荒木慎也(著)『石膏デッサンの100年 石膏像から学ぶ美術教育史』読了
荒木慎也(著)『石膏デッサンの100年 石膏像から学ぶ美術教育史』読了

昨年アトリエラポルトさんにお邪魔したときに、大変面白いとお薦めされた本ですが、ようやく読みました。確かにこれは面白いです。特にちょっと前の世代で美大受験を経験していると、漠然といろいろ疑問に思っていた事柄が明らかになったり、あるいはそうならないまでも、それなりに明文化されてすこし気分がよくなります。ちょっと内容についてコメントしてみます。

かつて各国の美術館で、石膏像を展示するスペースがあったということ、というよりむしろ石膏像展示がメインともいえるものだったというのは非常に興味深いところです。英国のヴィクトリア&アルバート博物館(これは大英博物館に匹敵するぐらいの大きな博物館ですが)に古代ローマやイタリアルネサンス期、その他いろいろな時代の石膏像が展示されているスペースが今でも残っていますが、これは職人の教育などを重視した特殊な例かと思っていたのですが、実はこのような石膏展示室がヨーロッパとアメリカの大美術館にあったそうで、というよりまさに石膏展示をメインとしてはじまったようなところもあったとか。今のように気軽に海外旅行したり、映像で見たりすることができない頃には、そして古典古代が重んじられていた頃にはかなり有用だったことかと思います。ちなみに個人的に現在、新古典派についての本を読みあさっておりまして、その点でも語りたいことは山ほどあるのですが、それは置いておくとして・・・

日本の美術教育ということになると、工部美術学校で行われた石膏デッサンは、今日の洋画系でよく使う木炭ではなく、擦筆によるデッサンだったとか、そして作例の写真が掲載されていましたが、これは現代の写実画家養成向けとして復活できそうな要素かもしれません。模写→石膏デッサン→静物や人物デッサン、の流れは理にかなってますよね。使われる用紙の大きさに統一性がないというのもいいのかもしれません。予備校生みたいに職人芸みたいに石膏デッサンできるようになるくらいやってしまうと明らかにおかしいけれども、頭像、胸像、全身像みたいな流れで5~6枚くらいやるならとてもいいんじゃないかと。ま、それは余談ですが。その後、東京美術学校の洋画科では、黒田清輝指導の元、木炭が道具として使われますが、今日見る木炭デッサンとは真逆の性向である、線を重視したデッサンであり、やはり作例が載っていましたが、スカスカに見えて、今の目で見るとこれになんの意味が、思ってしまわないでもないのですが。なお、昔から美術学校の入試向けの美術研究所はあったようですが、東京美術学校の先生が指導していたそうなので、連続した感じの指導になっていたかと思うと、なかなか魅力的なところはなきにしもあらずです。ところで、我々は予備校のことを研究所って呼んだりしてますが、研究というたいそうなものじゃなくて受験準備がメインなのに、なんて研究所って呼ぶのでしょうかね。

それからだいぶ後になりますが、安井曾太郎が東京美術学校で教鞭を執ることになり、安井曾太郎のデッサンは非常に有名ですが、あのような暗い背景に人物が浮かび上がるような迫力あるデッサンがブームとなったと。構図も紙に目一杯石膏像を描くという、現在見る構図の石膏デッサンになってゆく。私はある程度木炭になれてからは背景を塗りつぶして、白い石膏像が浮かび上がるかのような感じで描いていましたが、それは予備校の先輩でそういうふうに描く人がたまに居て、それがたまたま非常に上手かったということもあって、感化されてそうしていたというものだったのだけれども、これはもしかしたら安井曾太郎の指導が、巡り巡って東北の高校生にまで影響した結果だったのかもしれません。今思うとそうだったのだろうと。安井曾太郎のデッサンを知るのは大学生になってからでしたが。

石膏デッサンの是非はともかくとして、私は胸像だけではなくて、全身像の石膏デッサンをやらないと修業として片手落ちなのでは、というのは昔から思ってました。同じような考えはやはりあったらしく、大学や予備校で全身像の石膏を用意する試みは一応行われたことを本書で知りました。ただ、結局それらは活用できずに終わった模様です。なんとしても必要だと思って集めてみたものの、実際には使わずに終わるというのは石膏に限らずよくあることですが、油画1年のカリキュラムにあっても良さそうなのですが。予備校で胸像やってたのをまたくり返すよりは。

