2016,04,14, Thursday
前回は、50号の木枠に張った生地キャンバスに水を引いたところまで書いたと思います。水を吸ってピンと張った生地は乾くに従って、伸びて緩くなります。それを外して、自作していた30号のパネルに膠で接着します。
![]() ![]() 板に布を貼る場合、板に膠液を塗り、生地にもたっぷりと膠液を付けて、ヘラなどで押し広げつつ貼ることが多いと思いますが、今回は木枠に画布を張るように、キャンバス釘やガンタッカーなどで乾いた亜麻生地を張り、その上から薄い膠液を染みこませ、浸透させて接着したいと思います。その方が布の目が均等になるように張れそうな気がするからです。 なお、修復家志村正治氏が作成したビデオ『基底材』にもこのような貼り方が紹介されています。100号ぐらいの大きなパネルに膠で布を貼る方法として紹介されていたと思います。膠液の濃度は通常使われる10%前後の濃度ではなく3%で貼り付けておりましたが、ただしこれから私がやるように、「釘で生地を張ってから」膠液を染みこませるという工程ではなかったと思います。3%濃度でも充分貼れるという話だけはしっかり覚えていますので、この3%を信じてやってみたいと思います。 キャンバスタックスとガンタッカーを組み合わせつつ、パネルに生地キャンバスを貼りました。 ![]() 言い忘れましたが、パネルは予め膠液を塗布し、乾燥させています。これは前膠と言いますが、これをやっておかないと、板が膠液を吸いすぎて、接着剤不足となってしまいます。それと、膠液を吸って布が縮むことを想定し、釘は多めに打っています。 で、その上から、3%濃度の膠液を熱いうちに塗っていきます。 ![]() 刷毛にたっぷりを染みこませ、塗るというよりは、どっさり膠液を置くような感じで満遍なく塗布していきます。一部だけ浮いてきたりすると失敗ですから、全面にしつこく念入りに膠液を付けます。この辺は念入りにやるわけですが、それほど協力にパネルと膠を接着しなければならないわけではありません。むしろ仮止めくらいの役割でよいと思います。支持体の本体は画布であり、パネルは抑えとしての存在ですから。あるいは何かの理由で分離しなければならないときのことも考えると、接着力はほどほどで充分であると思います。 ![]() 心配なのは、乾燥する工程で布が緩みますから、その影響で凹凸状に波打って固定されるケースです。キャンバス作りでは薄い濃度の前膠などで起こりやすい現象です。 そして、一日経って乾燥した状態です。 ![]() すごく綺麗に、平らに貼られています。私としては充分成功です。これに地塗りをして、支持体の完成となりますが、気が向いたら地塗り工程も書きたいと思います。 |
2016,04,10, Sunday
以前からじっくり描きたいと思っていた主題があり、目下その為の支持体を作っているところです。パネルに亜麻生地キャンバスを貼り、そこに地塗りをするのですが、今回は若干丁寧に作業しているというか、多少実験的なことをしているので、メモしておきたいかと思います。
パネルは下のような感じに、桐製の木枠(M30号)にシナベニヤを貼って作ることにしました。 ![]() 桐木枠はお世辞にも質が良いとは言い難いところがあり、特にホゾの組み合わせが悪くて不安だったりしますが、非常に軽いので、その点だけは大きなメリットと言えます。桐木枠はそのままキャンバスを張ると、特にサイズが大きいときは不安な感じがしますが、シナベニヤを貼ってパネルにすると、途端に立派で且つ軽いパネルが出来て桐材のメリットが生かされるような気がしているのですが、どうでしょう。まぁ、ここらへんは意見が別れそうですが、少なくとも支持体のメインは画布であり、パネルは補助的な役割と考えることにしましょう。 木枠とシナベニアは膠液で接着しています。 ![]() 接着面は、予め膠液を塗って乾くのを待ち、その後に改めて膠液を塗ってから接着しています。予め前膠を施していないと、木材が膠液を吸収して接着剤不足となり、しっかり接着されません。できたパネルは、ベニヤを貼っているにもかかわらず、杉の木枠と同等か、もしかしたらまだ軽いかもしれません(同じサイズの杉木枠が手元にないので、実際に測ったわけではありませんが)。 さて、このパネルに生地キャンバスを貼るわけですが、どの生地を使おうかなぁと悩んでみます。 所有している生地キャンバスは、以下の通り。 ![]() クレサンジャパンから購入したベルギー製キャンバス、3種です。左からNo.014 絹目、No.012 細目、No.09中目となっていますが、中目が最も安く、絹目はかなり高額な商品です。絹目は非常に平滑で細密描写に向いているような気もしますが、フェルメールが当時の一般的な間隔の布を使っていたように、必ずしも細かい目の方が細密描写に適するとは断言できません。そして、膠での地塗りをしたときに平滑過ぎて剥がれないかと不安に感じることもあります。細目はこのサイズのキャンバスだと丁度良いように思います。中目より糸の感覚が狭いので、むしろ丈夫そうな気はしますが、布に厚みも感じて板に貼るにはどうかとも思いましたが、パネルはあくまで仮の存在で、布がメインだと考えるとこの方がいいでしょう。クレサンの中目は細目より糸の感覚が広いようで、後ろが透けて見えるような気さえするし、触った感じも柔らかくて、板に貼るにはむしろ最適な生地ではないかとも思います。テンペラ画などを描くために、天然木の板に布を貼って、厚く石膏ジェッソを塗って支持体を作るとしたら、クレサンの生地キャンバスの中で最も適しているのは中目であると私は思います。 いろいろ思案しましたが、今回は結局細目の生地キャンバスを貼ることにしました。で、いつもはパネルのサイズに合せて布をカットして、膠液でべたべたを貼っていくわけですが、今回は布目も綺麗に貼れるようにと、ひと工夫してみることにしました。 まず、ひとまわり大きな50号のキャンバスに亜麻生地を張ります。 ![]() 張り終わったら、水引きします。お湯に若干の防腐剤を加えたものを刷毛で塗布します。 ![]() 濡れると布は縮まるのですが、木枠に張っている為に、縮むことができずに、布の繊維が広がります。乾くと布は緩んで若干垂れるくらいに伸びています。生地からキャンバスを自作する場合、この水引きをやって、充分に布を伸ばしたのち、釘を抜いて張り直し、膠引きをします。この工程を省くと、膠が乾いた後に、布が凸凹になっていたりします。パネルに貼る場合は板に密着させて張るので、このようなことをしなくても、平らな面になるのですが、今回は念入りに布を伸ばしてみました。より綺麗に布が貼れるのではないかという期待もありまして。 こうして充分に伸ばした布をパネルに貼るわけですが、続きはまたいずれ書きたいと思います。 |
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