The Technology of Red Lake Pigment Manufacture: Study of the Dyestuff Substrate
National Gallery Technical Bulletin Vol.26にThe Technology of Red Lake Pigment Manufacture: Study of the Dyestuff Substrateという、赤レーキ顔料に関する記事が載っているのですが、ようやく目を通しました。
※現在はPDF化されて無料でダウンロードできるようになっています。
https://www.nationalgallery.org.uk/research/research-resources/technical-bulletin/the-technology-of-red-lake-pigment-manufacture-study-of-the-dyestuff-substrate

個人的に気になった点でだけメモしておきたいと思います。まず、古い時代にはレーキを作る際の染料源として、植物や昆虫そのものではなく、染色済みの繊維を使用するのが通例だったようであり、確かに中世の技法に関する本を読むと、染めた布など使っていることがよく見られるので、そういうものなのでしょう。布に染めていたインクを溶かして文字を書くとか、なんか読んだこともありますが。手順的には、染色された繊維からアルカリで染料を抽出し、続いてミョウバンを添加して顔料を沈殿させるという、現在一般的なレーキ作りと逆のプロセスになります。18世紀に入っても文献のレシピはこのようであったとのこと。

そして染料源の繊維は羊毛や絹が使われていたようですが、アルカリで染料を取り出すと、動物性の繊維はいくらか侵されるので、特に羊毛の場合、強いアルカリで染液を取ると、古画のレーキから硫黄その他が分析結果に出てくる模様。絹の場合は染料が出やすいので検出されるほどにはならないようで。

それにしても、有機色材は様々なものが検出されるでしょうから、媒材の特定というだけでも、レーキ顔料の作り方まで含めて、多くの知識がないと間違った結論を引き出しかねないところもありますから、けっこうな知識と経験とそれらを整合する洞察力が要るであろうと思われるところで、なかなか高度な仕事であるなと思ったのですが、同時にやはり結論を安易に鵜呑みにしてもいけないだろうなという気もするところです。

しかし、ボロ布を使ったレシピもあったそうなので、昔の繊維の染色というのは色が後から取り出しやすかったのであろうか。今だったら、しっかり媒染剤を考えるなどして、色が出ていかないよう最善の工夫をするわけだけれども、昔は今みたいに頻繁に洗濯をしなかったか、あるいは繊維の種類によっては全く洗濯せずに使うパターンとかあって、ただ染液に浸けただけみたいなケースもあったのかもしれないと、これは私のただの感想ですが。

ところで、18世紀後半には虫や茜などの素材から染液を取りつつ、ミョウバン→アルカリ的な技法が使われてくるようになるみたいですが、間もなく合成の有機色材もどんどん出てくるであろう時期にもさしかかっていたわけですね。

| 絵画材料 | 11:01 PM | comments (0) | trackback (0) |
イトムカ鉱山産の芋辰砂を砕いてみました
松田壽男『古代の朱』に感化されて購入した北海道イトムカ鉱山産の芋辰砂、眺めているだけでも面白いのだけれども、砕いたらどのようになるか確認してみたいところでありますので、乳鉢で砕いて顔料にしてみることにしました。

ヤフオクにて1280円で落札した3.9gの芋辰砂であり、非常に小さいです。

乳鉢においたら、この小ささが際立ちます。


さて、乳鉢と乳棒で砕きます。

辰砂自体は硬度も低く柔らかい鉱物のようですが、確かに軽い力でさくさく砕けてゆきます。孔雀石やラピスラズリなどど比較すると、砕くこと自体は明らかに楽だといえましょう。

辰砂は不純物が多いようで、こちらの写真でも黒っぽいものなどが見えます。不純物の状態に依っても砕きやすさが変わるようです。

しかし、この粗い辰砂の粒の存在感はなかなかインパクトがあります。自分が古代人だったら、やはり墳墓に敷き詰めたくなるであろうところです。もしも自分が岩絵具で制作しているのなら、この時点のものを使いたいような気がします。もしかしたら、油絵でも使えるということもあるかもしれません。

