2008,07,24, Thursday
まだ鉄媒染をやったことがないことと、黒を染めてみたいという理由から、今回は五倍子染めに挑戦。染めるのは綿のTシャツ。
![]() 五倍子(フシ、ゴバイシ)は、ヌルデの木に寄生する虫が作るコブで、タンニンを含み、鉄媒染すると黒の染料になる。 まずは、(というか、かれこれ2週間前の話になるが)媒染液を作るところからスタート。錆びた鉄クギをお酢に入れて作るそうで、錆クギなんて以前は山ほどあったのだが、物置の整理をした際に処分してしまっており(全部ステンレス製に買い換えた)、タイミングの悪さを思いながらホームセンターで新品を購入。熱湯に通すとすぐに錆びるというので湯で煮てみたら、空気に触れた瞬間からどんどん錆びが出る。そのまま屋外に1週間放置し、充分に錆を出させた。 ![]() 今度は酢に漬ける。お酢は安価なミツカン酢を使用。ワインビネガーの臭いに悩まされた後だと、ミツカン酢とかもう全然平気である(以前はこの程度の臭いでも駄目だったんだが)。100均の瓶に錆び鉄釘を入れ、水で倍に割った酢を注ぎ、フタをして1週間以上置く。鉄釘は同じ重量なら、小さい釘の方が表面積が大きくなってよかったのかもしれない。 ![]() というわけで、2週間かけて媒染液を作ったのち、いよいよ五倍子の登場である。使用したのは藍熊染料(株)の五倍子。 ![]() 木村光雄(著)『自然の色と染め』によると「粉砕して煮出し、鉄媒染することによって灰色~黒色に染めることが・・・」ということなので、乳鉢を使って粉砕(すり鉢の方がよかったかもしれん)。 ![]() 粉砕した五倍子を釜戸で煮出すこと、1時間強。 ![]() 煮出しを行なっているうちに、染める予定の布を水に浸ける。「タンニン類は木綿繊維に大きな親和力を持っていますから、前処理無しでよく染着します」(木村光雄(著)『自然を染める』P.71)という話なので、みょうばんなどによる先媒は行なわず、単に水に浸けておくだけに留めた。 ![]() 充分煮出したら、いったん布で濾す。 ![]() 染液はこんな感じの色で、この時点ではお世辞にも綺麗な色には見えない。黒でもない。 ![]() 人肌より多少高いくらいの温度までさめたら、再び鍋に戻し、染める対象たる布(今回は綿のTシャツ)を入れて、再び加熱する。いきなり高い温度で布を投入するより、40℃ぐらいから徐々に加熱していった方が最終的により色素が浸透するという話だそうだが。このようにして、15分くらい煮込んだ。 ![]() さて、いよいよ鉄媒染剤の登場である。 ![]() 布と染液を別様器に移し、鍋には新たにお湯を沸かして、そこに予め作っておいた鉄媒染液を入れて加熱する。 ![]() 見た目はふつうのお湯っすね。 そこに五倍子の染浴に浸けていた布をよく絞って投入、すると一気に真っ黒に変化するのだが、なかなか凄い光景である。まぁ黒というよりはちょっと紫っぽい感じであるが。 ![]() とにかく、よくかき混ぜながら、しばらく加熱。ムラを少なくするには、よくかき混ぜるのが肝要だそうである。 時間が経つにつれ、どんどん濃くなってゆく。 ![]() 水洗いする。 ![]() 干す。 ![]() こんな感じっすね。 ![]() 繰り返し染浴と媒染剤に浸けるなどすれば、もっと濃い黒になるであろうけれども、自分で着るシャツとしてはこれくらいの色がいいかなってことで終了。 |
2008,07,12, Saturday
灰汁というのは、植物の灰を水に混ぜたときの上澄み液で、灰中の水溶性成分が溶けた水溶液。主成分は炭酸カリウム。アルカリ性で、染色用途ではアルカリ媒染剤となる。染料系の色材をいろいろ試してみている今日この頃なんだけど、まだ灰汁での媒染というものをやってみたことがないので、今回はそれを試してみることに。
