2021,10,31, Sunday
もう10年も前のことになりますが、食用として販売されている様々の植物を、顔料と混ぜてパネルに塗布してみたことがありました。
■主な植物油の乾燥性をテスト http://www.cad-red.com/blog/jpn/index.php?e=981 ![]() 植物油は複数の種類の脂肪酸で構成されており、中でも特にリノレン酸が乾燥性がよくそれを多く含む亜麻仁油などが油彩画の展色剤として使われているわけですが、他にはやや乾燥の劣るリノール酸を多く含む油、例えばポピーオイルや紅花油、クルミ油なども油彩画に使用されています。リノール酸を含む植物油は多いのですが、けっこうな割合で含んでいないと、なかなか乾燥してくれません。オレイン酸は乾燥性はないとされ、オレイン酸主体のオリーブオイルはいつまで経ってもヌルヌルのままとなるでしょう。紅花油、ひまわり油などはリノール酸が多い物とオレイン酸が多いものなどがあります。食用としては酸化し難い方が優れているので、オレイン酸が多い方が好まれると言えるでしょう。 でもまぁ、実際どうなんだろうかと、菜種油、キャノーラ油、米油、ハイオレインの紅花油、ハイオレインのひまわり油まで含めて、手当たり次第に顔料と混ぜて塗布してみたのです。むろん、リノレン酸主体の亜麻仁油、紫蘇油、荏胡麻油などは非常に乾燥性がよかったです。それ意外はなかなか乾燥しませんでした。という試験をやってから、10年経ったけですが、なんとなく取り出し、改めて塗装表面と触ってみたら、なんと皆けっこうしっかり乾燥しており、指でかなり擦ってもびくともしないくらいに乾燥しているのです。溶剤試験はまだやっておりませんが、指先で触れた感じは、かなり理想的な乾燥をしております。むろん10年も待たされるのでは実用にはなりませんが、でも最終的には乾燥しているのです。日新キャノーラ油も、味の素のハイオレイック紅花油も、日新の綿実油も、昭和産業のオレインリッチひまわり油も、国産圧搾法なたね油もいずれも、なんのベタつきもなく、カラリと乾燥しているのであります。例外は米油でこれは製品の表示ではオレイン酸6に対しリノール酸5となっておりますが、ほぼ乾燥していますが、長く触ると指紋の跡が付きそうなベタつき感が感じられます。それと不思議なことに、トルコ産のハイリノールひまわり油も非常にわずかですがベタつきのようなすべり止め感があって、ハイオレインを謳っている昭和産業のひまわり油の方がしっかり乾いております。とはいえ、確かにほぼ固まってはいるのです。 製品の表示の、リノール酸含有量があまり宛にできない可能性もあるということが考えられます。植物から得られるものでありますか、パッケージに印刷された通りとならないこともありましょう。あるいはある程度含まれていれば、いずれは乾燥するということかもしれません。ところで、オレイン酸が大半であるオリーブはどうなるかな、と気になってので、この機会に塗布してみましたので、10年後に結果をお伝えしたいと思うところです。 |
2021,10,24, Sunday
赤松明彦著『書物誕生 あたらしい古典入門『バガヴァッド・ギーター』神に人の苦悩は理解できるのか?』読了
ヒンドゥー教系統(バラモン教等)に関する知識が不足している、というよりもそもそもこれまでほとんど何も読んでこなかったのでありますが、仏教に関する書を読みすすめてゆくうちに、やはりバラモン等現在のヒンドゥー教に関する聖典への知識がないと真相がわからなぬことも多いような気がして以前から気になっていたのではありますが、まずはようやく本書に目を通してみたところです。書物誕生シリーズは西洋系統のものは事前の知識がそこそこあって、比較的読み進めやすいのだけれども、東洋思想やインドなどは若干難しいと感じるのは、自分の知識の偏りの為であるのでしょう。本書は読み進めるのにちょっとだけ苦労致しました。実はまずは何はともあれ中央公論世界の名著シリーズの第1巻である「バラモン教典・原始仏典」を読むのが一番良さそうだとは思っているのですが、それは職場の図書室で空き時間にチラ見したりしておりましたが、しかし買って読みたいわけですが、このシリーズちょくちょく買っておりまして、もはや全冊ヤクオクで落札した方が時間的にも金額的にもコスパがよいのではないかと思ってそれで入手をためらっているところです。さらに実は至文堂日本の美術(全500冊前後?)も欲しいと思っておりまして、実際に目を通したいのはその半分以下なのですが、でも1冊1冊買っているというのも相当手間であったりします。だがやはり置く場所も難しく、そしてまとめ買いすると、何故かそれで満足して読まなかったりという現象も起こりえますので、案外1冊ずつちまちま買って読んでを続けるのもよいのかもしれませぬ。 