞれピグメント製品を出しているほか、海外の有名メーカー製品の一部が輸入販売されいます。インターネット上では俵屋工房が専門家向けの顔料を販売しています。
展色材は、生のリンシードオイル、重合油、自分で調合した樹脂入りのメディウムなどが選択肢となります。市販の絵具は長期の在庫を考慮して、生の油で練られていることが多いのですが、手練りならばサンシックンドなどの重合油で練ることもできます。樹脂などを含めたメディウムを作成する際はメディウムの作成も参考にしてみてください。
毒性のある顔料を使う際は、作業着、ビニール手袋、防塵マスクを着用してください。チューブ絵具を使っている分には手を洗えば充分ですが、粉末の顔料は空中に飛散するため、口鼻から吸い込みやすいので、気を付けてください。とくに子供、妊娠、体の弱い人は毒物の影響を受けやすいので、そのような方のいる家庭では細心の注意が必要です。粉末は衣類にも付着するので、アトリエ内では作業着を着用してください。カドミウム系、ヴァーミリオン、シルバーホワイトなどが毒性の強い顔料として挙げられます。他に関しては顔料一覧表を参照してください。
顔料を大理石パレット上に置きます。顔料の中央にくぼみを作って、そこに展色材を垂らし、パレットナイフ、またはパテヘラで混ぜ合わせます。このとき、顔料が飛散しやすいので、吸い込まないように気を付けてください。
パテヘラで、しっかり練り合わせます。大き目のステンレス製のヘラが便利です。展色材を加えすぎないように気をつけてください。少し足りないと思われるぐらいが適量です。この時点でテカテカとした艶があったり、軟らかかったりする場合は、油が多すぎるので顔料を足してください。
練り棒を使って練る前に、顔料と展色材の配合を完璧に調整する。ワックス、体質顔料など、添加物を加えたいときは、この時点で加えておきます。
練り棒を使って練り始めます。顔料を練る時間は、それぞれの顔料の特徴によって異なります。同じ色でも、粒子の大きさ等によって、長くかかることもあります。長く練るほどいいと言われていますが、鉛白、アンバーなど酸化の速い顔料はあまり長く練りすぎるのもよくありません。だいたい30分を目安に、練っている絵具をよく観察しながら判断してください。
展色材が顔料を満遍なく包み込むようになると、しだいに油絵具らしい艶が出てきます。
練り終わった絵具を、パレットナイフ等を使って空チューブに詰めます。空気が入らないように注意しながら、チューブのお尻を折りたたんでください。
チューブには、顔料名と展色材のレシピ、作成日時を記入したラベルを貼ってください。2〜3ヶ月の間チューブを開けずに保管しておくことによって、顔料と展色材がさらに馴染んでゆきます。チューブ内で余分が油分が絵具から分離してくることがあります。いったんチューブから出し、分離した絵具を取り除いて、かるく練り直す人もいます。
手練り絵具は、市販のチューブ絵具と比べると、長期保存に向いていない。練っている最中に多くの空気に触れ、それらの空気が抜かれずにチューブ詰めされるためである。特にサンシックドオイルのような乾燥の速い重合油を使用した場合、あるいはマンガンのような強力な乾燥剤として作用する成分が含まれる顔料(アンバー等)を使った場合は、あまり長い熟成期間を取れない。しかし、長期保存を考慮せねばならない市販絵具と違って、重合油などを自由に使える点が、手練り絵具の利点でもある。
手練り絵具と市販のチューブ絵具は、かなり性質に差があるもの、極端に言えば別物と言っていかもしれない。市販のチューブ絵具のように絵具が立たない。現在の市販絵具は印象派以降の技法を対象としているのか、キャンバスに置いた絵具は、立ち上がったまま垂れることがない。また、筆後がくっきり残る。手練り絵具は、作り方にもよるが、糸を引くような粘りがあり、画面上に厚く塗ると、垂れ下がってマチエールが消えてしまう。レンブラントの厚塗りも、たしかに非常に厚いものだが、微妙に柔らかなマチエールをしている。これは度重なる修復によって角が削られているということもあるが、その点を差し引いても、現代の絵具で行なった厚塗りとはだいぶ違う。
練り棒はさまざまな素材、形状のものが使われる。練り板と同じ素材ものならば硬度も同じなので、一方が削られたりすることは少ないが、自分用の絵具を作るだけならそれほど気にしなくてもよいと思う。体重をかけやすい形状のものが、比較的楽に練ることができる。Reed Kayの技法書には、力を入れずに練り棒の重みを利用するよう指示されているが、掲載されている写真のガラス練り棒はかなり大きめである。
ホルベイン工業「ホルベイン専門家用顔料とその素材」
最終更新日 2003年3月11日
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