出口治明著『哲学と宗教全史』読了
ミルチア・エリアーデの『世界宗教史』を読みはじめたのですが、現行の文庫版ではなくてハードカバーの方の第2巻を中古で買いました。文庫の3、4巻にあたると思いますが、初期仏教とキリスト教が含まれいるので1冊としてはなかなかのボリュームでありましょうか。非常に評判の良い本でAmazonのレビューでさえ高評価なのであるけれども、私はちょっと記述があまり親切ではないなというふうに思いまして。人名や単語がどんどん列記されていって、その説明はそれほどされていないか、あるいは中途半端に内容を匂わす程度であり、この辺を読者はどう処理しているのでありましょうかと心配になるところもあります。私自身は仏陀に関する本、キリストの生涯に関する本などここ数年でずいぶん読んでいたので理解できるものの、数年前の自分だったら何を言っているのかほぼわからないよな、と思いまして。しかも知っていたらこれのまとめ文章を読む必要もないのではないか、という気もします。もしかしたら仏陀のところが良くないのかもしれません。キリストのところはけっこうフムフムなるほどという感じで読みましたし、もうちょっと読んでみると意見も変わるかもしれません。しかしとりあえずそちらは保留にし、出口治明著『哲学と宗教全史』を読みました。こちらは、読者に説明しようという気概に満ちており、その辺は現代的であります。もっともある程度知っていないとこれも読めないとは思いますが、敷居はかなり低いのではないかと思います。ページ数の多い分厚い本ではありますが、あっという間に読めてしまったので非常に読みやすい文章なのだと思います。しかしAmazonのレビューは酷評ばなりなので、たぶんこの手の本を読む方々の好むタイプのものではないでありましょう。確かに重厚さみたいなのはないのですが、あえてそういうのをすっぱり排除しているところがよいのだと思うのですが。扱う範囲が広いので、各テーマの詳細までは書かれてはいませんが、各章の最後はさらに勉強したい人の為の書籍が紹介されています。お薦めされている書籍はだいたい書物誕生シリーズなのですが、これは私もどれも気に入っていてお薦めの本であります。他には県図書館の子供用図書室からモーリーン・サワ他『本と図書館の歴史 ラクダの移動図書館から電子書籍まで』というのを借りてきましたが、これは絵本なのですが、けっこう充実した内容でした。子供がこんなの読むわけなかろうという気もするのですが。農文協の絵本など、実は大人対象なのではないかと思われる本も、絵本だと子供用図書室に置いてしまうのはどうかと思いますが、売る方もその売り上げを見込んでの絵本形態なのかもしれません。

| 書籍・雑誌・漫画・アニメ | 10:48 PM | comments (0) | trackback (0) |
鉛白づくり近況
鉛白づくりですが、イーストの交換を忘れてしまったり、さらに夏後半の天候不順により予想より気温が低かったなどの理由により、さほど進行せずに過ぎてしまいした。実はコチニールをいじっていたら、すっかり忘れてしまっていたというのもあるのですが、まめにイーストを交換するというのは、簡単そうでなかなか難しいものです。
鉛白

鉛板を入れているプラ容器を多少揺すると、鉛白が落ちます。
鉛白
鉛板を吊しておくという、ドイツ製法であれば、鉛白はどんどん下に落ちていくのかもしれません。次回は縦方向に高さのあるコンテナにして、吊してやってみるというのもよいかもしれません。

鉛板も再びむき出しになってここからまた反応を継続させていくよう努めたいと思います。
鉛白
ワインビネガーを一度捨てて、コンテナを洗って、再び材料類を投入しておきました。