小杉泰著『書物誕生 あたらしい古典入門『クルアーン』語りかけるイスラーム』読了 イスラム教系の文化にも実はけっこう疎いので、こちらも早々にいろいろと読んでおきたいと思っております。ただし、ヒンドゥー系よりはずっと読みやすい、前掲のものよりも、こちらの方がすらすらと流れるように読み終えることができました。やはり元はユダヤ教及びキリスト教と共通するベースから派生しておりますから、それらが理解の助けになっているのかもしれません。というより、問題はインド系の宗教は、様々のモチーフが何かと膨大な数になりがちであり、仏典の数の多さ、時間的空間的膨張など、インフレーション現象が全体像の把握への壁として立ちふさがっているような、原始仏教が見えてきたと思ったら、そこから同時代およびそのずっと以前からの聖典の数の多さが目の前に現れてくるという系統のものと比較すると、もしかしたらイスラームはけっこうすっきりしているかもしれない、という予感はしていますが、いずれにしてもこれから読んでいくところであります。 |
2021,10,08, Friday
いろんな法改正にびっくりしながらそれらに対応しつつ、なんとか生きておりますが、最近話題のインボイス制度というのはちょっと難関ですな。現在は講師の仕事の他、以前会社をやっていた頃に受注した仕事の維持更新みたいなところをやりつつ糊口をしいでおるわけですが、インボイス制度が面倒過ぎたら個人事業の方は何か考えねばなりません。消費税は1000万円の売上の場合、10%の100万を納めるというものではなくて、仕入れや下請けなどの時点で大部分支払っておりますので、営業形態にもよりますが、1000万円を割っているとけっこう少ない金額になるかと思います。実際に以前やっていた会社の場合、廃業を計画して事業縮小していた頃、そろそろ非課税法人になるなという頃は消費税の納税額は大した負担ではなくなっていました。仕入れも外注もないという完全クリエイターの場合はそれなりの額でしょうけれども、かなり珍しい例ではなかろうかと。というわけで、この場合、納税額よりも制度の把握と対応の準備にけっこうな時間を取られるというのが一番の問題ではないでしょうか。初見では理解不能な場合が多いのですよね。それをなんとか解釈しつつ、対応した体裁を保ちつつも現状を維持するような感じなのでしょうか。実は現状では私の個人事業的な活動は休止に近い状態なので、じっと世間の様子を眺めて、どんな対策があるのかを見ていればよさそうな感じなのであり気を揉まないように致します。
ところで、非常に希にではありますが、営業マンの方の話を聞いたりしなければならないこともあるのですが、極力丁寧に対応しようと心がけてはいたのですが、下手に話を聞いてしまうと非常に強硬な感じの昭和的な営業をされる方もおりまして、これがけっこう面倒なことになるので自分としては不本意なところですが、早い段階でガツっと門前払いするべきなのだろうと考えを改めております。商品の質だけでよく見て判断すればそれが一番ですし。私のようなものが営業マンとして採用されることはまずないので、相手に対して余計な同情心も捨て去ってしまってよろしかろうし。時間も無駄にしたくありませんが、感情的になってる人を相手にするというのが最も嫌です。最近は細々とした制作と実験と読書など内省的な行為に沈潜しておりまして、考える余力みたいなものを集中したいというところもあり、思考時間の断捨離みたいに考えて、カットするものはバサッとカットすることを心がけております。というわけで、荻野弘之『書物誕生 あたらしい古典入門 マルクス・アウレリウス『自省録』精神の城塞』を読みました。これは企画の時点で素晴らしい。書物誕生シリーズのストア派代表として自省録が選ばれたということですが、当初は何故に自省録?とか思って、購入後数年放置してしまっておりました。私も学生時代にはひと頃自省録を愛読していたこともありますが、ストア派についての理解は全くないまま直感で読んでおったのです。それでも自省録の読み方として充分なわけですが、しかししっかりとしたストア派解説と共に読んでみると、この書は現存するストア派の書物の中でも、シリーズの代表に選ばれる書であると大いに納得しました。前半ではエピクテトスの語録、提要を取り上げてストア派全般について語りつつ、後半では自省録の内容について切り込んでいくという具合で、ストア派入門書として最適なの構成ではないでしょうか? ヘレニズム哲学の多々ある学派の中でもストア派とエピクロス派は代表格といえますが、しかし、プラトニズムに関する本はけっこう真剣な解説書が多いけれども、ストア派というのは意外とないような気がします。ないわけではないけれども、何を読んでもいまいち把握しづらいところがあったのですが、今回ちょっと理解の入り口に立てたような気になりました。