牛皮(ローハイド)で、膠づくりをしてみた。
伝統的というか手工業的な製法の膠を「和膠」、工業的な製法のものを「洋膠」というらしいけれども、和膠作りは部落産業だったようで、下記のような論文が閲覧できます。
http://blhrri.org/info/book_guide/kiyou/ronbun/kiyou_0154-04.pdf

東北生まれの私には「部落」という言葉は、「集落」ぐらいの意味しかなかったため、その辺の事情に関して理解は難しいのですが、手工業的な膠作りの具体的な方法が記述されている例が、日本語ではわりと少ないような気がするのは、そのような面もあるんでしょうか。

日本画の材料に関する本では、職人がこんな感じで作っていますという記述はたたみかけるけど、自分でふつうに膠ができますよ的なものは少ないかと。
英語で検索すると、わりと簡単にさらっと、作り方の記述が多数見つかったりするんですけどね。
どっかのおっさんが膠を作ってみた的な動画も見付けたりしました。
http://www.youtube.com/watch?v=vjBT7WOAuLE

先史時代から膠は壁画などに使われていたでしょうけど、何かの動物の骨とか皮とかあれば、膠を準備できたであろうなぁ、と考えると、まぁ、もっと簡単に考えていいような気がしないでもない。

で、私は最初テオフィルスの技能書で膠作りの記述を発見し、これならわりと簡単にできそうだと思ったわけです。

--引用開始--
生皮および牡鹿の角の膠について
これが注意深く乾かされたならば、同じ生皮の同様に乾かされた切片をとり、こまかく刻め。そして鍛工の鎚で鉄床の上でこなごなに砕かれた牡鹿の角をとり、新しい壺の中にその半ばになるまで(刻んだ生皮と)配合し、それを水で満たせ。こうして、しかし少なくとも沸騰しないようにしながら、その水の三分の一が煮つめられるまで、火にかけよ。そして汝は次のように試せ。即ち汝の指をこの水で濡らし、指が冷えた時、もし粘着するならば、膠はよい。しかしもしそうでなければ、〔指が〕互いに粘着するまで煮よ。その上でこの膠をきれいな容器に注ぎ、そして再び壺に水を満たして前のように煮よ。このように汝は四度まで続けよ。『さまざまの技能について』中央公論美術出版より
--引用終わり--

この例では牡鹿の角を使っており、替わりに羊角なんぞを入手してみたりとかしてたんだけど、それについては後日機会があったら述べるとして、まぁ、膠って言えば、真っ先に思いつくのは家畜の皮じゃないすかね。
皮というのは、放っておくとガチガチに固くなってしまうので、タンニンやその他の薬品で「鞣し」という加工を行ない、それによって、いつまでも柔軟性のある「革(レザー)」というものになるわけで、その革は各種革製品になっていたり、クラフト店で素材用の革として売られているので、どこでも買えるけど、膠作りに使うのは革じゃなくて、生皮、いわゆるローハイドでしょうなぁ。まぁ、鞣してあっても使えるかもしれないけど、着色されたりいろいろ加工されているでしょうから。
ちなみに、チェンニーニには、羊皮紙の切片なんかを使ってた方法が載ってような記憶があるけど、現代のアトリエで羊皮紙の切片が発生するような状況はほとんどないと思われるので、却下ですかね。

で、革じゃなくて、生皮というのは、いざ買おうと思うと、意外と売ってないもんでして、太鼓用の皮とか買おうかと思ったけど、けっこうな値段がするので、私のテキトー実験にはもったいない。とか思っていたら、近所のホームセンターのペット用品コーナーで、犬用おやつの牛皮(ローハイド)が売っていたのを発見。さらに、牛の蹄とか、その他家畜の耳やらアキレス腱やら、膠の素材にできそうなものがいろいろ売っておりました。

とりあえず、牛皮を骨の形に縛ったものと、牛の蹄を買ってきた。
膠づくり

で、しばし水に浸けて柔軟にさせる。
膠づくり
この時点で、牛の蹄は、ハサミで切るなどして、細かくしておけばよかった。

膠は、沸騰させてもいけないし、0度以下にしてもいけない、ということで、微妙な温度の熱水で抽出するのだけど、グリル鍋の「保温」モードで温め続けてみることに。ツインバード製のかなり使い古したグリル鍋であるが、「保温」にしておくと、中の水の温度はおおよそ80度前後を維持していた。ちょうど良い。
膠づくり

