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画材&技法 全般 (15)」からの続き。


画材&技法 全般 (16)


シルバーホワイトと亜鉛華(ジンクホワイト)

ホルベイン工業・荒木 さんのコメント
 (2006/02/28 19:21:56 -
E-Mail Web)

絵具メーカー「ホルベイン工業」の荒木と云います。

本掲示板」の「画材&技法 全般(15)」の「九州男児さん」のコメント(2005/12/3)への「ミチヨさん」のコメント(2006/01/06)に触れられている記述につきまして、小社のお客様からご指摘を賜りましたので、茲許ご連絡まいらせます。

「ミチヨさん」のコメントに「ま…シルバーホワイトはミノー社のもの以外亜鉛華が入ってるそうですが。」とありましたが、亜鉛華(ジンクホワイト)の使用については各社まちまちで、亜鉛華の混入された品と、されていない品とがあります。
小社の場合は後者、つまり「亜鉛華を混ぜていない」方に属します。二三のメーカーは、混ぜていない純品絵具と、混ぜた絵具との両方を出しています。混ぜた品のみのメーカーもあります。

例えば、angeloさんのご質問のL&B社の場合、小社のかなり以前のデータでは、Silver Whiteが鉛のみ、Silver White #2が亜鉛華混入品でした(現在の流通品は、今手元にないので確認できません)。

多くのメーカーはチューブやカタログに顔料を表示していますので、概ねそれで判断できます。「亜鉛華」だの「ジンクホワイト」なら判りやすいのですが、スペースの関係で記号に留めている会社が少なくありません(小社もそうです)。「Pigment White 4」とか「PW4」とかあれば、それが亜鉛華です。
ごく僅か亜鉛華を配合するメーカーもあり、その場合には表示されていませんから、何らかの確認試験をしないと判りません。入っていない筈なのに、小社で調べてみたら入っていた、と云うのもあります。
混ぜているメーカーの、亜鉛華/鉛白比はさまざまで、一様ではありません。

亜鉛華を混ぜることにはひとつの意味があり、入れたから悪い、と云うものではありません。入れることの長所、短所をおもんばかって決められるものです。小社の場合は短所を厭ったので入れていないのです。

なお、頻々再々本掲示板を訪れられませんので、本件や他の事柄につきましては小社へ直接ご連絡頂ければ幸いです。

技術部・Tel.0729-85-1223


御礼

angelo さんのコメント
 (2006/03/01 09:49:29)

ホルベイン工業 荒木様 
お忙しい中、ご回答ありがとうございました。
顔料の確認試験を行わないとなると、素人では手に負える範囲ではなくなりますね。
今後もご質問などでご連絡をさせていただくこともあるかと思います。
どうかよろしくお願いします。


白の絵具

ひらら さんのコメント
 (2006/03/09 04:11:55)

はじめまして。
たいへん興味深くHPを拝見させて頂きました。とりあえず美大出身ですが、ここしばらく自分の絵を描いていませんで、このサイトを見て、久々に描こうかなという気になりました。私は今、海外に住んでいます。

毒性が強いことで海外の絵具メーカでは既にLead white(鉛白)が販売されなくなって久しいですが、Lead white愛用者の私としては、チタニウムホワイトとジンクをどうやって使いこなしてよいのか、頭を悩ましています。
今まで基本的に白色にはLead whiteを使って、部分的に白さを強調したいときだけチタニウムを使っていました。チタニウムは白が強すぎますし、ジンクは下塗りには適しません。
下地塗料の塗ってある市販のキャンバスだけでは、何となく頼りないので、白色系の下塗りを施そうと思っているのですが、何かよい案はないでしょうか。
日本に居たときは、市販のファンデーション用絵具をよく利用していたのですが・・。

チタニウムとジンクを混ぜたmix white というのが市販されていますが、この2つの白を混合した場合、単品で使用するよりは、それぞれの欠点はカバーされるのでしょうが、絵具としての強度、下塗り・制作初期段階で使用しても後に問題が生じないかどうか、気になるところです。