さて、もうひとつ外せない話としては、東京芸大の受験改革で、油彩を一次にしてデッサンを二次にするという配置を行なったところ、予備校が受験対策の為の油彩技法、乾燥剤を多量に入れたり等、短時間で描き上げる技法を競って開発し、むしろ美術教育上大きな害をもたらす結果になったという件ですが、むしろこちらの方がよく分析されるべきかと思われます。今更ですが。個人的には石膏デッサンになにか恨みとか弊害みたいなものはそんなに感じず、自分だけでなく、同じ油彩系に進んだ同級生の間でも、石膏デッサンのせいで個性が抑圧されたとか、そんな話は私は聞かなかったというか、我々の世代の頃はそういう論争は終わって、とりあえず割り切ってる感じはあったと思うのですが、それと違って、油彩画を制作するときに予備校時代の変な癖が抜けないというのは散々聞きました。脱するのに10年かかったとか。ただ、いずれにしても、倍率が40倍超えとかになってしまったら、どのような受験方法を採用してもいろいろ矛盾が出てくるのは仕方ないような気も。倍率5倍くらいなら、ちょうどよかったんでしょうけれども。

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天然染料系の顔料について語る動画 その1 赤
今年は染料系顔料について、とくに天然染料について追求してゆきたいかなと思っております。いろいろ思うところありまして。まずは赤系の染料について動画を撮ってみました、鳥越さんと。
まずは赤編の第1弾ですが、とりあえずは、色材を紹介しつつ、それとなく、染料の使い方を述べたりしています。

本動画では主にマダーについて述べています。これも育て安い植物なので、いつかは再び植えてみたいところです。ニホンアカネ、セイヨウアカネなどを植えてみたことがありますが、試しに植えてみた程度であり、まだまだ人に語るほどではないなというところではあるのですが。

さて、ここで染料系の色材について語りますが、そもそも合成、天然問わず、レーキ顔料というのは褪せやすかったり、ブリード現象を起すなどして、機能的にはあまり優れておらず、派手な色などで高価な無機顔料が使えない場合に使用する的なネガティブなイメージを、かつての私は抱いておりまして、それに私が読み始めた頃の材料書などにも、そのように解説されていることが多かったと思います。実際やや年数の経った技法書を見るとその辺の注意が書かれてあると思います。また、実際、安い絵具には褪せやすいものが多くありました。合成染料については、現在は耐光性はかなり改善されていて、時代が変わった感がありますが、天然のものしかなかった昔の画家はなおさら苦労したのでは。選択肢がなくて仕方なく使っていたのでは、というふうに思っていたわけです。けれども、Daniel V. Thompson の The Materials and Techniques of Medieval Painting こちらを読んでいるうちに、天然染料についての奥深い世界をチラッと垣間見て、強い関心を持つようになり、しばらくは草木染めなどにはまっていたこともあったのですが、その辺はずっと当ブログに書いてきた通りです。

赤色編 第2弾

主に蘇芳について紹介しています。蘇芳といいますが、赤い染料の採れる木についてなのですが、厳密にはいろいろ種類があるようで、そのうち確認する時間があったらいいのですが、今はまだ時間がありません。木の種類や色の名称、歴史的経緯などについて確認したいところなのですが、マダーやコチニールと比較すると褪せやすいという欠点があり、現代の絵画に使うには難在りということもあって、ここは冷静にスルーするべきであるかと。というわけで、少々粗のある解説動画になってしましたが、いろいろ課題が見えてきたような気はします。オマケ的にドラゴンズブラッドも紹介しています。絵画用途に向いているかどうかはわかりませんが、これは触れずにおれないところです。数年前、絵具メーカークサカベさんの工場見学に行ったときも、なぜかドラゴンズブラッドを見せてもらいましたので、やはりこれは見せないといけないものなのかと思います。

赤色編 第3弾

全編コチニールについて語っています。実は動画の方はかなりあっさり触れているだけで、本当は語り出したら切りがないわけですが、それは実際の使用や、染料の顔料化などについて触れる際に再び詳しく述べてみたいところです。実は顔料化等についても動画化してゆきたいのですが、なかなか体力が。どこまでできるかわかりませんが、よろしくお願い致します。

| 絵画材料 | 12:00 AM | comments (0) | trackback (0) |
最近買った物
最近買った物というより、更新した物と言った方がいいと思いますが、いろいろ古くなってきたものを続々と買換えました。

電気シェーバー
フィリップスのS5212/12を購入。ライバル製品と比較すると、フィリップスは深剃りでは劣るが肌には優しいそうである。3ヶ月ほど使ってみた感想など述べてみると、はじめは確かに深剃りがあまり得意ではない感じであり、それと剃るのにかかる時間が5割増しくらいに増えてるような気がして戸惑ったが、慣れてくると意外と深剃りもできるような感じである。まぁ、何はともあれ、深剃りよりは、肌を労るような方向でいきたいと思っているので、しばらくはこのフィリップスのシェーバーでさらっと剃って過ごしていきたいと思います。

