支持体と地塗り (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) [コメントする]

支持体と地塗り (6)」からの続き。


支持体と地塗り (7)


RE:RE: はじめての白亜地

管理人 さんのコメント
 (2004/07/18 05:05:29)


REENEさん、

説明不足のせいで誤解を与えたかもしれませんが、「ヤスリがけをし、塗れた雑巾で表面を拭いたら溶けた」とありましたので、そのようなときに気を遣って作業すると良いのではないかと思ったわけです。

ヤスリがけを行なうと摩擦熱が発生し、そこに水が加われば、膠の地塗りは溶けやすくなります。例えば、アクリルジェッソなら水を付けながら耐水ペーパーで磨くことも可能ですが、白亜地の場合は摩擦熱も加わって膠が溶けて支持体が見えてしまったりします。今回は水を使わずにペーパーがけしていると思いますが、熱で柔らかくなったところに、濡れ雑巾で拭いたので溶けたということも考えられます。しかし、雑巾が濡れすぎていると普通に溶けそうですが。

それと、やすりがけすると表面にカスが出てきて、それを拭くために濡れ雑巾で拭いたのだと思いますが、カスには膠も混ざっていて、それが水を吸んでねばねばしたために、地塗りが溶けたように見えた可能性もあります。

試しにテンペラ技法で何か描いてみるといいと思いますよ。

なお、明礬で非水溶性に近づける話は、マックス・デルナーにも書いてあるので、REENEさんあたりも持っているかと思います。

では。


麻生地の入手方法

koyan さんのコメント
 (2004/09/08 17:12:18 -
E-Mail)

京都市に住んでいるものです。キャンバスにするための麻の生地を探しているのですが、幅のあるものが近隣でなかなか見つかりません。問屋さんをいくつか見て回ったんですが、幅が1mくらい、大きいものでも1.5mどまりで・・・。

大画面にも応用できるような、2m幅くらいのものが手に入る京都市内のお店をご存知の方、よろしくお願いします。


おか蛙 さんのコメント
 (2005/02/19 17:50:24)

地塗りの方法を探していて辿り着きました。
参考にさせて頂いてます。
いきなり100号を作っている大馬鹿者なんですが、自作でパネルを作ったので、強度的のかなり不安です。安いラワンで、しかもホームセンターではB全位のサイズまでしかなく、2枚継ぎで…。
20cm間隔で縦横に桟を入れて、交差部分に全て補強金具を付けました。これでなんとか…と思う程度にはなったのですが、非常に重いし…。
もっと早くにここを見ていれば良かった、と思いますが、三月末までに作品を仕上げなければならず、今回はこれでやってみようと思います。

皆さんは大作作られる時に、パネルは購入されていますか?また、軽く丈夫に作る方法があればお教えください。


クレサンのキャンバス

古吉 弘 さんのコメント
 (2006/01/04 15:19:19)

どなたか詳しい方いらっしゃいましたら教えていただきたいのですが、クレサンのキャンバスってピンと張ったはずなのにいつのまにか弛むということありませんか?
はじめは張り方が悪いのかと思っていましたが、雨が二日続いた日にしっかりと張り上げたのに弛んでしまいます。裏返しに張ってニカワと石膏と亜鉛華の地塗りをしたときも弛みました。日本のキャンバスではこのようなことが私の経験ではおこっていません。そういえばヨーロッパではユルユルに張ったキャンバスに制作して完成したら張り直したり、クサビのついた木枠に張ったりしていますが、ヨーロッパでは弛むことは前提になっているのでしょうか?また、緩んでしまったキャンバスから失敗無く弛みをとるにはどういう方法が最善でしょうか?


クレサンのキャンバスについて

中村 さんのコメント
 (2006/01/25 09:26:37)

前に購入した時にキャンバスにラベルが貼ってあったのですが、そこには
「湿度の低い時に張って下さい。低温、多湿の時に張ると
後日キャンバスがゆるむ事があります」
と、書いてありますが・・・

雨の日の後に張ったという事ですので、その辺が原因なのでは・・・?