どうぞよろしくお願いいたします。


Re白の絵具

沙羅ゐ さんのコメント
 (2006/03/13 19:16:36)

ひららさんはじめまして。
鉛白がないとは不便ですね。日本のメーカーではチタニウムの隠ぺい力を抑えたホワイトが販売されていますが海外にはそういうものはないようですね。
チタニウムとジンクを混ぜても下塗りに使う場合はジンクでの剥離の可能性は高いのでお勧めしないですね。
チタニウムでは白すぎるので駄目なら、生キャンバスを買って自分で地塗りしかないですね。


miyabyo氏あてi

山崎 さんのコメント
 (2006/07/04 10:55:38)

私が科学的、化学的に油脂の「乾燥」を「酸化、重合」と認識するのは私の「思想の自由」であり、それは制作手順を物理的に把握するための手段にすぎなません。ゆえに、貴君にその思考方法をとやかくいわれる筋はないはずでありましょう。小生の文章は、読めばわかるように「乾性油の体積は大して変化しない」というのがテーマであって重箱のすみをつつくような議論を貴君にふっかけているのではありません。誤解しないでいただきたい。画家が「わがまま」で制作することは自明であろうと考えます。「わがまま」がない「創作」などありえないのではないでしょうか。画家の「わがまま」を貫く手段として市販の絵具を使用する、という選択肢もあれば、私のように「手練」という選択肢もあるわけです。それは自由でよい、と考えるのですが、間違いでしょうか。「手練」したからといって、「マイエルン手稿」を読んだからといって、それが制作に直接的に反映されなければならない、というものでもないでしょう。そう思い込んでしまってはなりません。それは思考の硬直というものです。文化とは『無駄」の蓄積を表現したコトバなのですから。                          さいごに、現在のLB社のメディウムフラマンがメディウム・マロジエを発端としているという内容は、過去出版されたLB社の「カタログ」に記載されていた記事が根拠であって、私の想像や勘違いではありませんよ。よく調べてから発言されるようお願いします。


鉛の卵2

miyabyo さんのコメント
 (2006/07/06 07:07:00)

山崎氏あてi

せっかくの私へのレスポンスではありますが、発展的な話になるとはとても思えませんので、失礼させていただきます。


ただ、二点について書き置きます。
1.今回の文中に
≪私のように「手練」という選択肢もあるわけです。≫
とありますが、初回の書き込みを読んで、山崎さんが「手練」を肯定し自らも実施しておられることを想像するのは困難であったことをお伝えしておかねばなりません。

≪現代において、絵の具を自製する、という行為は自分勝手を通すことでしかありません。‥‥≫
が原文ですが、初回のレスで書きましたように、この周辺の言説がよく理解できませんでした。
それで、以下のように代名詞を補ってみて考えました。

≪現代において、絵の具を自製する、という私の行為は自分勝手を通すことでしかありません。≫

これは、ちょっと変です。では、

≪現代において、絵の具を自製する、というあなた(がた)の行為は自分勝手を通すことでしかありません。≫

これなら、意味がよく通ります。

私の初回のレスは、当然ですが、後者の判断を前提に書いてあります。
直接メールを頂いた方々も私と同じように受け取られたことも、書き添えておきます。



2.かなり大げさな表現を好まれる方のようですが‥‥

◎≪「手練」したからといって、「マイエルン手稿」を読んだからといって、それが制作に直接的に反映されなければならない、というものでもないでしょう。そう思い込んでしまってはなりません。≫

私は一度もそのように述べたことはありません。たまたま、こちらのサイトで、「手練」や「ド・マイエルン手記」に言及する機会がやや多いだけです。


◎≪現在のLB社のメディウムフラマンがメディウム・マロジエを発端としているという内容は、過去出版されたLB社の「カタログ」に記載されていた記事が根拠であって、私の想像や勘違いではありませんよ。≫

