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用語、翻訳


管理人 さんのコメント
 (2002/10/25 04:34:02)

画材の輸出入と、美術書の翻訳に関するスレッドです。

個人輸入から、商業輸出入、海外メーカーの販売代行業者に関する話題。技法書や画材パンフレット、論文などの、翻訳上の話題など、どうぞ。


古書の入手、その他について

miyabyo さんのコメント
 (2002/10/25 08:20:28 -
E-Mail)

知人からメールがありました。管理人さんが質問してるみたいだよ、と。
スレッドが増えていてどこにしようかと思ったのですが、ここを選びました。

これと言ったコネクションのない者にとって、文献のアンテナの張り方は重要だと、常々自分に言い聞かせています。間違った方向に張ってしまうと、簡単に得られることもそのままになってしまうし、つまらない時間を浪費してしまいます。

インターネットのない頃の文献入手事情と比較すると雲泥の差です。今は、広く、安く、早く入手できます。

つたない私の経験ですが、古書の入手方法を思いつくまま、多少の文献も紹介しながら以下記します。

●Kay, Reed, “The Painter’s Guide to Studio Methods and Materials”, Prentice-hall, INC., Engelwwood Cliffs, New Jersey, 1983.  原題The Painter’s Companion (1962)を増補改訂の際改題したもの。
このリード・ケイの書籍は、管理人さんが紹介されているリンク集の「Note Book」で、ほんの一部ですが、見ることができます。

例えば、Note Book の 「Materials & Method」の「Support & Ground」にある「Wood Panel」や「Ground for Flexible Support」など。


  ※ 古書などの入手方法について ※

1.一般的な古書の入手には、

  ABE BROWSE BOOKS http://dogbert.abebooks.com/abe/book )

  が、便利でしょう。基本は VISA, MasterCard などのカードによる決済ですが、為替振込みもメールでやり取りすれば可能な店もあります。


2.機関誌やその他のメディアに記載の論文、あるいは、特定の一部が必要な場合は、

  丸善や紀伊國屋のホームページ経由で依頼し(書店でも受け付けています)、

  アメリカやイギリスの提携図書館よりコピーにて入手(ものにより不可の場合あり)。


3.技法を記した手稿本などの稀覯本や高価な古書を含む検索は、

カナダのトロント大学図書館が便利です。この大学には、900万タイトルもの蔵書がデータベース化されており、個人でも次のところで自由に検索できます。

 http://utcat.library.utoronto.ca:8002/db/MARION/search.html 

また、この大学では、《絶版であることを前提》に、古書のバックインプリント・サービス(個人向け復刻版)を受け入れています(当然ながらカナダ・トロント大学図書館所蔵分が対象で、復刻に伴う版権などの処理もすべて先方でやってくれます)。丸善がその代理店になっています。
詳細は、丸善(株)企画開発センター営業推進部バックインプリント・サービスに問い合わせてください(電話:03-3275-8584)。

私のここ数年入手したUsed Bookは、もっぱら以上の3方法のいずれかによっています。
新刊書は、和・洋書とも、Amazon. com、丸善、紀伊國屋、を利用し、一部の専門洋書・機関誌は海外出版貿易(株)(最近部門縮小しています。以前は研究者特典の割引がありましたが)を利用。

●日本の書籍や邦訳本の古書は、加盟店の多い

 http://www.murasakishikibu.co.jp/oldbook/index.html  紫式部

 http://www.kosho.or.jp/  日本の古本屋


 以下は付録です。

 ※ 古書買いの記‥‥? ※

1.『ド・マイエルン手稿』(1620-1646年の日付がある)の書き出しに、

《絵画に関する書物を探さねばならない。フィレンツェのラファエル・ボルギーニが著した『休暇荘』 Quaeratur liber tractans de Pictura, cuj titulus ast. Il riposo di Raphael Borghini fiorentino.》

とあって、かって探した時の古書価格は、約45万円で手が出ませんでした。この書は1584年初版で、当時マイエルン(1573-1655年)が閲覧した可能性の高い、

 1.『絵画芸術論』ジャン・パオロ・ロマッツォ(Giovanni Paolo Lomazzo)1584年
   (マンネリズム時代のイコノロジー、意匠を知るうえで重要。ミラノで1584年に出版されて、4年後の1598年に早速英訳されている。)

 2.『絵画真範』ジョヴァンニ・バティスタ・アルメニーニ(1587)
   英訳版が1977年に出ている。

も含めて、概要を知っておく必要があったのです。
ここ10年ほど半ば諦めていた書が、トロント大学の方で調べると1964年に注釈付で復刻されているのがわかり、バックインプリント・サービスを受けることにしました(ちなみに、インターネットでは注釈無しの1730〜87年の復刻版が数冊出ていて、19万円前後でしたから)。