スマートフォン
5年半前に購入したHTC J ISW13HTからシャープ AQUOS R SHV39 auに機種変。もっと頻繁に機種変した方がいいとは思うのですが、データの移行等いろいろ考えると面倒で。メールとか電話帳とかLINEとかいろいろありますから。AUには専用のデータ移行アプリがあるのですが、使ってみたら全然使えなかった。リストアで失敗するというレビューは多々見ましたが、バックアップすら上手くいかなかった。メールと電話帳にもちゃんと個々のバックアップ機能がついていたので、それで移行したのだが、電話帳は何故だか60件くらいしかバックアップされず、手動で登録しなおしたりして、ちょっと納得できなかったりもしたけれども、今後はそれを乗り越えつつ定期的な頻度で機種変してゆきたいと思っています。で、新機種ですが、当初はSHV40という格安機種にしようと思っていたのですが、通常使用でもレスポンスが遅いこともあるというレビューを多々見たので、結局AQUOS Rという、フラッグシップモデル的な高い方の機種にしたのだけれども、よくわからないのだけれども見積りしてみると、月々に払い料金はそんなに変わるという程でもないので、それなら快適な機種を使えて方がいいのか。その後2ヶ月ほど使ってみたのですが、何もかもが便利になりました。レスポンスめちゃめちゃ速いので快適であり、画面も大きくて見やすい。カメラが良い。一眼レフを手放せるほどではないけれども、とりあえず、コンデジはもう要らんというレベルです。特に屋外の写真撮影はもうこれでいいのではないかという感じです。室内で小物を撮るなどはどうしても粗が出てきますが。古墳歴訪などの旅はフットワークを重視して一眼レフを持たずに、というのもいいかもしれません。動画は4Kいけるそうで、気が付いたら4Kカメラも入手していました。液晶画面の解像度など、部分的に我がデスクトップマシンを凌駕している点が多々あるところが時の流れを感じところです。

スーツ2着購入。いつもは新年度前に毎年2着買っていたのですが、昨年は、それまで溜まっていたスーツを着潰そうと思って、買わずに乗り切りました。そして今年度は講師の仕事がどうも減るんじゃないかなと思っていたのですが、今年度も使って頂けるところがありましたので、スーツぐらいは新しいものでないといかんかなと思いまして、TAKAQに行って散々試着して2着購入しました。オーダーのスーツを買うような身分ではないのですが、いくつも試着してればそれなりに合ったものが見つかるもので。しかし個人的にはレギュラーフィットタイプが好きなのですが、いろいろ試着しているうちにうっかりスリムフィットを買ってしまった。店員が親切についててくれるとちょっと緊張してしまうところが無きにしも非ずである。しかも、一方は紺色に格子状の模様が入った変な柄のものを買ってしまったが、しかしたまに違ったものを買ってみるということはいいことかもしれない、とポジティヴに考えてみる。なお、2着ともウォッシャブルスーツなので、自宅の洗濯機で洗えるというのは重要なポイントである。


靴を選ぶというのはけっこう時間がかかるもので、服もそうなんですが、スティーブ・ジョブズ等は同じ服を大量に買って、そのようなことに時間を使わないようにしたとか、そんな話を読んだような記憶がありますが、服はまぁ仕方ないとしても靴は選ぶのを止めてしまおうと、数年前あたりから考えています。というわけで、現在はSTAR CREST メンズウォーキングシューズ(4E)という安いシューズを買って過ごしています。買ったばかりだと、そんなに安物というほどひどい見た目ではないし、歩きやすいです。歩くのが好きで靴は意外とすぐに駄目にしてしまうし、雨の日にぬかるみがあっても気にしないで踏み出したいとか、そんな気がしているので、履き心地がよければそれでいいという方針で。実店舗で買おうとすると必ずと言っていいほど自分のサイズのは品切れ中なので、最近はAmazonでポチッとする感じですが、廃盤にならないことを祈る。

扇風機
山善 30cmリビング扇風機 (リモコン)(風量3段階) タイマー付 ブラック YLR-C30(B)
部屋に白い家電が増えるのが嫌で、できるだけブラウン系かブラック系のものを買うようにしているのですが、そうすると選択肢がけっこう限られるのですが、こちらは値段も安くて物もそんなに悪くないと言えるでしょう。リモコン無し版はさらに千円安い。けど、リモコンはけっこう便利です。ただ、風力はもうちょっと弱いモードがあったらいいのにな、とは思います。

| その他 | 10:02 PM | comments (0) | trackback (0) |
映画「天使と悪魔」から見るバロック芸術 その2
バロック美術について語る動画の続きです。