御礼

古吉 弘 さんのコメント
 (2006/01/27 23:48:08)

中村さま
レス誠に有難うございました。
その後3人の作家先生から、乾燥した日に張らないと弛むと教えていただきましたが、ラベルに書いてあるのでしたら間違いないですね。
長い間キャンバスは湿気の多い日に張る物とばかり思ってきましたが、おかげさまで疑問がとけました。
重ねて御礼申し上げます。


カゼ・アルティによる地塗り

mitsu さんのコメント
 (2006/04/18 23:57:09)

はじめまして、以前こちらの掲示板でカゼ・アルティの使用法について〜地塗りの乾燥後に地の吸収性を調整する為にルツーセを塗布する〜という書きこみがあったんですが、ルツーセを塗布した後の油による下書きは完全に乾ききるまで待った方がいいのでしょうか?
それとも生乾きの上からでも大丈夫なのでしょうか?
アドバイスよろしくお願いします。


Re. カゼ・アルティによる地塗り

miyabyo さんのコメント
 (2006/04/21 01:45:55)


初めまして、ミヤビヨです。
以下記しますのは、カゼ・アルティに限定するものではなく、膠による下地の場合も含むと考えてください。
調査された昔日の作品で、カゼインを使用した下地の例は稀ですから。

≪地塗りの乾燥後に地の吸収性を調整する為にルツーセを塗布する≫件は、

画材&技法 全般 (7)〜(8)の、Ukaさんとのやり取りのなかでも触れていますので、まず、それを参考にしてください。


≪ルツーセを塗布した後の油による下書(*下描)きは完全に乾ききるまで待った方がいいのでしょうか?≫

どのような絵を描こうとされるかによっても変わってきます。

例えば、15世紀頃のフランドルの絵画の下素描についての研究論文である
●Périer-D’Ieteren, C.,“La technique picturale de la peinture flamande du XVe siecle”, La Pittura nel XIV e XV Secolo : Il Contributo dell’ Analisi Tecnica alla Storia dell’ Arte. Atti del XXIV Congresso Internazionale di Storia dell’ Arte, vol. 3, pp. 7-71, Bologna, 1983 
や、ルネサンス期の絵画の下素描の展覧会をやったロンドンナショナルギャラリーのカタログである
●Bomford, David (edited), “Art in the Making – Underdrawings in Renaissance Paintings”, National Gallery, London, 2002.
などを参照されると分かりますが、生乾きのまま絵画層を施した形跡はありません。
下素描が滲んでいる作品が多ければ、生乾きのままでも描かれた、ということはいえるかもしれませんが、しっかり残っていることの方が圧倒的ですから、完全乾燥を待って描かれたかどうかはともかく、下素描がその上に来る絵画層のヴィヒクルによって滲まない程度に乾燥を待って描かれたといえます。
また、下素描には、黒系インクを用いることが多く、水溶性メジュームも使用されました。


 ラファエロを例にとると、
●Jill Dunkerton / Nicholas Penny, The Infra-red Examination of Raphael's Garvagh Madonna, National Gallery Technical Bulletin, vol. 14, (1993) pp. 6-21.

に載せられたマドンナの顔の部分写真には、びっくりするほど克明に下素描が見えます。

17世紀頃になると、油性ヴィヒクルによる土顔料の茶系絵具で下素描したものが圧倒的に多くなります。
そして、それ以前の下素描ほど乾燥を待って描かれていない作品も多く見かけられます。

一方、近世以降の絵画の場合は、あたり(見当)をつける程度の下素描(下素描なしのものを除く)が多く、絵画層によって描き消されたものも多いことから、そうした作品は乾燥を待つことなく描かれているといってよいのではないでしょうか。

以上のように、時代や画法によりまちまちです。下素描をどのように絵画層に生かしたいのかにより、ある程度乾燥させるのが良いのか、そうする必要が無いのかが決まるものと思います。

簡単にお答えしました。


その他の下素描用画材 補足

miyabyo さんのコメント
 (2006/04/23 02:09:57)