 バックインプリント・サービスの料金体系は、100頁未満が16,500円。以降50頁ごとに2,250円で、請求は64,500円でした(2001年1月現)。

日頃は一冊$10〜200(郵送料として$5〜20を含む)の購入が多いので、とんでもない出費でしたが、この書に関しては、安くすんだと思っています。


2.『デ・アルテ・イルミナンディ(写本装飾)』著者不詳14世紀 通称『ナポリ手稿』
 Brunello, Franco ,“De arte illuminandi e altri trattati sulla tecnica della miniatura medievale”, Vicenza(1975), Neri Pozza 2nd ed. , 1992 
 Salazaro, D. がナポリで1877年に刊行したものの復刻及び注釈。
 この書は、卵白及び、アラビアガムによる彩飾技法の書。ナポリ図書館にある写本が唯一で、そのため『ナポリ手稿』の通称がある。昔日の技法書が、処方の寄せ集めが多い中、修道士テオフィルスやチェンニーニの書と同様に、体裁は計画的体系的構成を有す。
 芸大でも授業で使われている“The Practice of Tempera Painting”の著者D.V.トンプソンが英訳した

●“De Arte Illuminandi, translated from the Latin of Naples MS. XII. E. 27”, Yale Univewrsity Press, 1933. 

 を持っていたものの、原文がなく、ラテン語の原文とイタリア語の対訳になっているこの書と比較したいと思ったのでした。

 この書がpaperbackで、$10で入手できるというので、イタリアの古書店に注文。ところが、通常の2ヶ月経過時点でも到着せず、これからが大変。先方とメールのやり取りをするのですが、「たしかに送ったからもう少し待て」という。それでも、3ヶ月目で先方も諦めて、「もう一度送る」と言う。ところがこれも届かない。「2度も続けて届かないのは信じがたい」と先方。
私は奥の手を使って、

 「私は、年に30冊以上様々な国から古書を購入しているが、こんなことは初めてだ。イタリアに頼んだのは今回が初めてだが、日本にすら届いていないのだから、イタリア国内の問題だ。イタリアがいい加減な国だとは信じたくない。」
すると、「わかった、3度目はしっかり届くように、保険付で送る。」
無事に、最初の発注から7ヶ月目でやっと届きました。先方は大損です! 


●買い方の初歩。
 1.著者名や、アバウトな書名で検索し、目当てのタイトルがヒットしたら、そのタイトルで再検索します。
 2.何十件もヒットする場合は、とにかく安い価格のものをどんどんバスケットに入れていきます。

 3.次にバスケットの中でhardback・dust jacket・paperbackの違いや本の汚れ具合などと、価格とを比較して絞り込みます。

 同じ書籍でも価格が2倍以上違う場合もありますので、比較検討は馬鹿になりません。


●本の価格と送料を見比べて悩む?
Wallach, Ira,“Horn and Roses”, Boni & Gaer, 1947.
 この本なんだと思います? 実は、リューベンスの生涯をベースにした小説。
 価格は$5.99 で、送料が$6.65
 送料の方が高いという例です。


※ お薦めの文献 第2弾 ※

●Bomford, D. / Dunkerton, J. / Gordon, D. / Roy, A. ,“Art in Making Italian Painting before 1400”, National Garelly, London, 1989
 このカタログは、ロンドン・ナショナルギャラリーで1989年11月29日〜1990年2月28日の期間行われた展覧会に向けて出版されたもの。単なる図録集に終わらず、当時の画家がどのような画材を使い、どのように描いたかを理解しやすいように配慮されたカタログ。
 1300年代のイタリア絵画制作過程を知る上で非常に有益。特に、「序章」(pp. 1-52)では、チェンニーノ・チェンニーニの「絵画術の書」や、修復過程で調査された資料をもとに制作過程を図版入りでデモンストレーションしてある。


●Campbell, L. / Foister, S. / Roy, A.,“The Methods and Materials of Northern European Painting 1400-1550”, National Gallery Technical Bulletin, vol. 18, pp. 6-55, 1997 
 『北方絵画の方法と材料1400-1500年』北方絵画を技法的側面から知る上で重要論文!