今のところ集まった鉛白は以下の量です。
鉛白
ちなみに鉛板があまり減っていないように見える割に、鉛白はそれなりに取れるので、炭素を取り込んだりした分、体積が増えるのかもしれないというふうに思ってしまったりもしますが、おそらくは空洞が多いだけで、油で練ったりすると、顔料の見た目よりも体積が減って、大した量の絵具はできなかったりします。昔Narural Pigmentsから購入した、けっこうな価格のするスタック法鉛白も、苦労して練ったら油絵具としてはとても少なかったりして、しょんぼりしたものです。鉛白を生成したりするのは、それほど手間ではなく楽しい工程ですが、ここから油絵具にするというのは、けっこう困難でときに力業になるかもしれませんので、その辺の対策を考えているところであります。

| 絵画材料 | 08:39 PM | comments (0) | trackback (0) |
コチニールでレーキ顔料づくりを試みてみました。
引き続きレーキ顔料づくりを続けておりますが、試行錯誤中ですので、以下は自分用メモみたいなものです。情報に大した信憑性はないと思っていただければと思います。

まずは、染料店のミョウバンを購入しました。スーパーの焼ミョウバンはアンモニウムミョウバンが多いけれども、こちらはカリウムミョウバンであり、どちらがレーキ顔料に適しているか調べてみようとしたけれども、どちらでもよいみたいである。アンモニウムミョウバンにもカリウムミョウバンにも、生ミョウバンと焼ミョウバンがあり、染料店から購入したものはいずれもカリウムミョウバンでした。
生ミョウバンか焼ミョウバンかの違いは、処方において量が異なるという点と、溶けやすさや、溶ける温度に違いあるようで、レーキ顔料を作る際には、その成否にかかわることもあるし、色味にも係わる要素となりえそうです。焼ミョウバンは水を含まないので、重量で計った際には生ミョウバンの処方の半分で良い、らしいのだけれども、そもそも焼ミョウバンか生ミョウバンかを明示していないことも多く、この辺はどちらのことを指して処方を述べているのかわからないこともあります。

今回はコチニールを使ってやります。やはり主役はコチニールと言えるでしょう。実は掃除中に引き出しなどを漁っていたら、合計で150gのコチニールが発掘されまして、これを活用して実験をやってみるのがよろしかろうかな、と。いったい何年前に買ったものか、下手すると10年以上経ってそうなものもありましたが、いよいよ役立ってくれそうです。

今回は15gのコチニールを使用しすることしました。
コチニールでレーキ顔料
コチニールは事前に乳鉢で細かく砕いておきましたが、これを綿布でくるむなどはせずに、湯の中にそのまま入れました。約1リットルの水の中で、20分ほど煮出して色を出しました。
コチニールでレーキ顔料
鍋は金属の影響がでないようにホウロウ鍋を使用しております。煮出して色が出たあとにまずはテトロンという、シルクスクリーンで使う細かいメッシュの布で濾して大きめの破片を取り除き、さらにコーヒーフィルターで濾過して細かなゴミも取り除きました。コチニールに限らず染料素材の残渣は丁寧に取り除くべきであろうかと思います(なお、後で外人youtuberの映像をみたら、ミョウバンも入れて溶かしたあとにフィルタリングしていたので、確かにその方が効率がよろしいですな。)。そのような行程を経るうちに蒸発するなどして、1リットルの水はだいたい600mlくらいの染液になっておりました。
コチニールは色の出方がすごいので、ちょっと多く使いすぎたかもしれないという不安はありますが、そこは好みの問題なのかもしれません。この染液に対して45gの生カリウムミョウバンを入れることにしました。染液を再び80℃くらいまで上げて、ミョウバンを投入します。生ミョウバンはそれほど高い温度が必要というわけではありませんが、念のためこのくらいの温度にしております。よく撹拌しつつミョウバンを溶かします。ミョウバンが入れば当然色も変化します。コチニールの場合はこの時点ではパープルがかった染液に見えるようになるかと思います。それと同時に別の容器に炭酸ナトリウム液を作っておきます。500mlビーカーに400mlくらいの湯を入れ、そこにスプーンで5杯の炭酸ナトリウムを入れました。これは様子をみながら逐次投入するので、念のためちょっと多めに用意しておくけばよろしいかと思います。ちなみに炭酸ナトリウムは洗濯用のものを使うことが多いと思いますが、私はコンニャク作り用食品添加物というものを買っております。洗濯用の製品は妙な効能などいろいろ書いてあったりして、余計な成分が入ってないか心配になったもので。
コチニールでレーキ顔料

