アルベルトゥス・マグヌスの鉱物論
沓掛俊夫(翻訳),アルベルトゥス・マグヌス(著)『鉱物論』を読みました。

薔薇の名前に関する動画を収録しているうちになんとなく気になって買ってみた次第です。映画とはあまり関係ありませんが。アルベルトゥス・マグヌスは中世神学の頂上トマス・アクィナスの師であり、西洋へのアリストテレス学問の導入に積極的だった人物で、後の影響は多大と言えるでしょう。「・・・ロジャー・ベーコンとともに実験科学の創始者の一人ともみなされている・・・」とありますが、ある程度、観察や実験に取り組んだようです。観察と実験の精神はいまいち後世に引き継がれなかったようですが、いかほどのものか気になるところです。というわけで、読んでみましたが、石や宝石について説明はかなり斜めに飛ばしながら読んでしまいました。述べられている説が現代の常識からはかけ離れているので、付き合っていくのが大変なのですが、古代からアラビアの自然学などを踏まえた内容なので、そういう意味ではしっかり読むべきなのかもしれませんが、今はいいかなと。医学的な関心が高いようで、宝石のパワーについて延々と述べられており、やはりこれが中世の医学かという感じです。それもまた重要ではあると思いますが、大半は飛ばしてしまいました。というわけで、絵画材料的に注目すべきは金属について述べられた章だと思います。鉛を強い酢の上記にあてて鉛白ができることや、それを焼くと赤くなったり、黄色くなったりなど、そういう具体的なこともさらっと書かれてあります。要注目と言えましょう。大半はたぶん古代の書からの引用で、実際どこまで追試したかはわかりません。ウィトルウィスやテオフィルスの場合は技能書なので、手順が克明に書かれていますが、こちらは事典的な記述ではあります。そして、そのあとに、その変化が起こる原因を理論的に、科学的に説明するわけですが、そこがなかなか難物です。この本の説明では、金属は基本的に硫黄と水銀からなっており、その比率によって鉛とか鉄とか銅、金などの金属になるという理論です。現代ではそれぞれの元素だというのを知ってますが、そういう知識がなければ意外とそうかもなという感じに妙に説得力があります。そのような説明が続くので、やはりどうしても違和感を感じずにはいられないのですが、そのように本気で考えていたのだという点は重要かと思います。テオフィルスなどの技法書は変化の理由まで書かれておらず、ただ使用方法を述べているから、その違和感がないだけかもしれません。テオフィルスの技能書の方はこれより百年くらい前に書かれたかと思いますが、あちらは材料をかなり正確に把握しており、記述の通りに試すとだいたい上手くいこともあって、かなり科学的に正確な書だという印象があるのですが、それはただの錯覚かもしれません。私はテオフィルスやチェンニーニ、あるいはずっと昔のウィトルウィウスの書を非常に信頼しており、具体的で実践的だと常々感心しておりますが、その具体的な記述の後に、古代~中世に常識だったその原理の説明があったら、やはりちょっとした不信感は感じずにおれなかったでしょう。ちなみに、宝石の章でも、ラピスラズリの解説もあったりして(インドから来るってありましたが、フランスでも採れるとか。たぶん、アズライト等との混同もあるでしょう)、よく読んだら、金属の章以外もきっと(絵画材料的に)重要なところがいろいろあると思います。いずれにしても、このような本の日本語訳があるというのがすごいですね。

| 書籍・雑誌・漫画・アニメ | 11:30 PM | comments (0) | trackback (0) |










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