1.これはルール違反です。前回は、
≪L&Bの「メジウムフラマン」は添加物が多くマロジェの原型とは大きく異なるものといえます。≫
でした。

「マロジェの原型」と「メディウム・マロジエを発端」では、まったく内容が変わってしまうのです。

「マロジェを原型」とお書きだから、
≪私は「メジウムマロジェ」というのは使ったことがないのですが、上記のどちらなのでしょう?≫
とマロジェの書から代表的なメジュームを二種挙げてお聞きしたはずでした。


2.山崎さんの≪想像や勘違い≫とは言っておりません。それは、あなたの思い込みです。
  私は、そのような見地から述べたものではありません。

あえて申し上げれば、
マロジェも参照し、LB社の技術者だったマルク・アヴェルも参照したものこそ原型というべきでないかというのが、私のスターンスで、言わんとするところは、
●Maroger, Jack, “The Secret Formulas and Techniques of the Masters”, New York 1947 (Hacker 1979)
●Havel, Marc, “La technique du tableau”, Dessain et Tolra, Paris 1974.
をお読みになれば、歴然とするばずです。
LB社の「カタログ」が根拠といわれても、メディウムフラマンの創案・発売に当たり、著名な人物を宣伝に担ぎ出すという流れは、ヴェベール然り、グザヴィエ・ド・ラングレ然りで、この会社が得意としてきたところですし、私なら根拠に使いません。

≪小生の文章は、読めばわかるように≫のテーマは、
「サンシックンド油の体積は減少しません」が「乾性油の体積は大して変化しない」に結局変更ですか?
いえ、これにお答えにならなくて結構です。

山崎さん、私とあなたの交信はこれまでとします。


危険についての常識

山崎 さんのコメント
 (2006/07/08 16:25:19)

私は画学生時代より絵の具を自製しております。これは、私の自分勝手を貫く手段であって、目的ではありません。ゆえに、否定や肯定という発想すらありません。日本画であれば常識でしかないと存じます。日本語の問題と致しまして、「という私の行為は自分勝手を通すこと」という表現は充分通用します。読んだ方に偏見があれば、成立しないかも知れませんが、解釈の問題でしょう。わたしは、あくまで技法書の多くが引用だけで「実験結果」でないことを問題にしているわけです。これは終始一貫しております。現実問題として「発火するまで油脂を過熱してしまう危険は指摘しなければ」、ということです。実際にほんの初歩的なところで事故を起こしてしまう人間はいますし、それを愚劣と切って捨てることは、私にはできません。重箱の隅も非常に重要であることは承知の上です。それこそが立派な研究となりますから。それはおいて、加熱しても半分にはならない、という常識の普及は危険防止という側面もあるわけで実際的です。テレピンの直火焼き、などという処方は冗談ではありませんが、実際には危険を知らずにやっていた画家がいるわけです。有機溶剤の使用についても価格が安い「薄め液」で中毒を起こす画家はいます。これはバカバカしいことでしょうか?私は、そうは考えません。実験するにも、化学実験の基礎知識は必須です。高度な研究も存在しなければならない、それは自明です。その一方では、より世俗的、実用的知識もまた不可欠であります。                                                                                                      結局、miyabyo様の文章は、私を攻撃したい、ということなのでしょうか?私が攻撃したいのは、miyabyo様のように真摯に研究を重ねている人物ではありません。目標は断じて丹念に研究を検証していくような人間ではありえないではありませんか。研究者たちは、それがたとえ過去を対象にしているとしても、我々に何らかの未来を提供してくれるであろうからです。私が射撃の目標とするのは、堂々と平気で技法書に嘘を書く人々であって、研究者ではない人間たちです。基礎知識に関する困った嘘と、非常識な絵画常識を標的としたものです。部分的に文章を切り離して、それを解釈することを古来「筆禍」と申します。無駄の積み重ねを日々行っている人類としては、大げさも小げさも御座いません。対象をどう把握するかは、自由でよい、と考えます。「大げさ」といわれ、「そうですね、ごめんなさい」とお答えすれば貴君の理性は満足するのでしょうか?LBはシャルダンの絵の具を作ったのが最初ともいっております。全て私にとっては「いいじゃないの」の範囲でしかありません。殆どLB製品は使っていない身勝手と考えてくださってもけっこうです。ご研究される立場では、厳密さ、が大前提です。が、理想的な作画においては、仕事の厳密さは意識されることなく、ただ実行されなければなりません。                                                                                                              技法とは作画に貢献するものでなければならず、しかも意識していては手が止まってしまいますから、条件反射的に身につけられる作画手段を選択しなければなりません。熟練しても手が止まる技法は作画にとっては有害です。技法とは「手が止まらない作画の工夫」であらねばなりません。だから同じ画材、類似した技法を使っても画家の個性ができきます。                                                                                                  最後に、せっかく頂いたアドバイスではありますが、マロジエ、アヴェルの書籍に興味は御座いませんので、読むことはないとぞんじます。この度は、ハズレはお互い様ということろで、今後は技法材料に限定したお話をすることにいたします。