さて、コチニール染液は1000ml容器に移し、念のためミョウバンとの反応がしっかり行われることを待つ意味で、染液が50℃くらいになるまで待ちました。炭酸ナトリウム液の方もだいたい同じように50℃くらいになったところで、コチニール染液の中に少し炭酸ナトリウム液を入れます。たまたま閲覧した外人youtuberが温度が大事だと言っておりましたので。しかし何度なのかはわからず。発泡して泡が出てきますので、少しずつ入れねばなりません。一気に入れると溢れ出すことがあります。泡だっているものを撹拌し、ガスが抜けて少し落ち着いたら、再びカリウム液を追加するというのを繰り返します。
コチニールでレーキ顔料
いつしかカリウム液を入れても反応が鈍くなり、そして泡もでなくなってきたところで、よく撹拌したのちしばし放置します。色の付いた顔料?が沈殿して下の方におりてゆき、上層には透明な液体の層ができます。そのまま一晩放置しました。

それからコーヒーフィルターで濾しますと、ねっとりした顔料が残るので、フィルターを開いて乾燥させます。
コチニールでレーキ顔料
乾燥には3~4日かかるということで、この後の工程は後日報告致します。

さて、ミョウバンを少なめに入れて試してみました。先ほどは45g入れましたが、今度に15gにしておきました。ミョウバンの量で色を調整できるかどうか試したかったもので。約600mlの染液に15gですと、カリウム液を入れた際に、かなり早い段階で発泡も終わってしまいました。

やはりミョウバンが少なかったといえるでしょう。出来た顔料は少なく、染液がだいぶ無駄になったという印象です。なお色の違いは顔料が完成してみないとわかりませんので、また後日ということで。

実はこの後に乾燥した顔料を細かくする工程があるのですが、そこが悩みの種でして、乳鉢乳棒で砕いたのちに、練り棒と大理石パレット上で練っていくわけですが、意外と顔料が固くて、どうも大理石パレットでは、うまく行かないのでは。大理石というのは大して高い硬度はないので、何か高硬度のパレットが必要になるのではないか、という気がしているところです。もっとも、これは他の顔料でもいつも思っていることなので、今更ではありますが。

| 絵画材料 | 11:44 PM | comments (2) | trackback (0) |
松田壽男(著)『古代の朱』他読了
松田壽男(著)『古代の朱』を読みました。『丹生の研究 歴史地理学から見た日本の水銀』の方が有名ですが、こちらは中古価格が高騰しており入手はあきらめて、一般読者向けに書き下したという『古代の朱』の方を読みましたが、これでも充分なボリュームでした。バーミリオン、硫化水銀、あるいは水銀というものにへの関心が非常に高まる一冊であったといえましょう。私は赤い色が好きでして、バーミリオンやカドミウムレッドはよく使います。絵画用途ではバーミリオンは変色しやすいので、現代ではカドミウムレッドに置き換えるよう言われておりますが、しかし、これを読んだらバーミリオンを使わずにはおれないところです。と言ってもふつうは硫黄と水銀を掛け合わせた合成バーミリオンしかふつうは油絵具にはありませんが、それも西洋では中世以来の伝統があるといえるでしょう。しかしやはり天然辰砂も使いたくなるというものです。日本画の岩絵具ではありますけれども、油絵具にしたらどうなのでしょうか。
さて、『古代の朱』は一般向けに書かれたとは言っても、だいぶ年季が入っておりますので、少々読みにくいところはあるかと思います。私は他にも日本の朱やその他の金属関連の本も買ってはみたのですが、
蒲池明弘(著)『邪馬台国は「朱の王国」』が面白かったです。松田壽男に非常に影響された内容であり、そこから邪馬台国の話になるという、学術的な本というよりは一般向けの読み物であるのでしょうけれども、この人は文章がとてもうまいです。ちょっと前掲の本で意味不明だった部分もすんなり理解できたりします。ちなみにこれらを読んで、それからいろいろ調べていたのですが、youtubeに無断アップロードされていると思われる「所さんの目がテン」という番組の水銀の回が非常によくできていたので、消されてしまう前に一度見ておくといいんじゃないかと思います。