  ※ 顔料の基本文献 ※

 顔料に関して、ホルベインさんが出している3冊の本、及び、ゲッテンス/スタウトの『絵画材料事典』以上のことを知りたい方、又は、それぞれの顔料の来歴や使用例に興味のある方。

 この“Artists’ Pigments”シリーズは、現在3巻あり、4巻目が予告されているがまだ出ていないようです。

●Feller, R. L.(editor),“Artists’ Pigments ―A Handbook of their History and Characteristics― Vol.1”, Cambridge University Press (1986)
 対象顔料:インド黄、コバルト黄(オーレオリン)、硫酸バリウム(天然と人工)、カドミウム、黄/オレンジ/赤、鉛丹(ミニウム)、テル・ヴェルト、ジンク白、クローム黄と他のクローム系顔料、アンチモン酸鉛黄(ナポリ黄)、カーマイン

●Roy, Ashok.(editor),“Artists’ Pigments ―A Handbook of their History and Characteristics― Vol.2”, National Gallery of Art, Oxford University Press (1993)
 ここに挙げられている9顔料は、Studies in Conservation誌上で1966年〜1974年間に発表された論文で構成されている。アズライトと青緑青、ウルトラマリン青(天然と人工)、鉛白、鉛―錫―黄、スマルト、ヴェルデグリと樹脂酸銅、ヴァーミリオンとシナバー、マラカイト(岩緑青)と緑緑青、炭酸カルシウム白。

●FitzHugh, Elisabeth West(editor),“Artists’ Pigments ―A Handbook of their History and Characteristics― Vol.3”, National Gallery of Art, Oxford University Press(1997)
 対象顔料:エジプト青、オーピメントと鶏冠石、インディゴと大青、マダーとアリザリン、ガンボージ、ヴァンダイク・ブラウン、プルーシャン青、エメラルド緑とScheele’s Green、カドミウム緑、チタミウム白

●FitzHugh, Elisabeth West(editor),“Artists’ Pigments ―A Handbook of their History and Char acteristics― Vol.4”, National Gallery of Art, Oxford University Press (予定)
 予告 煤系黒、コバルト青とセルリアン青、土系顔料、ハンザ黄、有機系褐色、他


  ※ ワニスの文献 ※

●Feller, R. L. , Stolow, N. , Jones, E. H. ,“On Picture Varnishes and Their Solvents”, revised & enlarged edition, National Gallery of Art, Washington DC, 1985
 『絵画用ワニスとその溶剤について』ワニスに関する基本書。 ダンマル樹脂ワニスの新しい情報に関しては、以下のRené de la Rie, E(文字化けするかな?レネ・ド・ラ・リー)の一連の論文を参照。

●René de la Rie, E.,“Fluorescence of Paint and Varnish Layer (part 1. 2. 3.)”, Studies in Conservation, vol.27, pp.1-7, 65-69, 102-108, 1982

●René de la Rie, E.,“The Infuluence of Varnishes on the Appearance of Paintings”, Studies in Conservation, vol.32, pp.1-13, 1987
 『絵画の見えに与えるワニスの影響』ワニスの歴史的経緯と現代ワニスについて要領よく述べた論文。

●René de la Rie, E.,“Photochemical and Thermal Degradation of Films of Dammar Resin”, Studies in Conservation, vol.33, pp.53-70, 1988

●René de la Rie, E.,“An Evaluation of Irganox 565 as a Stabilizer for Dammar Picture Varnishes”, Studies in Conservation, vol.33, pp.109-114, 1988

●René de la Rie, E. / McGlinchey, C. W. ,“Stabilized Dammar Varnish”, Studies in Conservation, vol.34, pp.137-146, 1989


  ※ 下地の実践 ※

 肩越しに、下地作りを覗きたい方
●志村正治『基底材』志村氏による基底材作りの実践ビデオ70分 和蘭画房1980年代?
 志村氏の関西弁の語りもなかなか笑ってしまうが、手先の作業はいたって堅実!?
 「修復家の集い」のHPで呼びかければ、入手できるかも。


  ※ 蛇足 看過できないこと ※

「ラピスラズリ」の項
《きわめて古くから尊重されてきた宝石で,その利用は前3000年のエジプトにさかのぼることができる。青金石ともいう。青色の宝石としてトルコ石とともに金製品によくマッチする点が,人類の歴史とともに長く愛好されてきた原因である。ラピスラズリはペルシア語の紺碧色を意味する l´zhwardに,ラテン語で石を意味する lapis をつけたもの。日本でも瑠璃(るり)と称して七宝の一つに数えられ,また〈群青(ぐんじよう)〉と呼ぶ青色の岩絵具として昔から用いられていた。    近山 晶》 日立デジタル平凡社『世界百科事典』

同様の間違いは、村瀬雅夫著『美の工房』日貿出版社(昭和63年)100頁、更に宝石関連書籍の一部などに見られます。最近は、「ラピスラズリ」を冠するHPにもかなり怪しい記述があります。