とはいえ、さらに砕いてゆきます。

なんか、予想したよりも、けっこう赤い感じがするのですが。

アラビアゴム水溶液で塗布してみましたが、塗ってみるとあまり赤くはありません。

ただし、私の経験では天然の辰砂とはだいたいこのようなものであるという印象です。洋の東西を問わず、古来より鉛白を焼いてつくる赤、酸化鉄の赤、硫化水銀の赤は名称が錯綜しているケースが多い点も、それらが塗ったときによく似ているからこそなのかもしれません。
しかしやはりここは水簸など、なんらかの方法でより精製してみたいという気持ちはあります。あるいはこのまま油で練ってみたい気もします。

| 絵画材料 | 09:21 PM | comments (0) | trackback (0) |
自製鉛白を油で練ってみました。
鉛白づくりですが、前回は出来た顔料を水で洗ったところでまで進みましたが、その後、さらにもう一回水で洗って、その後乾燥するのを待っておりました。そして↓のような感じなっております。

前にも書きましたが、この鉛白は微妙に赤みがかった色の顔料が生成されてくる鉛テープから作られた分であり、水で洗った時点で赤みの色は消えたものの、それは屈折率の都合でそう見えるだけで、乾燥したら元に戻るのではないかと心配していましたが、パッと見てちゃんと白いような気がします。いや、じっと眺めていると赤みがかっているような気がしてくるのですが、気のせいかもしれないし、そうでないかもしれないし。でも、当初ははっきりと色がわかったくらいなので、それよりはずっと改善しており、やはり水で洗うことで、変な色が消えたりするという海外サイトの情報は合っていたのであろうか。

まぁ、ともかくとして、油で練ってみたいと思います。今回は油の色が影響を与えないように、ポピーオイルを使用します。その他の助剤は一切入れずにポピーオイルオンリーで練ります。

とりあえず、このくらい練ってみましょう。水に浸けてから乾燥すると、こんなブロック形状になりますが、こういうのを細かくするのはいつも難儀な工程です。手練りなので、欲張ってたくさん練ろうとしてはいけません。

少し油で湿らせてから、練り棒で塊を砕いてゆきます。

乳鉢乳棒でやるのが筋かもしれませんが、なんか乳鉢洗うのも面倒なので、これでよろしいでしょう。この時点で既に油で湿らせておいたのは、鉛白が飛散したりしなくていいかなと考えまして。

いよいよ本格的に練りはじめたところですが、このような感じであります。


ごく少量をとりわけて、それを菊練りみたいに円を描くように広げてゆき薄い膜にするようにしてすり込んでダマを解消してゆきます。

やがて艶のあるペースト状になるので、それを脇に寄せて、さらに次の分を練るというのを繰り返します。

1時間かけてこのくらい練ることができました。

このあとさらに2時間近く、計3時間ほど練りましたが、途中に休憩を挟まないと身体を痛めると思います。スタック法鉛白を練るのはけっこう難儀するものでしたが、慣れてくればいずれ上手くなっていきそうな手応えもあります。実はまだ若干粒状のものが混ざっております。このままもう一巡練ればそれも解消されるとは思いますが、体力的に限界であったのでこのままチューブに詰めました。チューブに入れて2~3週間油と馴染ませたあとにもう1度練ると、むしろその方が完成度が高まるであろうかと思います。何かアドバイスがありましたらコメント欄にお願いします。

| 絵画材料 | 09:37 PM | comments (0) | trackback (0) |
ウェルド顔料を亜麻仁油で練る
昨年入手しました、ウェルド顔料(天然植物由来のレーキ顔料)、炭酸カルシウムをボディとしたものと、ミョウバンを使ったものと2種ありましたが、まずは、ウェルド(炭酸カルシウム)の方を亜麻仁油で練ってみました。

なんとなく、こちらの方が油絵具との相性は良さそうな気がします。炭酸カルシウムがボディなのでけっこうダマがあり、手練りでは少量でも30分はかかりそう。いろも自然な感じのイエローです。赤い絵具はいいものが多数あるので、赤い布ばかり描いておりましたが、これで黄色い布もいけるかもしれません。あとは耐光性がどうか観察したいところです。写本制作の場合はウェルド顔料+水性媒材で全く問題なさそうです。しかし油彩タブロー画ではどうでしょうか。

こちらは炭酸カルシウムではない方のウェルド顔料を亜麻仁油で練ったもの。

屈折率の都合でペーストは暗い色に見えますが、薄く塗布すれば自然な感じの黄色になります。試し塗りしたところでは、結果としては炭酸カルシウム版と差はない色になりました。練るのは炭酸カルシウム版よりだいぶ早く済みます。