参考文献の箇所を見たら、実は良書っぽいものがたくさん並んでおりましたので、私の勉強不足であったというところもありますが。ちなみに先日読んだ、小池澄夫『書物誕生 あたらしい古典入門 ルクレティウス『事物の本性について』愉しや、嵐の海に』の方は、エピクロス派について最良の入門書と言えるので、両方合わせて読むのがよろしいのでありましょう。こちらもルクレティウスを選んだところが、やはり企画として目の付け所がしっかりしているのであろうと思います。そして私は普段の生き方としてはエピクロス派の教えに倣い、何か役割を果たさねばならぬときは自省録に倣って生きようかな、という気分であります。特に自省録の、(言葉を微妙に換えつつ)繰り返し書くことによりイメージトレーニングを日々続けるという行為はなかなか実践的かもしれません。宗教的な悟りを開くというのは私にとっては理解できないことで、一時的に悟ったような気がしても、日々様々な問題が、あるいは似たような問題でも、違った仕方で現れてきて、その都度新たな煩悶の種となるもので、悟りとは放っておけば薄れるものであり、出家して修行するのでもなければ、心構えのトレーニングの為に書いて再び悟りを更新するというのは最も実践的ではなかろうか。これはエピクロス派の教えでも共通しそうであるし、自省録でもちょっと混ざっているような感じもあるので、微妙にブレンドしても実は違和感ないかもしれないので、私としてはその辺を調整しつつ生き方を探ってゆきたいところです。 |
2021,10,04, Monday
実家暮らしなのですが、庭にマツの木があるのです。あんまり大きくないのですが、ずいぶん昔からあるような気がします。で、そのマツの木から、松脂を取ってみようと思いまして。
庭木なので、幹が細く、そして斜めに格好良く伸ばされていたので、よく松脂採集の写真で見るような、豪快な樹脂採取はできません。樹皮はメタセコイヤと違って、内樹皮もしっかり剥がしてしまった方がよいみたいです。すぐにじわじわと樹液が染み出してきます。一応、樹液の流れを作ろうかと、三角刀で切れ込みを入れまして、下の方に集約しようと思ったのですが、なかなかうまくいきません。斜めに生えているというネックでありまして。下に容器を置きましたが、そこにうまく流れてくれず、容器で受け止めるのはあきらめて、ペインティングナイフでときどきかき取って小瓶に詰めることにしました。 ![]() 松の木から松脂を取ってみようと思ったのですが、出て来た透明な樹液をすぐに集めてビンに入れたのですが、密封すればそのままかと思ったのですが、白濁するんですね。 ![]() 私はいろいろ松脂について誤解しているというか、無知でありすぎたと今更ながら思うところです。松脂は出て来てすぐは無色透明であって、それがもうヴェネツィアテレピンバルサムみたいなものだと思っておりました。そこから蒸留によりテレピン精油を得たり、ロジンが残ったりと。しかしそう単純なものではないといえるでしょう。そもそも、採取した時点の松脂というものはめちゃくちゃ濁っているしゴミも大量に含まれるというものでして、そこから精製の工程があったりて、われわれの使うテレピンバルサムも多くの工程を経ているわけです。たぶん。市販バルサムはそれどころか、ロジンとテレピンあるいはペトロールを混ぜて作っていたりすることもあり、そのようにでもしなければあのような綺麗な松脂にはならぬのでありましょう。 もっとも、この辺についての文献は、あれを読めばいいのかもしれないとか、ある程度の目安はあるのですが、しかし、実際に樹脂を採取したりなどしてから読まぬの気付かぬことも多かろうという意味もあって、読書と実践のバランスを取りつつ、勉学に励んでいるところであります。とりあえず言えることは、市販の画用液のバルサムはかなり人工的なものであろうかと思います。ロジンとテレピンまたは石油系溶剤を混ぜたものであろうかと思いますが、それを明示されているメーカーもあるようです。もちろんそれでいいのだと思います。そしてヴェネツィアテレピン、シュトラスブルクテレピン、カナダバルサムなど、バルサム類は原木や産地に違いではあるのだと思いますが、兎膠の原料が実は兎でなかったりということもわかりつつある今となっては、表示通りそのまま100%信用するという人はもう居ないとは思いますが、そうだとしてもまぁそんなに気にすることでもないかな、と。 以前動画でバルサムについて語ったことがありますが、今思うと画用バルサムについての私の認識は未熟なものであったと言えるでしょう。 上記動画公開のあと鳥越一穂氏はいろいろ調査されていた模様ですので、ご参照ください。 ■ロジン+ターペンタインによる還元バルサム https://torilogy.net/2741 |
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