 当然、日本画に使用されている天然青顔料は、アズライト(藍銅鉱 和名:岩紺青)であって、ラピス・ラズリではありません。日本では、ラピス・ラズリを顔料として使用した例は皆無です。正倉院には当時の身分を表わす石帯(ラピス・ラズリの原石を薄い立方体に加工した石板が、皮製ベルトの周りに金具で止めてある)がありますが、装身具の一部。また、江戸末期の壁面彩色にウルトラマリンが使用されていますが、これはフランスで1830年には普及していた人工ウルトラマリンです。
 なお、誤解された要因は、アズライトの古称の「金青、紺青」が、江戸中期頃から「群青」とも呼ばれたこと、洋画の方でウルトラマリンに相当する訳語がなく、「群青」の字をあててしまったことによります(中村彝訳の『芸術の書』も)。

さらに、TDKのホームページの「コーヒー・ブレイク」にツタンカーメンの頭巾にあたる部分の「ストライプ」状の青は、ラピス・ラズリだと説明してありますが、とんでもない。そこは青色のガラスで、ラピス・ラズリが使ってあるのは、眉、目の周り、それと放射状の胸飾りの部分なのです。

それもこれも、この顔料体験が、過去も現在も日本人にはないことによるのです。

鉱物顔料を現在も使っている日本の画家の一部(通称:日本画画家)の方は、現在では世界的に本当に稀有な美術家なのです。どうせならば、高価だと言われるアズライトとわず、西洋では廃れたラピス・ラズリを日本で復活して使ってもらいたいものです。ぜひ。
ちなみに、西洋でのかっての価格を大雑把に適用すると、ラピス・ラズリはアズライトのほぼ10倍の値段になりますが‥‥‥‥。

付録が長くなってしまいました。2・3回分のレスと思って許してください。では。
 


bonapa さんのコメント
 (2002/10/26 00:01:06)

miyabiyoさん、これまた圧巻でござる。

私も翻訳しつつちょびちょびと自分の興味に任せて原書を読むのは好きですが、それもおっしゃるとおりインターネットの発達によって本当により便利になったと思います。
といっても私は古書はあまり探した事はないですけど。
http://www.alapage.com が送料も安くて比較的早く届くかなと思います、一応「d'ocassion」もありますが、あまり古い物はないです。

古書の価格については、何か良くわからなくて実は「交渉しだいなのかなぁ?」とおもうことがあります。 日本の古本屋さんでも怖そうな主人のいるところなどはこちらが店にはいっても「無視」

「あんたは買わない(買えない)顔」と見透かされているのかも知れないです。

ラピスラズリの話面白いですね。
確かに日本に無いからわからない。
事は沢山ありますね。

「土」と言われても日本人の思う土とイタリア人の思う土は違うわけで、習慣として物に対して盛っている映像と呼称が不一致すると思わぬことがおきたりします。

「復讐するは我にあり」という映画をフランスで見たときに、吉行和子が貧しいつらい生活の演出の中で「私の手、大根がひび割れたみたいにあかぎれでわれているから、かさかさして痛くない?」

と、いいながら三國連太郎の背中を流すシーンは本来ジーンとくる場面だったのですが、「大根」が「radis」と訳されていて、(日本でいう赤い二十日大根のようなながさ3センチほどのもの)観ていた観客はみんな赤い大根が5本並んでいる指を想像したらしく大笑いしてました。
ま、映画の字幕はスペースや時間との制約があるので仕方ないのでしょうが。

脱線しました。


美術書の翻訳についても原語の意味の取り上げかたによっては「あら、これは全然意味がちがう」と思うものが多々あります。

Huile,Essence, Huile essntiellとか訳し分ける際にはきちんと訳注をつけ読者に明確にしたほうがいいのではないだろうか?

美術書の翻訳では良く知られている人の翻訳のなかでも、この3つのものについての訳し分けが明確にはされていない。
訳注がついているものの、それはこの3つのカテゴリーを説明している物とはなっていない。

私が想像した限りでは、そのときに訳者が「エッセンシャルオイル」という日本語を思いつかなかったのかもしれないか、もしくはそれを知らなかったのかもしれないと想像した。

ジャン・リュデルの「絵画の技法」のなかで「精油」(あるいはエッサンス)  マンネンロウ、ラヴェンダー、アスピック、、、、

というくだりがあり、これは明らかに「l'huile essentielleをさしている物であるので、そのことを明確にしたほうが良かったと思う。
と、いうのも、中世の技法、フランドル、オランダ、ドイツ、フランスなどの技法で「メデイウム」がそれぞれの作家のなかで重要な役割を持っていたことは明らかで、そしてそれぞれの内容を
現在辿って見たい人が多いはずである。

その場合「エッサンスにラヴェンダーを3滴入れ、、」という記述があったとする、その時訳者は著者が本全体のなかで一貫して「エッサンス」と記述している部分は「l'essense de therebantine」テレピン油と日本語にして良いとおもわれたら、それを訳注へ残すべきだし、「ラヴェンダー」とでていたら、「l'huile essentielle」であっても、ラヴェンダーの種類は10種類以上ある事、それぞれ異なる分子構造をもち、違う作用をする事、従って、同じようなレシピを試して見る場合には、その作家の背景から近いと思われるものを選ぶのが良い。