Re:危険についての常識

詩原 さんのコメント
 (2006/07/08 18:38:53)

> 加熱しても半分にはならない、という常識の普及は危険防止という側面もあるわけで実際的です。

乾性油を加熱すれば重合もしますが、蒸発もします。重合と蒸発が同時に進むので、結果的に半分にも成り得ます。また、乾性油の加熱と、料理で天ぷら油を加熱する危険性は同じことで、日常的に注意して行うことの範囲内ではないでしょうか。

技法書と申しましても数多くありますが、どの技法書が嘘を書いているのでしょうか。それを明確にして頂かなければ、山崎さんのコメントを読んだ方々が、よけいに不安になります。嘘があると断言なさるなら、御自分のコメントに責任を持ってその根拠を提示して下さるようお願いします。


詩原様あて

山崎 さんのコメント
 (2006/07/10 15:10:44)

実験します。どの油脂を、いかなる設備で、温度「何度」で、「何時間」加熱すれば半分になるかお教え下さい。 例えば、1リットルの描画用油脂を半分にする、という単純な条件では、どうでしょうか?                                                                                           不都合の実例として、35年以前のことです。三千本は不安定で油彩画下地として実用に耐えませんでした。鹿膠も同様で、結局のところオーソドックスに「外国製のウサギ膠」つまり、外国の画家が使っている方法が安定しており、簡便かつ実用的でした。これも使えます、という情報は完全な虚偽ではありません。が失敗する危険性があります、最初から非常手段と書くべきです。現在は画材屋で入手できるウサギの皮膠ですが、当時は稀な品物だったのです。                                                                             他の例。油絵の具の練り合わせは、原則的に3段階の工程で行われますが、こんなこと、技法書には書いてありません。抜けている情報も実際の作業では錯誤の原因となります。朱は難しいですよ。詩原様はどのような方法で「朱を安定化」されますか?                                                                                           「手練り」の目的が市販絵の具との共用であり、特定の顔料を油絵の具にしたいが、市販の絵の具のように硬く練り上げたいという場合、どうしますか?市販の絵の具と類似した材料を使用して自作すればよいとして、何を参考文献にし、油脂に何を添加されますか。特に日本の技法書にはこうした実用情報は書いてありません。情報不足は実際的問題です。私は作画に有利な情報が多いと便利だ、という視点から考えているだけです。非実用的情報や喧嘩ならば、お断りします。上記の技術情報は非公開を条件に画材メーカーから入手した情報が含まれますので、私からは公開できません。約束の遵守は人間関係の基本です。メーカーとしては企業機密でしょうから悪意があってのことではない、と考えてください。約束で公開しない、ということです。ですから、私でなければ問題はないわけで、もし詩原様が解答をお持ちであって公開可能ならば情報として公開して頂けないでしょうか。皆様にとっては非常に便利な情報だと思いますので。                                                                                            心情として、「不安」というなら、わたしも同じです。それが当然でしょう。だから、このHPを活用させて頂いているのです。でも、信じ切って欠陥技法を続けることに比べれば、「不安」は、どれほどまともなことであるか、ご考慮頂けませんか?信頼は結構ですが、信仰や妄信はダメでしょう。これは常識の範疇であろうかと愚考いたします。詩原様の信念やご意見は、尊重はいたしますが、それに私が服従することは、できることでも、すべきことでもないかと存じます。絵を描く人の数だけ個性があり、各々の信じる方法を試行錯誤していく、これは他の諸芸の原則でもあります。詩原様が私に何かを要求するのは、芸の基本姿勢と矛盾します。この場で情報を交換し、公開可能な情報を公開し、それを参考にし自己の工夫に加えることができれば、それでよいのではないでしょうか。実際に、このHPには注目すべき見解が多く勉強になります。既存の学術レベルを凌駕する情報も多数あります。