それから、文化財保存修復学会第43回大会 研究発表集が届きました。USBメモリ版をリクエストしましたので、このままどこかにしまったりしたら、そのまま無くてしてしまう恐れもありますので、気になるものをその日のうちに読むことにしました。やはり顔料と関わりのあるものをピックアップして読んでしまうわけですが、「嘉永年間の役者絵に用いられた石黄の分析」、「鉛金属の腐食と空気環境との関係についての調査事例」、「東海市指定文化財「釈迦十六善神図」「阿弥陀如来象」の修復及び調査報告」、「西洋中世の処方に基づいた青色人工顔料の歴史的考察」がいずれも顔料に係わるテーマで勉強になりました。特に「西洋中世の処方に基づいた青色人工顔料の歴史的考察」は今後が楽しみです。

レーキ顔料づくりの方はコチニールに移行したいところですが、National Gallery Technical Bulletin Volume26にThe Technology of Red Lake Pigment Manufacture: Study of the Dyestuff Substrateという記事があったのだけれども、これはなかなな優秀そうな情報源であります。でも、今読むと理解が半端になりそうなので、まずは現在の知識でコチニールをレーキ化しつつ一通り材料を集め、その後に目を通した方がよさそうであります。しかし、この号は2005年に購入して放置しておりましたが、改めて開いてみたら、面白そうな記事ばかりであります。買ってほっとしてしまうというのが一番よくない気がしますが、やっぱり何かの切っ掛けがないと素通りしてしまうということもありますので、こういうことも何かの縁なのでありましょう。なお、現在はwebで公開されております。

| 書籍・雑誌・漫画・アニメ | 11:44 PM | comments (0) | trackback (0) |
鉛白途中経過

左はイースト(+砂糖)の皿にゼラチンを少量添加したもの。
中央はイースト(+砂糖)だけの皿(反応が早く終わるので、ガス放出量は多いけれども、ときどき皿の中身を新しくしてやらねばならない)
右はイーストなし。

というわけで、ぱっと見た比較ですが、イースト無しはさすがに反応が少ないのですが、他の2つの進行に大きな差はないように思えます。定期的にイースト交換している方が若干進行は速そうにも思えますが、時間的な余裕がない日々のなかでは、それも難しいことを考えれば、ゼラチンを少々添加して放置しておける方が効率的であろうと思います。

二酸化炭素は空気(窒素と酸)よりも比重が重いという助言を頂きましたので、対策を考えたいところですが、今回の場合は応急処置として、百均のロートとエルボー型塩ビ管を組み合わせて、誘導してみることにしました。

ちなみに150円ほどで完成しました。

気温は30℃前後が丁度いいとは聞いておりましたので、夏場に実行したわけですが、ここ数日天候が悪くて条件は悪くなっております。当面天候の回復はなさそうです。今後の処理などいろいろ気になるところはあり、それなりに調べております。しかし最近、松田壽男の朱に関する本を読みまして、辰砂の方も気になっておりまして、ヤフオク等で辰砂を収集しておりまして、うっかり鉛白のことを忘れてしまいそうになります。鉛も水銀も現代では異様に嫌われておりますが、これほど魅力的な金属もなかなかないでありましょう。

| 絵画材料 | 12:34 AM | comments (0) | trackback (0) |

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