ということも書いてあげるほうがいいのではないか?と思う、おそらく「それはかいしゃくであって、翻訳の範疇へは入れたくない」という見解もあるのかもしれないが、そういうおせっかいな事も「深く読んでもらう」為には必要だと思う。

樹脂についても、同様にmiyabiyoさんが書いておられる顔料もしかり、やはりもともと作家が手にしていた材料について日本語で読む時には色々な背景をさぐったり想像力も必要だし、その原語の国の習慣になれていることも必要な気がします。

あとは日本語の統一表記というか、原語の音に近いカタカナ表記を選ぶとか、その辺りには特に気を使ったほうがよいと思う。

ページが見苦しくなったとしても、その原書のオリジナルの発音を優先するべきだし、その横に「日本では●●●と言われている」とか訳注をつけないと、同じ本のなかで、あるものはイタリア語の発音、あるものは日本語、あるものはフランス語とバラバラになっているのはまぁ知らなければそれはそのまま読み飛ばすのだろうけど、「テンペラ」と「テンペラマン」だとなにか近しい関係があるのか?と想像する人もいるかもしれない。
「ウルトラマン」のテンペラ版、(とふざけてはいけないが)
「テンペラ」はすでに日本語のなかで認知されたからその音をそのままとったのかもしれないが、わざわざルビをつけて「テンペラマン」よりは「タンペラモン」のほうが忠実な訳し方だと思う。

でも、なぜ、訳者はそのtemperamentだけにカタカナで音をつけたのか不明。

長くなりました。
せっかく翻訳の項もできたので、いつも思っていたことを少しだけ書かせていただきました。

では、また。

日本のメーカーの皆様、カタログ作成にも気合入れてください。

もし技法に関する単語に統一規格を求めたら、それはそれで別の問題が出るのかもしれないが理解




RE: 古書の入手、その他について

管理人 さんのコメント
 (2002/10/26 05:17:29)

miyabyoさん、
お忙しいなか、ありがとうございます。
すごいです。書き込みを読みながら感動してしまいました。
miyabyoさんの古書買い日記のようなホームページがあったら、ものすごくエキサイティングな内容になりそうな気がします。
ホームページを準備中とのことで、大変楽しみにしております。

紹介していただいた古書の入手方法、専門書を手に入れて勉強しようと思っている方々には、ものすごく貴重な情報になったと思います。
ありがとうございます。

“Art in Making Italian Painting before 1400”, National Garelly, London, 1989
これは、去年ロンドンに行ったとき、買ってきました。買ったままで、読んでいなかったのですが、急に読みたくなってきました。

National Gallery Technical Bulletin
の方は、やはりmiyabyoさんは全部お読みでしょうか。
特に重要な情報のある巻があれば、教えていただけると嬉しいです。
これからこの本に取り組もうという方々の貴重なガイドとなりそうな気がします。
もちろん、研究の合間に、暇が出来たときでよろしいので、まずはmiyabyoさんの研究を頑張ってください。

また、ときどきでもいいので、是非いらしてください。

こちらも、掲示板が各国語のフォントに対応できるように、改造したいと思っています。
なかなかこの掲示板もシステムが複雑で、どこに影響が出るかわからないので、プログラムをいじくるのに勇気が居るのですが。

では。


看過できないこと続編

miyabyo さんのコメント
 (2002/11/09 00:16:55 -
E-Mail)

皆さんこんにちは。お久しぶりというほどのブランクでもないのですが、<看過できないこと>が、本当に看過できなくなったので、皆さんにも経緯を見守っていただければと思い、書き込むことといたしました。


日頃、日立デジタル平凡社『世界百科事典』のCD版は、簡単な調べ事をするときに便利なツールのひとつなのですが、※ 古書などの入手方法について ※で指摘しましたように、「ラピスラズリ」の項に誤りがあります。
 最初のEメールでの指摘は黙殺されて、私の方も、後追いはしませんでした。しかし、その後平凡社が日立デジタルに吸収されて、現在は、ネット上で月額使用料を取りながら『世界百科事典』の基本内容を変更することなく運営されていることがわかりました。
 さらに、事実誤認の記事を書かれた近山晶氏は、宝石関連の世界ではかなりの功績を残されているようで、逆に、そのことが宝飾界という狭い世界で、いつまでたってもラピス・ラズリの顔料に対する歴史的事実の誤認を再生産していることもわかりました。そして、このことが看過できなくなりました。