私の方法は、自分で実験することが一番で、次に他人の体験、実験を追試して確認する。最後に書籍、という方法ででして、手法として反対される方も多いかと存じますが、それでこその芸でありましょう。詩原様も私などを攻撃されるような無駄はお止めになって、油脂を半分に煮詰める方法を単刀直入に公開され、私の謬見を正していただければ、これは非常にありがたいことです。それが建設的かつ実際的であろうかと思われるのですが。私は具体的な問題として、三千本膠の問題点。日本の技法書の情報不足という現実、以上2点の問題を指摘しました。                                                                                  詩原様の見識を疑うわけではありませんが、化学者的知識と設備を必要としない日常的方法で、普通の画家にも可能な設備と方法で、当然ながら危険防止という観点も考慮したうえで、油脂を半分に煮詰める方法をご存知ならご教示頂きたいと存じます。
                                                                                          最後に、画家の中にはのんきな人もおりまして、「え、普通のてんぷら油と同じ(発火の危険)なのおー」という実例がございます。注意事項は反復して確認することが大切です。他者と自分とは全く違うのですから、当たり前を強調して、何がイケナイのでしょうか?自信過剰が事故の原因という事例は多すぎるほどに多いではありませんか。文章全体の趣旨がわかりません。日常のテンプラと絵画用の油脂の加熱は、状況が異なるのではないでしょうか。短時間ならば、同じといってよいかもしれませんが、高熱、長時間となれば、日常的意識の延長線上では対応できませんし、すべきではありません。一人ではなく、二人で、という分担或いは共同作業も考慮する必要が生じてくるかも知れません。事前の打ち合わせや演習は必須です。これは、もう加工製造業の亜流といえる行為であって、それゆえ「安全第一」という私の主張は絶対に撤回することは致しません。詩原様に警告しておきますが、無駄な指摘はお止め下さい。安全に関しては、喧嘩になります。常識があれば安全とはいえますが、安全確認の強調が不要という判断は愚劣と申せましょう。これは溶剤についても同じことで、多様な問題について知識を広げ考慮すべきです。まさに油断大敵です。


山崎様あて

詩原 さんのコメント
 (2006/07/10 17:55:47)

説明不足で失礼しました。
乾性油の加熱について誤解が生じないように補足します。

通常、リンシードなどを加熱してボイル油をつくるする際の温度は、150〜180度です。その温度での加熱なら、体積の変化はほとんどありません。200度を越えさらに高温になると煙が発生し、体積が減少してゆきますが、これは危険な状態であり、やがて340度前後で自然発火につながります。

チェンニーニ『絵画術の書』の第91章で「半分になるまで」という記述がありますが、これを現代的に考察すれば、温度が高過ぎる危険な状態のまま加熱を続けたことにより、油の分解した成分が蒸発して体積が減少したのでしょう。同じ章に「弱めの火を点ずる。ゆっくりと煮れば煮るほど、それだけ、良質でより完璧なものとなる」とも書いてありますので、こちらの記述にポイントがあると思います。600年前の書物ですから、内容に曖昧な部分もありますが、それは今現在の読む側が気を付けるべきなのでしょう。そうすれば、この書物から当時の技法を学ぶことができるのです。