昔の人は薪やら炭やらを日常の燃料としていたので、木灰、および灰汁は豊富にあり且つ非常に多用途な材料として使われていたようだが、現代ではあんまり身近ではないっすね。家にも火鉢のようなものがあるので、灰がないわけではないけれど、あまりたくさんはないので、藍熊染料(株)の木灰(樫)を使用。500gを630円で買ってくるのはどうなんだろうと疑問に思いつつも、だからと言って大量にまとめ買いしても使い道ないし、まぁ、しょうがないということで。 ![]() この記事では、木村光雄(著)『自然の色と染め』P.68の手順に従って行なうことに。具体的には「・・・灰の10倍の量の水(たとえば、灰1㍑なら水10㍑を加えて、時々かき混ぜながら1週間ほど置き、上澄みを取る方法で・・・」という、たったそれだけの一文であるが。しかし、その他にも灰汁の性質についていろいろ書かれてあるので参照されたし。 では、さっそくバケツに木灰を入れ、容積比にて10倍の水を注ぐ(本の処方が重量でなく体積比だっただめ、計り損ねて結局てきとうな感じで水を入れてしまったが)。 ![]() で、よくかき混ぜる。 ![]() フタをする。 ![]() 1週間ほど、時々かき混ぜながら観察。一部の灰が水の表面に浮かんで、綺麗に上澄みが取れるか心配だったが、何度もかき混ぜる行為を繰り返しているうちに、全部下に降りていき、一週間後には実に綺麗な上澄みが取れそうな様子に。 ![]() というわけで、できあがった上澄みをすくい上げる。 ![]() さっそく実験ということで、スオウ(蘇芳)で染めたシルク(未媒染)を、灰汁に付けてみると、オレンジ色が鮮やかな赤へと変化。 ![]() シルクのスオウ染め、左が未媒染、右が灰汁媒染(乾燥したら紫色に)。 ![]() |
2008,07,04, Friday
布というのは織る際に縦糸に糊付けするらしいが、生地店で布を購入してきた際、その布に糊がついているか、あるいはすでに糊抜きされているのか確かめる手段としてヨウ素液で試験する方法があります(理科の実験などでやるヨウ素液とデンプンの反応を利用したもの)。
本実験では、ヨウ素液として、薬店で簡単に手に入る希ヨードチンキ(ヨウ素を含む)を使用。ただし、そのままでは反応が強すぎてかえって判定が困難になるため、水で約30倍に薄める。 ![]() 購入した布の一部を切り取って、ガラス棒(のようなもの)でヨードチンキ液を1~2滴ほど垂らす(布の端に垂らしてもいいけど、作業中にヨードチンキが飛び散ったりすると、せっかく購入した布のあちこちに黒い斑点を作ってしまいかねないので、やはり切り取ったサンプルがよろしい)。 ![]() 今回は生地屋から購入したシーチング、生地屋から購入した生成の麻布、画材用の麻布(膠引き済み)、薬店のガーゼでテストしてみた。画材用の麻布は生キャンを使用したかったのだが、手元にあったのが膠引き済みのものだけだったので、その裏側を使用することに(割と高級な部類のキャンバスである)。ガーゼは薬局で購入したもので、精錬・漂白されている布の典例として実験に加えてみた。 ![]() 写真は左からシーチング、麻布、画材用の膠引き麻布、ガーゼ。ヨードチンキにより青紫色に着色された場合はデンプン糊がついている可能性あり。黄色いままの場合は、デンプン糊はないであろうということで。見たところ、シーチングは糊がある模様(まぁ、実際は布に触っただけで分かるのだが)、生地店の麻布もデンプンの反応が出てるっぽい、画材用の膠引きキャンバス(の裏側)はほぼ無色、ガーゼもほぼ無色。 なお、染色の場合は、糊が残っていると染料をよく吸ってくれないため、糊抜きは重要な行程だが、絵画の支持体として使用する場合どうなのかはよく知らない。デンプン糊は用紙のにじみ止めとしても普通に使われていたり、ときには絵画用地塗りの媒材とされる記述をみることもあるので、べつになんか悪いというわけではないと思うが。 というわけで、染料関連の本で布の精錬、漂白の部分を読んでいて、糊が付いているかどうかの判別方法を知り、思わずやってみたくなったので、そのレポート也。素人実験なので、そのつもりで読んでください。 |
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