> 近山晶氏の著書を参考に挙げておきます <
 『インクルージョンによる宝石の鑑別』全日本宝石協会, 1968 『宝石』青友書房, 1972
 『宝石・貴金属大事典』柏書店松原, 1982.
 『インクルージョンによる宝石の鑑別』全国宝石学協会, 1983.11
 『宝石学必携』新訂. -全国宝石学協会, 1983.7
 『宝石』全国宝石学協会, 1984.6. (カラーブック)
 『宝石宝飾大事典』近山晶宝石研究所, 1996.2 その他

 特に、近山晶宝石研究所なるものを運営し、様々な組織の顧問となっておられ、あまりに宝飾界に影響力があるだけに、誤った内容を撒き続けられることは、知に対する罪悪です。宝石の権威ではおありでしょうが、絵画技術や顔料に関しては素人であることをわきまえて欲しいものだと考えます。つまり、ちゃんと調べた上で書くべきだったのです。

 犠牲者は、前回に書きましたが、「ラピスラズリ」を銘打ったHPを始め、宝飾販売のHPなどに広まっていて、唖然とするばかりです。
 せんだって、あるHPの管理人(個人)の方に、記載内容の誤りを指摘した際に、その返信の中で、「宝石関係のHPの解説を鵜呑みにして書いておりました」とあり、汚染は思った以上に広いと感じました。

以下は、株式会社 日立システムアンドサービス コンテンツビジネス本部とのやりとりですが、今後どのような展開になるか、お知らせしていけたらと思います。


> ----- Original Message -----
> Sent: Sunday, November 03, 2002 5:32 PM
> Subject: 「ネットで百科 の記載内容の間違いの指摘」

早速ですが、日立デジタル平凡社『世界百科事典』「ラピスラズリ」の項記載中の、歴史的事実誤認に関する内容を指摘いたします。

《きわめて古くから尊重されてきた宝石で,その利用は前3000年のエジプトにさかのぼることができる。青金石ともいう。青色の宝石としてトルコ石とともに金製品によくマッチする点が,人類の歴史とともに長く愛好されてきた原因である。ラピスラズリはペルシア語の紺碧色を意味する l´zhwardに,ラテン語で石を意味する lapisをつけたもの。日本でも瑠璃(るり)と称して七宝の一つに数えられ,また〈群青(ぐんじよう)〉と呼ぶ青色の岩絵具として昔から用いられていた。    近山晶》
 日立デジタル平凡社『世界百科事典』「ラピスラズリ」の項

 同様の間違いは村瀬雅夫著『美の工房』日貿出版社(昭和63年)100頁、更に宝石関連書籍の多くに見られます。日本画に使用されている天然青顔料は、アズライト(藍銅鉱 和名:岩紺青)であって、ラピス・ラズリではありません。
 日本では、ラピス・ラズリを顔料として使用した例は皆無です。正倉院には当時の身分を表わす石帯(ラピス・ラズリの原石を薄い立方体に加工した石板が、皮製ベルトの周りに金具で止めてある)がありますが、装身具の一部。また、江戸末期の壁面彩色にウルトラマリンが使用されていますが、これはフランスで1830年には普及していた人工ウルトラマリンです。
 なお、誤解された要因は、アズライトの古称の「金青、紺青」が、江戸中期頃から「群青」とも呼ばれたこと、洋画の方でウルトラマリンに相当する訳語がなく、「群青」の字をあててしまったことによります。

 私は、CD版を購入した折に、一度Eメールにてご指摘差し上げましたが、何の返答もなく、こうした事実誤認の内容が未だに全世界に発信されていることを、ラピス・ラズリの研究者として、はなはだ憂慮いたします。
 証左として、以下の4点をあげておきます。

 Plesters, Joyce,“Ultramarine Blue, Natural and Artificial”, Studies in Conservation, vol. 11, No.2, IIC London, 1966, pp.62-91
 小口八郎「古美術の科学」日本書籍1980年(p. 54)
 (私の研究書)「ラピスラズリを顔料にするにあたっての若干の考察」(私家版)1987年
 降旗千賀子「色材から見える色の意味」神庭信幸 他『色彩から歴史を読む』ダイヤモンド社1999年(pp. 205-223.) 