前回は、ご質問が、地の吸収性を調整した後の「油による下素描」についてでしたので、もっぱら溶剤を使用した下素描を想定して記しましたが、当然ながらそれ以外に、溶剤を使用しない下素描もあります。

現在、稀にしか使わなくなっていますが、シルヴァー・ポイントなどの金属製の尖筆や黒鉛などのチョークがそれです。
むしろこれら溶剤を用いない材料の方が普通に使用されたようです。

私自身は、パネルの支持体へ下地を施し、市販品のルツーセを希釈したり自家製絶縁層を施したりといったことは、何枚もまとめて行いますので、結果として生乾きの状態ではありません。
そのまま使うか、描く前に再度インプリマトゥーラとして塗るかは、描きたい内容によりまちまちです。
ちなみに、私は半照り状態を比較的好みます。

いずれにせよ、絶縁層は同じところを何度も塗るものでなく、一気に塗るよう心がけています。


カゼ・アルティによる地塗り

mitsu さんのコメント
 (2006/04/24 13:12:18)

miyabyo さんレスありがとうございます!
すいません、学校の課題等でしばらくパソコンから離れていた為レス遅れました。
私の質問内容があまりにも漠然とし過ぎていた事も深くお詫びします。
今紹介頂いた過去ログ等を読んでいたところ、新たに疑問が沸いてきたのですが一度頭の中で整理したいので少し時間がかかりますが明日中には地塗りの件を含めレスしたいと思います。


HPにある半油性地の作り方について

m さんのコメント
 (2006/06/20 16:35:33 -
E-Mail)

管理人様へ
はじめまして。こちらのHPを参考にさせてもらってます、芸大生mです。
こちらのHPにある半油性地を作ろうと思っているのですが、質問があります。
お早いお返事をお待ちしています。

■材料と道具・・・の比率表では、黄身は書かれていないのに、
■作り方・・・では、突然、黄身が出てきてきます。
■作り方・・・の始めに「200CCの膠水を用意」とありますが、200CCの膠水に対して、鶏卵一個分の黄身・・・という比率なのでしょうか?

それとも鶏卵は入れなくても入れても、どちらでもいいのでしょうか?

別の方法で、卵なしで半油性地を作ったことがあるのですが、
こちらの作り方のコメントに
「鶏卵を入れることでより地の強度を高めることができる」
とあったので是非とも試したいと思います。
また、黄身があるのとないのではどういった違いがでるのかも実験して知りたいと思っています。
お返事をどうぞよろしくお願いします。


HPにある半油性地の作り方について

沙羅ゐ さんのコメント
 (2006/06/29 22:24:44)

管理人ではないですが一言。
おそらくmさんのご想像の通りだと思います。
ARTNAVIのほうにも卵黄を入れるレシピが紹介されていますのでご参考までに。


石膏地について

yumi さんのコメント
 (2007/06/12 18:55:53)

はじめまして
初めてこちらにお邪魔させていただきます

石膏地についての質問なのですが
絵画の地塗り用の石膏としてボローニャ石膏などの二水石膏はよく聞き、私も普段はこれらを使用しているのですが
彫刻用に使う焼石膏を殺す作業をせずに、例えば型に流し込む要領で下地に使ったりということは
しないのでしょうか?もしその方法が可能なら膠などを使わずに水と反応させるだけで固まるから
コスト的にも安上がりだよなあと、かなり貧乏臭い考えが浮かんでしまったのですが・・・

よろしくお願いします


Re.石膏地について

Miyabyo さんのコメント
 (2007/06/13 04:15:22)

