東京復活大聖堂(ニコライ堂)
イコン画について、いままで書物などいろいろ読んできましたが、実際に宗教儀礼内でどのように使用されるのか見てみたいと思いまして、東京にある正教会の大聖堂、通称ニコライ堂を訪ねみました。
ニコライ堂

思い立ってすぐに出発しましたが、正教会の教会に足を踏み入れるのは初めてであり、1人で入るのは少し勇気が要りそうだったので、直前に誰か一緒に来てくれないものかと誘ってみたものの、直前過ぎて結局どなたも都合付かず。しかし結果的には1人で行ってむしろよかったです。その日行なわれていたのは「グレゴリイ・パラマの主日聖体礼儀」という聖体礼儀で、3時間ほど続き、3時間ひたすら聖体礼儀の様子を見守っていたため、他の人がいたら退屈してないかと気を使ってしまったところです。
なお、聖堂に入ったところで、見学ですと告げれば、見学の案内と注意事項などを親切に説明してくださいましたので、そんなに恐がることでもなかったんですが。。
通常13:00~17:00(冬季は15:00)の間、聖堂を見学できることになっていますが、後述するイコノスタスの機能を見る意味でも、礼拝に参加して目の当たりにした方がよいかと思います。

見学について注意事項等は下記を参照ください。
■聖堂拝観・伝道会のご案内
http://www.geocities.jp/ynicojp2/seido-haikan.html

カトリックの教会にもイコン画はあり、日本の美術家にとってはイタリア系の黄金背景のテンペラ画を思いだされるかもしれませんが、イコンといえば、まずは正教会(英語でオーソドックス)のイコンを差し置くわけにはいかないでしょう。ギレム・ラモスポーキ(著)『イコンの描き方 ビザンティン式伝統画法』という図書が概要や技法に関して最も参考になるかと思われます。私自身もチェンニーニの書などで、イタリアのテンペラ画のことばかり意識していましたが、イギリスに滞在したときに原書を発見し、ギリシア正教会のイコン画に注目するようになりました。イコン画をはじめ、中世の宗教絵画について、現代の肖像画と同じ感覚で語られている例が見かけられますが、機能も価値観も全く別物である点を体験するのだ大事かと思います。ちょっとした感想であっても、現代の価値観でさらりと述べるわけにはいかないわけです。美術史としても、中世絵画の終わり頃にチマブーエ、ジョット、マサッチョなどと進化して現代に到達するという価値観もあるでしょうが、正教会のイコン画の様式をみれば、そういう価値観もあるな、という具合で、それが絶対というわけではないではない、と言いたいところです。でも、画集など見ているだけでは、ヨーロッパの絵画と比較して取り残された感想を持ってしまうものです。実際に聖体礼儀役割を果たしているところを見ると、印象派だいぶ変わるのではないでしょうか。

とくに注目すべきは、イコノスタスと呼ばれる「至聖所」と「聖所」と呼ばれる木製の祭壇のような壁です。大きなイコン画が連なっていて、3つのドアがついているのですが、この3つ扉がどのように機能するのか実際に見られたということは、たいへん勉強になりました。
正教の聖堂の構造は以下を参照ください。
http://www.orthodoxjapan.jp/tebiki/katachi02.html
聖所に入れるのは信者だけすので、啓蒙所というところで見学します。
聖所と啓蒙所を隔てる四本の柱にイコン画がかかっており、イコン画の前に燭台があります。イコンのすぐ前でたくさんの蝋燭が立てられているため、金箔を貼ったイコンが蝋燭の火の揺らめきでキラキラ光る効果があったわけですが、綺麗なイコン画はガラス付きの額縁に入れられており、炎の光はむしろガラスに反射していました。聖所にあるイコン画では、ガラス付き額縁ではなくて、昔風のイコンの前に蝋燭が点っていましたが、古いと思われるイコンは黒ずんでいました。もともと黒いのか、積年の汚れによるものか、蝋燭の火がとても近いために煤で黒くなるのか。そんなに近いのかというくらい絵のすぐ手前で蝋燭が灯されるので煤が付かないわけはないでしょう。黒くなると、砂で洗ったりすることがあって、地の色が見えてきたり、または丸っきり上書きされて書き直されてしまったりということもあるそうです。

という具合で書いてきましたが、私も正教会やイコン画に詳しいわけではないので、せっかく実際の機能を見ることができましたので、改めて何か読みつつ勉強してみたいと思います。

| 史跡・古墳・名所等 | 10:14 PM | comments (0) | trackback (0) |

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