 郵便番号○○ 福岡県福岡市○○区○○   氏名


  ※ 上のメールの返事 ※ 
----- Original Message -----
Sent: Tuesday, November 05, 2002 4:11 PM
Subject: Re: 「ネットで百科 の記載内容の間違いの指摘」

> ○○様
>
日頃「世界大百科事典」をご愛用頂きまして真に有り難うございます。
この度はご連絡を頂きまして深謝申上げます。
ご連絡を頂きましたご指摘の件につきましては早急に確認をさせて頂き,
記述に誤りがあった場合にはなるべく早く、然るべき時期に弊社の商品に対応をして行きたいと思います。
ご了承頂きますよう宜しくお願い申上げます。
今後とも「世界大百科事典」をご愛顧を賜りますよう宜しく御願い申上げます。
> ======================================
> 株式会社 日立システムアンドサービス
> コンテンツビジネス本部
> 〒140-0013 東京都品川区南大井6-24-9
> 興産大森ビル4F
> ======================================

 この返信で問題なのは、<ご了承頂きますよう宜しくお願い申上げます。>というフレーズです。これは、<どのような結果が出ても、指摘されたあなたには一切なんの案内もしないので悪しからず>と、言っているわけです。
 良く使われるあたりのやわらかい言葉ですが、礼を失することなのです。指摘した事柄の真偽について、その返答をしないのは、ルール違反です。



  ※ 2度目のメール2002/11/06 ※ 

今少し、確認しておきます。

 私は、現在        を執筆中であり、日本では顔料としての体験がない「ラピス・ラズリ」にかなりページを割く予定ですが、そこで、日本のラピス・ラズリに対する認識の乏しさの例として、この近山晶氏を含む宝飾専門家といわれる方々の事実誤認の例を出す予定です。したがって、早急に記事の差し替えを望みますし、その経緯についても必ずご連絡をいただきたく、ここに明記いたします(変更内容は、私の著書にも反映されます)。


 事実確認をされる場合は、宝飾関連の文献を当たられても真実は見えてきません。
例えば、

鈴木敏編『宝石誌』大正5年(復刻版 思分閣1973年 第3章半貴石 第1節青金石256頁

《往時は此石(私註:青金石=ラピスラズリ)の粉末を絵具に供用せしを以ってわが国の古画中に此れを用ひたるもの少なからず、然るに群青製法発見以来此需要殆ど絶ゆるに至れり》(一部現行漢字に換えてあります)

とあるように、顔料分析や、日本の絵画技法史に疎い宝飾専門家の方の著書自体に間違いがあり、それがすっと孫引きされてきておりますから。

 そもそも、日本において、このラピス・ラズリを顔料として仮に使用されたとしたら、一体どのような製法で顔料にされたのでしょうか? ラピス・ラズリは、日本で古来より絵画に使用されてきたアズライト(藍銅鉱:近山氏はこの顔料のことをラピス・ラズリと誤認されている)のように、単に細かく砕いて水簸するだけでは、せいぜい水色程度にしかならず、顔料としては利用価値がないのです。

 そのために、西洋では、例えば
1.チェンニーノ・チェンニーニ『絵画術の書』辻茂訳 岩波書店1991年 第62章オルトレマリーノの性質とそのつくり方(35-38頁)

2.『ボローニャ手稿−顔料の秘密−』(1425-50年頃)
 Merrifield, M. P., “Original Treatises, Dating from the XIIth to XVIIIth Centuries, on the Arts of Painting, Oil, Miniature, Mosaic, and on Glass ; of Gilding, Dyeing, and the Preparation of Colours and Artificial Gems” 1849.
(rp.“Original Treatises on the Arts of Painting”, 2vols, Dover 1966. "Medieval and Renaissance Treatises on the Arts of Painting", 1vol., Dover 1999) の325-600頁

3.『ド・マイエルン手稿』(1620-46年) Sloan Ms. 2052及びSloan Ms. 1990
 Berger, E. “Beitrage zur Entwicklungsgeshichte der Maltechnik”, vols.3, pp.92- 410, Munchn, 1897-1904.改訂版 4vols.(1901-12),Sandig(1975-79).
※ウムラートを外したアルファベットにしてあります)

 などに見られるように、様々な処方が考えられたのです。

日本では一切採れないラピス・ラズリが、本当に「昔から用いられていた」ならば、それに見合うだけの量の原石を交易した史的証拠が、連綿とあってしかるべきです。

 日本で原石が採れず、交易史料もなく、顔料処方の書もなく、山崎一雄氏他の修復保存分野における顔料同定でも皆無の顔料ラピス・ラズリを、何を根拠にして日本で「昔から用いられていた」と近山氏は公表されているのか、もし、今もご健在なら資料をお示し願いたいものです。

 ※ 山崎一雄『古文化財の科学』古文化財の自然科学的研究 同朋舎出版1984年

私は、近山氏が何の検証もなく、宝飾専門家とされる方々の、誤った認識を安易にそのまま継承して記事にされたと結論付けています。

 ひとまず、ここまでとします。冒頭に記しましたように、私の著書で言及する内容です。したがいまして、今回の問題だと指摘している記事内容に関して、今後の御社の結論が出次第、その内容をご一報いただくよう、再度明記いたします。

2002.11.06 記
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この件は、ここまでです。何らかの進展がありましたら、また書かせてもらいます。
皆さんは、どのように思われますか?