それにしても、臭い。ものすごく、臭い。
いろいろ臭い材料で実験を繰り返してきたけれども、これほど臭いものは初めてである。

というわけで、鍋を室外に出して、それを窓から眺める。
膠づくり
数時間経って、牛皮はすっかりとろけてしまった。
これ、ゼラチンで作ったまがい物皮ということはないですよね。
なお、後々確認したら、水じゃなくて、石灰水って書いてある文献が多かった。

水がだいぶ減ってきたところで、ガーゼで濾しつつ、
膠づくり

タッパに入れる。
膠づくり
この状態で乾燥を待てば、板膠みたいになるんじゃなかろうかと。
なお、濃い膠液であるが、水分の量が多いので、乾燥時にはこの状態よりかなり薄い板になるであろう。

↓その後、2日経って、だいぶ乾燥が進んだけど、まだ、やわらかい。
膠づくり

というわけで、すっかり乾燥したら、また画像を挙げてみたい。
もちろん、現段階では膠として機能するかどうかも、まだ未検証です。

膠作りに詳しい方がいらっしゃいましたら、些細な情報でもいいので、コメント欄にご投稿ください。


■2011/05/14追記
その後、2週間ほど経ちましたが、無事乾燥した模様で、ばっちり固くなっております。
膠づくり
予想していたより肉厚の板になったので、少々使い勝手が悪いかも。次回はもうちょっと薄い板になるようにしたいところ。それと、ご投稿頂いたコメントのように、網やザルに移して上下満遍なく乾燥を進ませれば、もっと平らな板になったのかと。以上が反省点。

色は三千本より濃いめのようだけれども、石灰等での処理をしてないからか。三千本以外の膠ではこのような色はわりとよく見られるので、本来このような色なのかもしれない。原材料の皮はどちらかというと白に近いものだったのが、膠にしたときに、このような色になるというのは興味深い。さて、実際にこの膠を使用してこそ、全行工程が無事済んだことになると思うのだけど、これをすぐに湯で溶かして使うというのもどうかと思うので、一年以上、そのまま在庫した上で、その後、実際に使ってみようかと思うところです。

| 絵画材料 | 09:28 PM | comments (2) | trackback (0) |
凄いことなさいますね。型に入れて2日も置いててよく腐りませんでしたね。
以前、トタン膠の語源を探していた時に、膠の製造法の記述を見たのですが、とりあえず、防腐剤は入れておいた方が良いと思います。
ちなみに、トタン膠では「沸騰させたミョウバン水100gに硫酸亜鉛を25gを溶解させて、防腐剤にする」と書いていました。
-------------(以上、とある技術者)----------------

型に入れて寒いところに置くとまもなくプリンになるでしょう。その段階で取り出すのです。それを金網とかザルの上に放置して乾かすのです。つまり「寒ざらし」です。温度が高いと溶けてしまう為、冬場に製造されて来ました。
-------------(以上、さる技術者)----------------
| 「さる技術者」+「とある技術者」 | EMAIL | URL | 2011/05/06 04:04 PM | t90lAIa6 |

とある技術者様、さる技術者様、コメントありがとうございます。

本文では書き漏らしていましたが、タッパに移す前に、ホルベインの防腐剤を数滴垂らしておりました。おまじない程度の量でしたが、今のところは効いているようです。「沸騰させたミョウバン水100gに硫酸亜鉛を25gを溶解させて、防腐剤にする」も試してみたいと思います。

乾燥させる際、タッパに入れたままでしたので、片方だけ先に乾いて、曲がった膠になってしまいましたが、ゼリーになった段階で網などに移すとよっかんですね。

現状は、表面は乾燥しているのですが、乾燥した膠の膜ができており、内部の乾燥を遅らせているようです。気温の高くなる日中は、内部が液状化します。やはりもうちょっと寒い時期にやる方がよろしいのでしょう。羊の角の膠も作ろうと思って、あとは煮るだけの状態まで下準備していたのですが、冬になってから決行したいと思います。

他にも何かありましたら、よろしくお願い致します。

余談ですが、先日、ふぐ料理(養殖)を食べたのですが、ふぐの皮はほとんどゼラチン質で、熱湯に入れると十数秒で溶けてしまうんですね。
| 管理人 | EMAIL | URL | 2011/05/07 12:53 PM | 6s1eAgnk |











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