[Medici] 映画「天使と悪魔」から見るバロック芸術 #2


普通は本やテレビを見て美術について触れるものなので、その段階では西洋美術はまずは絵画であって、そして彫刻があって、という具合にとらえがちではあるけれども、実際ヨーロッパを歩いて、そしてさらに非常に詳しい本を読んで美術史を勉強してゆくと、美術のメインストリームは絵画というよりか、建築ではないか、建築そして彫刻、そして絵画の順になるのではないか、とか思ったりするのだけれども、それはともかくバロック建築とそして広場、というか空間的なものがいっぱい出てくるということで、この映画はよく見ると大変面白いです。動画で触れている意外にも多々語りたいところはあるのですが、まとめサイトなどもいくつかありますので、それらを参照しつつご覧になってくれればなと思います。

| ビデオ・DVD | 11:31 PM | comments (0) | trackback (0) |
古市古墳群を訪れる
3月某日、春休みを利用しつつ古墳歴訪の旅に出ることにしました。初日に古市古墳群、2日目に大和古墳群、3日目に佐紀盾列古墳群をという計画で。踏破した古墳についてコメントしてゆきたいと思いますが、自分用のメモも兼ねるので少々些末なことも書いてあります点をご了承ください。古墳時代から古代史についての本を読むのが好きなのですが、実物を見て置くと理解に役立ちそう、ということで。
ボンバルディアCRJ700
休養も兼ねる感じで疲れないようにしたかったので、お昼頃に仙台空港から出発。IBEXエアラインズのおそらくボンバルディアCRJ700という機種に搭乗。小型の旅客機でいわゆるリージョナルジェットというやつですが、大型旅客機と比べて飛んでる感じが味わえた気がしないでもない。ちなみに仙台から大阪までの旅費は飛行機代宿泊込み3泊4日で¥41.300でありました。伊丹空港に近い場所に宿を取ろうかと思って江坂のビジネスホテルを予約したのですが史跡へのアクセスはいまいちでした。ただまぁ、スーパーも百円ショップも近場にあって、高級すぎなくて便利でしたが。買い物したり、ホテルにチェックインするなどして、それから古市駅に向かいましたが、そこから歩きはじめたのは16時半くらいになっておりました。日没まで2時間弱、あまり時間がないので、さっそくですが、まずは面積では日本第2位の規模、体積では第1位のサイズである、誉田御廟山古墳(応神天皇陵)に向かう。後円部あたりをうろうろしてみたが、住宅が建ち並んでおり、近づける感じではなかったので、前方部の拝所の方へと歩く。しかし後円部の木々はずっと見えてるっぽい感じで、体積日本一の古墳という感じでありました。
古市古墳群
こちらが拝所への参道。綺麗に整備されています。奥に見えるのが応神陵の前方部正面になります。
古市古墳群
立派なものです。
その北側にある大鳥塚古墳
古市古墳群
さらにそのすぐ北側に古室山古墳。
古市古墳群
宮内庁管理ではないので、登ることもできます。
で、その古室山古墳を登って降りると、仲津山古墳(仲津姫陵)の拝所が見えてきました。
古市古墳群
周辺でもひときわ高い位置にある古墳で、拝所も柵越しにのぞき込むような感じでした。
古市古墳群
古市古墳群では2番目の巨大な古墳らしいが、住宅が多く全貌がよく見えないなと思いつつ、後円部の方まで歩いていったら、道路沿いに深い堀があり、そこから見るとちょっと畏怖を感じるほどの大きさでした。応神天皇皇后仲姫命陵に治定されているけれども、考古学的にはこちらの方が応神天皇陵よりも築造年代は先になるそうである。
そのすぐ北東に鍋塚古墳という小さな方墳が。
古市古墳群
石柱には「史跡 鍋」とだけ掘られてありましたが、それはともかく、登って仲津山古墳(仲津姫陵)を振り返る。やはり大きいといえる。
古市古墳群
反対側には市ノ山古墳(允恭天皇陵)
古市古墳群
下は土師ノ里駅。建物の背後に見える森のようなものが允恭陵。デカいすな。
古市古墳群
前方部も後円部も道路からすぐ第1周壕になっている部分が多くて、前方後円墳の全貌が見渡せます。古市古墳群の中では第4位の大きさということであるが、全体を見渡せる為かひときわ大きく見える。応神陵はこの倍近い墳丘長だというから、それはそれはデカいということが想像できます。というわけで、ここまで来たところで日没なり、宿泊先に帰る。

| 史跡・古墳・名所等 | 11:10 AM | comments (0) | trackback (0) |

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