  ※ その他 ※  

  管理人さんへ
National Gallery Technical Bulletin の件ですが、たしかにすべて所持し、主だったものには目を通しています(vol. 1. 2 はマイクロフィッシュで入手しましたが)。

ご承知かもしれませんが、この機関誌は現在では、ロンドンナショナルギャラリーのホームページで、ネット販売されています(Amazonなどは発売して数ヶ月経過したものは買えます)。

すでにかなり欠番がでていますが、基本的にどの發眦たり外れがなく、質の良い論文ですから、お薦めします。
どのようなものか読んでみて購入を考えたいという方は、今年の8月に出された23号の7論文中の巻頭論文が、ノーカットでAcrobat Readerを使って閲覧できます。

場所は、上記のHPの ON-LINE SHOP → Book → Technical Bulletins ここまで来たら Technical Bulletins 23をクリック。ここの画面で

 To download a FREE sample essay from this edition please click here for more details.  をクリック。

‘Fra Angelico’s Predella for the High Alterpiece of San Domenico, Fiesole’をクリック

目次も一緒に見られますし、ハードコピーもできますので、読んでみて下さって、興味がもてそうなら片っ端から購入してください。この機関誌は、その性格上古書としてあまり表に出ませんから(vol. 22, 23共買われる場合は、合冊号も用意されており、安く済みます)。

もし、北方絵画に興味がおありなら、前回ご紹介したvol. 18の1400-1550年の後を継ぐシリーズ第2弾としてVol. 20がお薦めです。リューベンスとヴァン・ダイクの特集です。

また、管理人さんが現地で買われた Italian Painting before 1400 などは、Books のArt History に載っています(そろそろ絶版になります)。このArt Historyの中ではミケランジェロのエッグテンペラの未完成画などに関する技法を述べた“Making and Meaning: The Young Michelangelo”などがお薦め。

 現代の油絵ではほとんど見捨てられているテル・ヴェルト(テンペラ画では今でも良質の顔料を探す方が多い)が、いかにルネサンス期までのイタリア絵画で大事な顔料であったかや、その彩色法なども、上載2冊は実感として分かりやすい文献です。

 やや乱暴ないい方をすれば、人間の肌色を出すときに、テル・ヴェルトを置いてから肌色を起こしていくイタリアの初期画法は、テル・ヴェルトを使わずに肌色を起こしてく北方絵画の技法とは、本来相容れない技法なのですが、イタリア絵画が、北方絵画の影響を受けてテンペラからエマルジョンや樹脂入りの油を使って描く画法に移行していく過程で、連綿とあったテル・ヴェルトを使った肌身の描画法を捨てていくのが、ルネサンス期の最盛期にあたるのだろうと思っています。生誕順にいくと、ボッティチェルリは使い、ダ・ヴィンチは使わない方法で盛んに実験しており、ミケランジェロはパネルに描いたエッグ・テンペラ画、油彩画両方とも使用し、ラファエロではすでにその画法を捨てています。この間およそ40年です。
 このあたりは、まだ追跡中ですから空想の域をでませんが、仮にこの1点だけを捉えて論文を書いても、今の日本なら博士号が取得できるはずです。ちょっと口が滑りました。

カドミウム系顔料を知らない当時の画家たちは、イエロー・オーカーを鮮やかな黄色や黄金色に変身させる技をもっていました。
また、レッド・オーカーもヴァーミリオンとは異なるもうひとつの鮮やかな赤として使う能力をもっていました。

なんだか、そうしたことを、ヨーロッパで観た絵画や、日本で開催された展示会の記憶と重ねながら、ふっと実感することがあります。そのときの私の眼は字面ではなく、絵肌のわずか20cmあたりを移動しています。

古典技法を活用した絵を終えて、パレットにカドミウム系やコバルト紫などを戻すと、しばらく身体の中でカラーバランスがおかしくなることがあります。イエロー・オーカーはただのくすんだラクダ色であり、レッド・オーカーは茶色以上の色になってくれない。

「おい、君たち、ちゃんと画面の中で手をつないでくれよ」といってもすねているのです。カドミウムは「私のそばに寄らないでよ」って突っ張るし、コバルト・バイオレットは、「私だけの場所を頂戴!」と冷たく言い放つし‥‥‥‥、よせばいいのにそこでチタニウム・ホワイトが、「その気持ちも理解できる」なんていうもんだから、シルバー・ホワイトが「俺の目の黒いうちは、わがまま許さん!」。で、イエロー・オーカーとレッド・オーカーは合唱します「私たち、もともと土にいたから、地面に使ってください」と。

じゃあ、また。


用語、翻訳 (1)」へ続く。


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