乾性油は、油彩に使える紅花油・ヒマワリ油など食用油と成分組成が近い関係にありますので、加熱における危険性は天ぷら油による火災が頻繁に起こる事実から察することができます。本当に危険なのは、危険であることを想像できない状態で実験的行為をすることです。そういった観点から、あえて天ぷら油を話に出しました。

度を越えると危険ではありますが、適切な条件下なら有用な効果を得られる処方も多々あると思います。ですから、危険の一言で片付けるのではなく、どの段階から危険なのか、どんな事故が起こるから実践しない方がよい等の区別も示して頂ければ、コメントを読む方々も安心すると思います。


詩原様、そのとおりです

山崎 さんのコメント
 (2006/07/11 11:54:46)

油を加熱していくと発火します。そして、燃えながら濃厚な油になります。これを消したり燃したり、して「印刷」に使用された油ができます。行灯の油と同じく最後はなくなってしまいます。それでできた油を画家が使ってはダメという屁理屈はありません。ただし、これを日本語で表現すると「燃やす」ではありえても、「煮詰める」ではありません。現在、「スタンドオイル」は普通に使われていますが、これも印刷インクに使用されていたわけです。話が飛んで申し訳ないのですが、漆はかぶれ易いし乾燥条件がやっかいです。でもウレタン、エポキシなどは、アレルギーを持った人以外なら楽に使えます。原型はすごく不便、というものを簡便化、イージーなものに代行してきたのが絵画材料の歴史、といえる面があります。油の加熱は天井までコンクリートのガレージの中などがシロウト実験?の場所としてべストですね。ちょっと不安があるときは、知人、友人のコンクリート製ガレージを借りるといいです。消火器の用意は絶対しておいてください。台所でやることではありませんし、天麩羅屋のキッチンでない普通の台所では設備として殆ど不可能です。火事になります。もし火災が発生したときに火災保険が有効かどうか、この確認は常識。わざと火をつけたのですから、犯罪ぎりぎりの行為です。注意すべきでしょう。ここまで危ない実験はどうかと思いますが、しっかり準備した上で安全を考慮して、どんどん研究して頂きたいものです。私も、ものすごい事故を何度も起こしています。高校時代にテレビンの蒸留で火災が発生、第一号事件です。お笑い下さい。「若さが」にごると「馬鹿さ」。だから「安全第一」を強調するのです。しかし、無駄に見える試行錯誤が絵画技法の巾を広げてくれることは確かです。準備と特殊な危険に関する保険の確認をして「実行」でしょうね。


だから、サンシックンド油

山崎 さんのコメント
 (2006/07/11 12:18:53)

ほって置けばできる。これ誰にでもできます。「洋行」帰りの(絵画留学した)画家の中には自作していた人が意外に多く、密かに使っていたそうです。私の師匠は使っていませんでしたが、知ってはいました。できあがった油を、そのままガラス瓶に密封保管すると、瓶が割れることがあります。そのまま保存するのではなく少し加熱すると、既製品のようになり、こうした危険は防止できます。ただし、加熱した油は半日で乾燥する、というような本来の性能を失ってしまいます。ぎりぎりのところで加熱を止めるか、より賢く?食用油に使用されているプラスチック容器で保存するといいです。私も2度ほどガラス瓶を割ってから気がついたのですが、マヌケですなァ。自作のメリットは2つあるかと思います。                                                                                            第一に、製品化されていない種類の油を使用できること。第二に、乾燥性が抜群であること。私の場合は、この魅力で自製している次第です。何しろ安全ですし、製造について「ズボラでよい」という所が、特に気に入っているわけです。もちろん、加工油の再加工?も可能です。       


画材&技法 全般 (17)」へ続く。


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