鉛白、フレークホワイト、クレムニッツホワイトとも言う。油彩技法で古くから使われてきた白であり、19世紀に亜鉛華が登場するまでは、事実上油彩で使用できる唯一の白だった。
鉛白の製法は、古代ローマ時代に書かれた『プリニウスの博物』にも紹介されている。鉛の板を酢酸の蒸気に晒すと、鉛板上に白いものが吹き出すので、それを掻き集めて顔料にする。プリニウスが紹介している方法は、 鉛白の製造方法には鉛板と酢酸の蒸気によって作る方法と、 19世紀以降、沈降法や昇華法による製造法が開発されたが、それらによって作られた顔料は、昔の方法で作ったものより劣るものとされている。
鉛には乾燥剤の働きがある。鉛の場合、マンガンのように酸素誘導の働きをするというよりは、重合の課程を促進させる働きがあるようで、絵具層の表面だけではなく内部からもしっかりと乾燥する。顔料粒子が大きく展色材が少なくてすむことや、顔料の形状なども、画面の堅牢性を高めるのに役立っている。鉛白を混ぜた絵具も乾燥が速くなる。グレース技法などで、透層の絵具にほんの少し混ぜると、色に実体が出るとともに、乾燥も速く堅牢になる。
鉛系顔料は、硫黄系の顔料と反応して、黒変することがある。バーミリオンやカドミウム、ウルトラマリンなどの硫黄系の顔料とは混色制限がある。正確には、黒変の原因となるのは、顔料精製時に残る微量の遊離硫黄であり、現代の精製方法では変色はまず起こらないという。しかし混色以外にも大気中の硫黄ガスと反応して黒変することがある。これは画面が完全に乾性した後(1年程度)に、保護ワニスを塗って防ぐ。
上記の大気中の硫黄ガスによる黒変と、アルカリに弱いことから、フレスコ画(ブオン・フレスコ技法)には向かない顔料とされている。チェンニーニもフレスコ画には使用してならないと書いている。実際にはフレスコ画に使用している例は多く、必ず黒変するというわけではないが、一部はかなり黒ずんでいる。
英語表記:Titanium White。チタニウムホワイトが絵画に使用されるようになったのは、20世紀以降であり、初期のものではチョーク化などの現象がよく起こった。現在は改善されて、安定した顔料として広く使われている。チタニウムホワイトは、各種メディウムに対しての化学反応が少ない。鉛白や亜鉛華の場合は、乾性油と反応して、良かれ悪しかれ、何らかの作用を起こすが、チタニウムホワイトはほとんど乾性油に対して不活性のようだ。鉛白のように乾燥を早めたりする作用もなければ、亜鉛華のように後日剥離したりするような危険もない。油絵は、下地が有色の場合、程度の差こそあれ、鉛白など金属系顔料の透明化によって、長い年月を経ると画面が暗くなってゆくが、おそらくチタン白はこの傾向が小さいかまたはないと思われる。
着色力が白絵具の中で最大であり、パレット上で他の色と混色しようとすると、少量で相手の色を食ってしまう。また、チタン白で描かれた絵に、昔の油絵のような深い色味がないという人は多い。チタン白の活用方法として、鉛白と混合して、お互いの欠点を補うことが考えられる。この場合、内部からしっかりと乾燥し、経年でも色の失われず、かつ色味の豊かな白が得られる。地塗り塗料の発色材としても活用できる。油性の地塗りでは、前述のように鉛白と混同して使用すると良い。
現代的な表現技法、あるいは印象派のような厚塗りを行う場合は、一部のメーカーからアルキド樹脂の入った速乾性のチタニウムホワイトが売られている。アルキド樹脂が含まれることによって、乾燥速度の遅さが改善され、乾燥後の被膜強度も高くなる(5、6時間で完成させねばならない美大受験の実技試験では、このアルキド樹脂入りのチタニウムホワイトが一番適しているかもしれない)。
日本のメーカーが販売してる市販のチューブ絵具では、チタン白の着色力を抑えたものがパーマネントホワイトの名称で売られている。ホルベインの「WHITE NOTE」によると、「チタン白の粒径を小さくすることで隠ぺい力や着色力をを低下させ、使いやすいものとしたのがパーマネントホワイトである」とある。しかし、体質顔料を混ぜることによって着色力、隠ぺい力を押さえているメーカーもあるようだ。
別称:亜鉛華、チャイニーズホワイト、英語表記:Zinc White。19世紀に絵画用に使用されるようになった。W&Nが1934年に水彩絵具として販売を開始し、数年後に油絵具としても使用されるようになった。それまで、油彩で使用できる白は鉛白のみであったが、亜鉛華は毒性のない白として広く普及した。顔料粒子は鉛白より細かく、絵具化の際に展色材を少し多めに必要とする。乾燥は鉛白より若干遅い。着色力が小さく、透明度が高いので、混色したときに美しい色になる。メーカー製の絵具でも、混色によって作られた色には亜鉛華が使われていることが多い。
しかし、亜鉛華は乾性油との反応で、剥離や亀裂を引き起こす。油絵具として使用するときは、最上層の仕上げに限って使用するとよい。下層に使用すると、上に塗った絵具が剥離する。油性地塗りには全く向いていない。もともと透明度の高い白であるが、経年により透明化する傾向がある。被覆する用途ではチタン白などを使った方がよい。また、チョーキング現象も起こるようだ。鉛白と混合することで、欠点を補う方法がよく紹介されるが、効果があるかどうかわからない。
水彩絵具としては、チャイニーズホワイトの名前で販売されている。水性の媒材ではとくに問題はなく、地塗り用途でも、色材としても利用価値がある。
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