試し塗りした結果ですが、数年前に頂いた顔料と比較すると格段に黄色みが増しております。

同じ染料でも製法の研究開発によってこれほど違ってくるわけですね。薬品の投入量とかペーパー等で違ってくるわけでしょうか。

最近私もレーキ顔料づくりに取り組んでいるのですが、どうしても参考にしたい点がありまして、顔料を水に入れ撹拌し、顔料が沈んだあとの上澄みに万能リトマス紙を付けてみましたが、極端なペーハーは示さず、しっかりと中性付近でありました。

それにしてもこの万能リトマス紙では中性付近が不鮮明なので、やはりデジタルペーハー計測器が欲しいところです。ちなみに、上澄みの水の色も透明です。写真ではちょっと濁ってますが、そのまま2時間くらい待つと綺麗な透明になります。やはりプロが作ったものは違います。というわけでいろいろ勉強になりました。私もレーキ顔料作りの経験を積みたいと思います。

| 絵画材料 | 09:33 PM | comments (0) | trackback (0) |
鉛白を水で洗う
夏から作っていた鉛白、だいぶ集まりましたが、ここから絵具にするまでが大変です。最終的にはリンシードオイルで練って、油絵具にするわけですが、そこまでのノウハウはまだあまり解決していないような気がします。

ある鉛テープから作り出した鉛白がピンクがっかっており、これは特定の鉛テープにしか発生したなかったので、原料の方に問題があるのだとは思いますが、こちらを使って、いろいろ試してみたいと思います。


まずは、水で洗浄してみます。水での洗浄というのは必要な工程であろうかと思います。まず、水に溶けるような不純物を取り除けます。変な色がついているときは、水洗いだけで消えることがあるようです。

というわけで、700mlほどの水に入れて撹拌し、顔料が沈むのを待ちました。

なんか、綺麗な純白色になっているように見えます。気のせいかもしれないし、屈折率の影響で見えなくなっただけかもれませんが。

それから強い酸性の蒸気の中で生成された鉛白ですから、酸性の傾向を示すのではないかという心配もあります。水を万能リトマス紙で確認しました。

中性に近いと思われます。実はこの万能リトマス紙、ph5~8あたりの色が似ていて、いまいち判定しずらいのですが、水道水に浸したときと同じ色をしているので、たぶん中性に近いか、あるいはわずかに酸性よりかもしれませんが、少なくとも水道水基準値内くらいではあろうと思われます。700mlの水で1回洗えばphの問題はクリアできるのではないかと考えています。鉛を洗うわけですから、廃液は少ない方がよろしいですし。

他には、塩基性炭酸鉛になりきれていない酢酸鉛も水に溶けやすいという情報もあるので、酢酸鉛除去にもなるのかもしれません。

さて、水を移してすくい上げた鉛白ですが、たいへん被覆力に富んだ立派な鉛白になったように思います。

白さ、明るさも立派なもので透明感みたいな感じはありません。かなり薄く塗布しても白さが強いので、むしろ体質顔料等で割りたいくらいに見えます。

しかし現時点でもなんとなくほんのりとビネガー臭がするのです。数種類の酢を取り扱いましたが、ふつうの市販の穀物酢に比べるとワインビネーが酢の臭いがけっこう強烈です。まぁ、古来染料でもなんでも臭い物ほど性能が良いものなのですが。もう一度水と取り替えて洗浄することにしました。鉛白は重い顔料ですから、すぐに水の底に沈みます。面倒くさがらずにときどき撹拌するのがよいと考えます。

さて、上記の鉛白の写真を見ると、若干粒状感的なものを感じるかと思います。ちょっと大きめの粒的なものがあって、以前他社製スタック方鉛白を練ったときは、なめらかな絵具にするまで少量でも数時間かかったということもありまして、この辺がどうなるか気になるのです。これに関しては手練りでいこうと思います。それでダメならポットミルで延々摺ってからというパターンと試そうと思います。鉛を含むので工程は手短な方が助かるのですが。※この記事を参考にする場合は、毒性があること及び環境への配慮を留意ください。

| 絵画材料 | 09:01 PM | comments (0) | trackback (0) |

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