yumi さん、初めまして。ミヤビヨです。

結論からいえば、得られる益はない、ということになります。
ただし、後で触れますが、壁画の地塗りに強引に使用するという可能性はここでは除外しておきます。

≪彫刻用に使う焼石膏を殺す作業をせずに、例えば型に流し込む要領で下地に使ったりということはしないのでしょうか?≫

しません。


≪もしその方法が可能なら膠などを使わずに水と反応させるだけで固まるからコスト的にも安上がり≫

固着剤がない状態では、その「地」自体が脆いままであること、また、色材に含まれるヴィヒクルをガンガン吸ってしまい、絵具層そのものも脆くなります。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「しません」と書きましたが、実験ではやっとことがあります。
プラスティック製の容器に、水に溶いた石膏を流し込んで、一定時間放置してから容器をひねって取り出し、数日自然乾燥。
概して、最上部以外は平滑なプラスティックに面していたのでフラットではあるものの、強いていえば、最上層と比較して底部の粒子が幾分粗い傾向があり、最上層は緩やかな凸凹はあるものの肌理が細かくやや光沢あり。
これは自然沈降させているために、ある程度、粒子の粗いものから先に沈殿するというごく自然な現象ということになりますが、若干の気泡のホール痕が観察されました。

この暑さ約5センチの石膏板(膠を含まない)そのものが、支持体と「地」を兼ねたものとして実験。
全体の半分は、日頃下地を平滑にすために使用するエッジのきいた鉄板で削りました。
そのままの部分と平滑にした部分を更に半分に区切って、一方を膠水で絵具層の吸収を抑えるための調整を実施。
こうして4種類の「地」を作り、一直線に油絵具のランブ黒を塗布。希釈剤で薄めた絵具とチューブ絵具をそのままのものの二本の線。
A.フラットな削り面+膠の目止めなし(平滑)
B.フラットな削り面+膠の目止め有り(平滑)
C.未加工+膠の目止め有り(緩やかな凸凹)
D.未加工+膠の目止めなし(緩やかな凸凹)

その結果は、少なくともA.は顔料の油分がほとんどなく、かさかさ状態で、私は使う気が失せたことでした。
A.以外は、D.がやや不満という程度で、それぞれにニュアンスの違いが面白いと感じました。

以上は、擬似的な壁画に相当するため、一定の条件の下では十分使用可能ということです。

しかしながら、
これが、カンヴァスのような「柔らかい支持体」に施すということになれば、まったく異なる。
膠を含まずに地塗りとして塗布するなら、金はかからないが、固化時間、粘度、高温度をして数十ミクロン前後の層を作るということ自体が至難の業(石膏を殺さないといわれていますから)。
仮にできたとしても、大きいサイズでは必ず割れる(振動などで)。
また、パネルの場合は、全面に施さない限り必ず反り、その結果割れる。


≪かなり貧乏臭い考えが浮かんでしまったのですが・・・≫
まったくです。

作家にとって絵面(えづら)を支える大事な「地」に、お金をかけたくない、という理由を掲げて押し切るとするなら、いっそのこと、絵具もケチってください。その方が一貫性があります。
例えば土系顔料だけで描くとか、チントばかりを使うとか。色々工夫して節約できます。
また、ボローニャ石膏(硫酸カルシウム)ではなく、炭酸カルシウムを使うのも手です。


突然ですが、土系顔料このと
先人としてレンブラントがいます。彼の人生は波乱そのものでしたが、例え裕福であった時でも、決して青顔料としてラピスラズリを使わなかったし、絵具の中では土系顔料が圧倒的に多い。最もコストのかからない絵を描いた巨匠です。ただし、ヴィヒクルは非常に研究して用いています。
また、「地」に関してもよく研究していますし、少し話が逸れますが、その研究心は、エッチングに用いる紙にもいえます。
彼はボロ布を溶かして漉いた当時の麻紙に満足せずに、日本の紙を多く用いたことでも有名です。


私はケチる、という考えからではなく、積極的に土系顔料を使っている一人です(最近はめっきり天然物が少なくなりましたが)。
一部の有機系土顔料以外は、不変色で、数千年以上もっています。このような顔料はごくわずかです。


あえて自家製の「地」を施すのであれば、妥協せず大切に「下地作り」を実践なさってください。

いわゆる「現代絵画」としての面白さを狙うのであれば、この限りではありませんが‥‥


参考文献例
土系顔料
●Thomas, Anne Wall,“Colors from the Earth −The Artist’s Guide to Collecting, Preparing, and Using Them”, New York Van Nostrand Reinhold Company(1980)

下地
●金沢美術工芸大学美術工芸研究所『絵画下地の研究―さまざまな地塗り塗料の比較研究−』
 寺田栄次郎 執筆 1991年(非売品)

