2014,12,23, Tuesday
前回は、灰汁の中でパテを捏ねるところで終わっておりました。
そして、器の底には、鮮やかな青い顔料が沈んでいました。 ![]() パテは3回目の抽出をしたところで、ボロボロと崩れはじめたので、そこで1個目のパテは抽出を終えることにしました。 それから、2個目のパテも捏ねてみたのですが、こちらは松脂を多く入れすぎた為か、手に粘って作業しづらく、1回目の捏ねまでやって放置してしまっています。 さて、器の底に溜まっているウルトラマリンの顔料をどうするべきかですが、このあと、どうするかというと、チェンニーニの技法書には、洗浄の指示などがありません。樹脂が付いているので顔料を洗うのか、それとも樹脂が付いたままの方が屈折率が上がってより青く見えるのか、等々、論文では考察されていますが、ひとまず熱湯で洗ってみることにしました。これはどうも、あまりいい方法ではないようです。分離した樹脂に細かい顔料が付着して、それも一緒に流してしまいました。まずは、捏ねたときと似たような濃度に炭酸カリウムを入れ、アルカリ性にしたお湯で洗う方がよかったのだと思います。その後、pHが気になる場合は、普通のお湯で洗うとよかったのかも。しかし、結局何が一番いいかは私にはわかりませんが。 抽出前のラピスラズリ粉末と、抽出後のウルトラマリンの2者を、アラビアゴム水溶液を使って、顔料を紙に塗布してみました。 ![]() 写真では違いが伝わらないかもしれませんが、抽出後のウルトラマリンの方が鮮やかな青です。 ちなみに、油絵具としての比較は画家の鳥越一穂氏が既にブログに写真を掲載されておりますので、当方は水性の技法で試し塗りすることにしたわけです。 参考までに↓顔料をそのまま紙の上に置いて比較してみました。 ![]() 顔料の状態で比較すると、ラピスラズリ粉末は灰色がかった薄い水色、抽出ウルトラマリンはそれよりやや鮮やかな水色といった感じです。油やアラビアゴム水溶液などと混ぜると、ラピスラズリ粉末は黒っぽい青になります。紺と言ってもいいかもしれませんが、黒っぽくて、透明で被服力がありません。水に混ぜただけでも、顔料の大半が消えてなくなったかのごとくに透明化します。ウルトラマリンの方が一応、青であり、濡れて極端に透明になったり、黒っぽくなったりということがありません。やはり青の部分が多いと言えるでしょう。しかし、劇的な変化かと言えば、うわぁビックリというほどではありませんが、青として実用になるかならないかと境くらいには違うといえます。今回は意図的に質の悪いラピスラズリ原石を使用したので、それなりの青しか得られなかったのだと思いますが、それでも原石の粉末と、抽出後の違いは充分認識できたということで、ひとまず目的は達成しました。 |
2014,12,10, Wednesday
前回投稿した水蒸気蒸留についてのエントリーは、いくつか問題点を指摘されましたので、書き直すことにします。
いろいろと画材の実験をしてきましたが、残された課題として非常に気になっているのが、「蒸留」です。 油彩画で使用する揮発性油は主にテレピン、ペトロール、スパイクラベンダーオイルですが、そのうち、テレピンとスパイクラベンダーは水蒸気蒸留によって抽出されると、どの本にも書いてあります。ペトロールの方は石油系ですので、原油から大がかりな装置で「分留」されるのだと思いますが、その件は後回しにして、まずは「水蒸気蒸留」です。 三省堂 大辞林では以下のように説明されています。 ---- 水にほとんど溶けない物質に水を加えたり水蒸気を吹きこんだりして,水蒸気とともに物質中の揮発成分を蒸留すること。それぞれの物質の沸点より低い温度で蒸留できる。植物の精油などの分離・精製に用いる。 ---- スパイクラベンダーはだいぶ前から庭に植えているのですが、冬ですから、あまり状態はよくありません。 松脂(バルサム)から、テレビン油を蒸留したいと考えています。 蒸留器が必要になるのですが、実は自分でも完全にすっかり忘れていたのですが、数年前に買ったことがありました。 http://www.cad-red.com/blog/jpn/index.php?e=820 これを使ってやってみたいかと考えています。 もし、手近な道具を組み合わせて蒸留器を作るとしたら、以下のような装置が、なかなか素晴らしいんじゃないでしょうか。 ■卓上ハーブ蒸留器の作り方 http://homepage3.nifty.com/jubus/Cgrof/Cgrof.html なお、先だって、水蒸気を使わない蒸留をやってみたいかなとも考えています。例えばワインからエタノールを蒸留するとか。 ↓のような感じで。 ■枝つきフラスコを使った蒸留 01 https://www.youtube.com/watch?v=vNx-mrQlKKQ |
2014,12,10, Wednesday
前回はラピスラズリ粉末と、松脂、マスチック樹脂、蜜蝋によるパテをつくったところで終わりました。パテづくりから10日ほど経っておりますが、チェンニーニによるとこのパテはかなり長く放置していても作業に支障はないようです。
いよいよ灰汁による抽出です。 今回も基本的に金沢美術工芸大学の論文(金沢美術工芸大学紀要 50, 120-111, 2006-03-31)に沿っております。 また、既に鳥越一穂先生が、同様に実践してブログに投稿されておりますので、そちらも参照しつつ行ないました。 論文に沿り、灰の代わりに炭酸カリウムを使用します。 ![]() 1000ccの水に4gの炭酸カリウムを入れました。 温度は40℃強ではじめて、35℃前後になったところで、温め直しつつ、20~30分くらいを目安に捏ねます。 ![]() 数分で灰汁の温度が下がってくるので、熱い湯を入れた鍋に入れて、湯煎のような状態にして、ときどき温度を上げました。 ![]() 20分揉みましたが、青い顔料が出てくる気配は全くありません。全く、です。 ![]() が、しばらく待って沈殿したら、底の方にわずかですが、青い顔料が溜まっていることに気がつきました。 パテが白くなってしまい、もう既に青い顔料が無くなっているのかと心配になってきました。 5分休憩したあと、別の器に新たな灰汁を入れて、捏ねはじめました。 2回目はどんどん青い顔料が出て、底に溜まってゆくのがわかり、楽しい作業となりました。 ![]() 左が1回目、右が2回目です。 ↓25本ほど捏ね続け、沈殿したのち上澄みを捨てたところです。 ![]() すっごい、鮮やかな青ですね。 私は2回目を終えたところで、力尽きました。 パテがだいぶ白くなっているのですが、3回目いけるのでしょうか? ![]() もう一個のパテも後日試そうと思います。 予想なのですが、灰汁の濃度や温度の影響もあるのかもしれませんが、それよりも最初のうち青い顔料がなかなか出てこないというのが普通であって、それは気にせずに2度目以降に期待するべきものなのかもしれません。濃度や温度が高いと、青以外の部分や、パテの成分などの不純物も多く沈殿しそうなので、次回はやや濃度を低く、そして温度も上げすぎない状態で、粘り強く捏ね続けてみようかと思います。
| 絵画材料 | 03:41 AM | comments (0) | trackback (x) |
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