2020,05,31, Sunday
松山壽一(著)『造形芸術と自然 ヴィンケルマンの世紀とシェリングのミュンヘン講演』法政大学出版局(2015)
本書の主題はたぶんシェリングの芸術哲学なのであると思いますが、しかしそこに至るまでの状況説明に十分な紙数が割れており、というかまるまる半分以上を費やしており、ヴィンケルマンから始まってレッシング、ゲーテその他の新古典主義の発生から初期ロマン派に至るまでの芸術論と、彼らの物語が紡ぎ出されてなかなかの群像劇になっており、単に楽しみ読書としてもたいへん面白かったです。私は哲学分野は得意でないので、後半のシェリングの講演についての部分は正直なかなか意味を理解しがたいところが少なからずあって、肝心なところはなんとも言及しにくいところはあるのですが、そこは私の勉強不足に尽きるわけですが、そんな私でもとにかく前半は感動の嵐であり、他のことはだいたい放って読みふけってしまったところです。新古典主義、ロマン派とか、いろいろ解説書はありますが、本書を読んだあとだと、いずれもちょっと薄っぺらい内容であったと振り返らざるをえないところであります。それと本書の良いところは所謂ラオコーン論争をたいへんわかりやすく描写しているところでしょうか。そして美術教育と言いますか、古典主義的な絵画教育の歴史についてもたいへん勉強になるのもであるといえましょう。そしてドイツというものについて知るにもいいものであるかなと。しかしまぁ私は一番感じたのはゲーテについてもっと知らねばならぬ、というところですか。ただ少し気になるのはこれほどまでに重要な存在であるヴィンケルマンについての本が意外と少ない、翻訳も限られる、なぜであろうか。 |
2020,05,12, Tuesday
国民年金年一括分194,320円、自動車税34,500円、文化財保存修復学会の年会費8,000円など支払いました。間もなく住民税、そして夏には車検となかなか大変でありますが、払えるときに払ってしまいたい質なので、年一括で払えるものは払うのです。それにしても国民健康保険は高いなぁとずっと思っていたのですが、新型コロナの件を経てみると、いざというとき誰でもちゃんと診てもらえるということ考えると安いものであったなとちょっと改心しましたが、それはともかくとして、ゴールデンウィークはいっぱい本を読むぞと思っていたのですが、ずっとリーグル(著)『美術様式論 装飾史の基本問題』長広敏雄訳を読んでいて、そして連休明けて数日経ってようやく読み終わったところです。とてもとても勉強になりました。今まで見えてなかったものが見えてきたといいますが、見ても大して関心の無かった図像にメラメラと関心が沸いてくると言えます。19世紀に書かれた本であるからして、最近の論とも照らし合わせていろいろ確認したいところですが、それもまた楽しみであります。本書の中心は古代ギリシアであるけれども、その流れでビザンチン美術やアラベスクへと話は続くのでありますが、しかし今考えるともやは19世紀までの全て時代の装飾に理解が深まるのではないかと思われます。絵画とか彫刻とか建築への関心で終わっているうちはまだまだ美術の入り口に居るに過ぎないと言ってもよいのではないか。美術が何かと語るにはまだまだほんの一部しか見ていないのではないか。
読むのに時間がかかったのは、登場する植物を手当たり次第に買っては植えていたということにもよります。アイビーやらアカントスやら、地上に植えられるもの、そして東北でも植えられそうなものは全部植えました。ロータスはさすがに池でもなければ難しいので、保留にしてありますが、でもロータスの花の季節になったら、伊豆沼にでも行ってみますか。それにしても、19世紀の書であるからして、まだ絵画の世界で抽象表現が現れる前と考えると、その点でも興味深い。とはいいつつ、文章で装飾を説明されても理解に時間がかかるのか、いやでもやはり文章がすこぶる読みにくい気がしたのだけれども、細かい部分については、たぶん半分どころか1/3も理解してないような気がするのですが、しかし全体としての大意は伝わってきたような。どうだろう。なお、『様式への問い 文様装飾史の基盤構築』加藤哲弘訳、中央公論美術出版、2017という新しい翻訳もあるようなのですが、税抜定価28000ということで手が出なかった。リーグルの代表作『末期ローマの美術工芸』は33,000円なのか。しかし、春休みから連休にかけて読むはずであった本が山ほど積んであるので、それどころではないのでまぁいいのだけれども。 |
↑上に戻る↑ :