レンブラント
●Kühn, Hermann,“Untersuchungen zu den Pigmenten und Malgründen Rembrandts, durchgeführt an den Gemälden der Staatlichen Kunstsammlungen Kassel”,Maltechnik / Restauro, Band82, Nr. 1, pp. 25-33, München, 1976.
●Van de Wetering, Ernst,“Rembrandt: The Painter at Work”, Amsterdam University Press, 1997
●Bomford, d. / Brown, C. / Roy, A.,“Art in the Making: Rembrant”, National Gallery, London, 1989 
 2nd edition, 2006. は、メディウムや顔料などの解説が加筆されている
●貴田庄『レンブラントと和紙』八坂書房2006年


染み込む下地

凸ちん さんのコメント
 (2007/07/18 06:52:39)

はじめまして。ビギナーズにしようか迷いましたが技法のことなのでこちらにしました。
小学生が図画の時間に画用紙に水彩で描くようなニュアンス(すぐに乾きしみこむ)を油絵ではできないでしょうか?
見た目が水彩っぽいということではなくそれくらい速く乾く、ある意味描きにくい状態にしたいのです。

こちらで調べた感じでは白亜地が一番近いでしょうか?
難しいことはわかりませんが下地の白さを最大限に生かして色を明るく使いたいです。

条件としては絵の具が染み込むようにすぐに乾燥し、かつ発色のよいもの。無理かもしれませんが艶は残したいです。

水彩絵の具ではやはり発色、種類の点で劣ると思うので油絵の具の方がよいと思いました。油絵の具はたくさんそろってるということもありますが、、、。
できるだけここにあるような白亜地の支持体などの難しい工程よりも簡単なやりかたのほうがよいです、環境的にそこまでやるのは大変ですで、、、。

例えば市販のジェッソのようなものを使ってとか,,。

何かよい方法はありますでしょうか?


Re.「染み込む下地」問題の解決の視点

Miyabyo さんのコメント
 (2007/07/19 15:54:25)

ご質問を、次のように要約してみました。

絵具としては油絵具を使い、指触乾燥までが極力短時間で次々に絵具が乗せていけるようにしたい。
また、「下地の白さを最大限に生かして色を明るく使いたい」。また、絵具の「艶は残したい」。

これを実現するするためには、「染み込む下地」にしたほうが良いのではないかと思っており、「例えば市販のジェッソのようなものを使う」という方法でそれができるのか。



●「染み込む下地」にすることで問題解決はするのか?
油絵具とどれぐらいの期間格闘されておられるのか、油絵具と展色材のあなたなりの適合性をどの程度確認なさっておられるのか、またご自分の描き方にあった下地を探すのにどのような努力をなさってこられたのか、文面ではわかりませんので、そうした経験がほとんどない、という前提で書かせていただきます。

ご質問に似たような思いは、実は芸大・美大受験生にもあります。短時間である程度の完成度を要求されるわけですから、本来あるかもしれない本人の描き方や密度といった個性がまったく出せない、という受験生もいます。そうした画術が使えないとなれば、受験の内容に沿った描き方を人工的にマスターしなければ受かることはない(もちろん、それでも受かってしまう学校はありますが)。

そうした人工的な描き方の一つとして、なるべく次ぎから次に絵具が乗せられるような工夫として、シッカティフ(乾燥剤)を過度に混ぜたり、絵具の量としての密度を出したり等する目的で炭酸カルシウムを混ぜて描くという「禁じ手」を多用することもあります。
大学に入った次点で、そうした人工的な、受験用の描き方やその中で学んだ技術の検証をするか、一旦それを捨てて本来あるかもしれない自分探しをすることになり、それができない多くの学生は脱落する。


●ヴィヒクル(溶油)の工夫
ビギナーの方の質問を拝見していて、油彩画は、リンシード油等の乾性油とテレピン等の希釈剤を適度に油絵具と混ぜて描くもの、と思い込んでおられる方が非常に多いことにびっくりするわけです。
西洋の油彩画の歴史を見ても比較的早い時期から乾性油+樹脂(多くは含油樹脂)で、けっして乾性油+テレピン、ナフサではなかった。テレピンを含油樹脂から単離して使用しだすのはもっと後のことでした。

歴史のことはさておき、せめて樹脂を含むヴィヒクルの処方くらい知っていてほしいと思うのです。
これをヴィヒクルに含むだけで、次に絵具を乗せる時間はかなり短縮できるものです。

次に、樹脂を含むヴィヒクルの中の乾性油を、単なるリンシード油やポピー油でなく、リンシード油+一酸化鉛のブラックオイルに替えて描いてみること、これは更に指触乾燥が早くなります。

今回の問題解決の一つとして是非試みて欲しいものです。
私の意見としては、もしこれでも「待ちきれない」とお感じなら、おそらくあなたには油絵具は向かないのかもしれません。
多少妥協してでも、ポリマー系の絵具など、他の色材の方がよいのかもしれません。


●「染み込む下地」にしたらどうなるのか
これはぜひ、ご自分でおやりになることを勧めます。数100円で実験ができますでしょう。型取り用の石膏を買って四角形の型に流し込んで固化したら平滑な方を表にし、膠などの絶縁層をまったく施さずに濃度の異なる数種の絵具を乗せてみてください。
絵具によっては、この構造では使えないものもありますから注意。

市販のポリマー系の「ジェッソ」の場合
これも是非実験してみてください。乾燥したらそのまま油絵具を乗せた状態と、サンドペーパーなどでややヤスリ掛けした上に乗せる状態とで比較してみてください。

私は、ここにあげた中で言えば、後者のポリマー系の「ジェッソ」をヤスリ掛けした下地が良いと考えます。
ただ、それを使用したら今回のご質問が解消する、とは思えませんが‥‥
それよりも、吸収の度合いによっては、絵具中の油分が失せ、絵具のチョーキングを起こし易くなる場合がありますから、確認しておきましょう。



ぜひ、実験結果をレスしてください。
凸さんと同じような思いを持っておられる方の参考になると思いますので。


短信:「画術にまつわる文献6」は夏の旅行が終わってからにします。それまで怠けさせてください。


Re.「染み込む下地」問題の解決の視点

凸ちん さんのコメント
 (2007/07/21 03:11:03)

Miyabyoさんありがとうございます。さっそく参考にさせていただきます。

お返事を見る前に石膏地(カセアルティーという水でぬれるもの)に膠で溶いたチタニウムを塗ったもののやりかたを画材やさんで教えてもらい試しました。これは膠を溶かしたりなどの手間を省いて白亜地(石膏地)を作る方法として絵の具メーカーさんにも聞いてもらったものです。

さっそく下地を作り、実験用に油絵の具を塗ったところ染込みは完璧なんですが艶だけでなく発色の良さも消えてしまうようですね。(私にはそう見えました)

早く乾いて欲しいというのは受験生が望むもの、次々絵の具を載せていくという感じではなく、自分の絵をなぞりたくないということなんです。
色が浮いてる(透明すぎるとかで)せっかく描いたものをその理由でなぞるということをしないで済むようにしたいと思いました。
間違ってるかもしれませんが私の場合そういう理由で線をなぞると決まって甘くというか弱くなってしまう気がするんです。

今は自分の全身を鏡を見て描いてるんですが最初に自分の姿を見て描いた線は下手くそでも良いんですが、次に薄いとかの理由でなぞる時は描かれたその線を見てなぞるという作業になってしまうのでそれはしたくないのです。

絵というのはそういうものなのかも知れませんが見て描いていきたかったので、もし吸い込む所に描けたら1回目の線や色でもしっかりと定着していくんじゃないかと思ったのと、修正しにくい方が良いかなあと思いました。
水彩じゃなくて油絵でやるのはたまたま油絵の道具があるというのもあると思いますが、絵の具の発色が艶があって良いものがいいと思ったからです。

Miyabyoさんに教えていただいたことも含めて何枚か描いてみようと思います。


支持体と地塗り (8)」へ続く。


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